メトロノームといえば、楽器に携わる者にとって必須のアイテム。でもメトロームをなぜ使うのか、考えたことはありますか? 今回はKORGのチューナー・メトロノームを使って、打楽器奏者として活躍中の前田啓太さんに“リズム”とは何かを聞きました!
大事なポイント
・“リズム”と“拍”は分けて考える
・メトロノームは拍感を自分の体に取り入れるためのもの
・目的と手段を明確にしよう
使用する製品
♪TM60
今回登場するメトロノーム♪
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登場人物
前田啓太 Keita Maeda
打楽器奏者。スクールバンドサポーター。ソロ公演、アンサンブル公演、オーケストラ・吹奏楽団への賛助出演などで活動中。
富山県出身。15才より打楽器を始める。武蔵野音楽大学卒業。ドイツ国立カールスルーエ音楽大学へ留学。同大学大学院修士課程にて満場一致の最優秀の成績を得て帰国。
2011年バーデン文化財団主催の国際音楽コンクール「Kulturfonds Baden Wettbewerb」第1位受賞。第31回日本管打楽器コンクール・パーカッション部門第2位受賞。
これまでに安藤芳広、中村功、山口多嘉子、吉原すみれ、JochenBrenner、ThomasHoefsの各氏に師事。2017年Studio N.A.Tより無伴奏打楽器独奏によるCD「I Ching」を発売。 2012・13年サイトウ・キネン・フェスティバル「兵士の物語」に出演。ソリストとして東京フィルハーモニー交響楽団と共演、ARDラジオドラマフェスティバル(ドイツ)、Baden Music Festival(ドイツ)などの音楽祭に出演。 一般財団法人地域創造の“おんかつ”支援アーティスト。
早速、お話を伺ってみた
“リズム”と“拍”は分けて考える
- ──
- 打楽器をやっていると「リズム感覚を養いなさい」とよく聞きますが、そもそも「リズム感覚」とは何でしょうか?
- 前田
- まずリズムと拍を分けて考える必要があります。「リズム」はいくつかの音の周期的な繰り返しのことを言います。4分の4拍子で4分音符が4つ並ぶだけでもリズムと言えますが、それは「拍」を指します。リズム感覚という言葉は僕はあまり言わない代わりに「拍の感覚を身につけよう」と言います。アンサンブルするときは、メンバーと拍の感覚を共有して演奏することが重要です。拍の中にリズムがあると考えるとわかりやすいのではないでしょうか。
-
- 拍の感覚はみなさん持っていると思いますが、音楽になると薄まってしまうことが多いんですね。拍の感覚(以下 拍感)は歩様(※)と繋がっていますから、足踏みをしながら歌ったり、練習したりというのをおすすめしています。
- ※歩様 :歩くときの姿勢、動作、歩幅などの特徴。
- ──
- 普通の生活から身につけられるということですね。
- 前田
- はい。僕は最初のレッスンで必ず「音楽の目的は何か?」ということを生徒に聞きます。夏になると「コンクールで賞を取りたい」「人を感動させたい」という答えが圧倒的に多いですが、僕の思う音楽の目的は「表現すること」。練習は「表現力を高めるため」のものです。音楽を表現するには、正確に叩くことも必要ですが、音楽のうねりなどの感情を表現するために必ずしも正確なリズムを叩かないときもあります。正確なリズムからどれほど伸び縮みしているのか。その基準をアンサンブルするメンバーで共有していると、アンサンブルの仕上がりが早くなります。
「リズム感覚を養う」から話が離れましたが、正確なリズムで演奏できることが大事です。そのためには正確なリズムをイメージできるようにしましょう。正確なリズムで演奏できていると自身で確認できるテンポから練習する。それが最短だと思います。
メトロノームは拍感を自分の体に取り入れるためのもの
- ──
- パートみんなでやるときに、拍感はどうすれば共有することができますか?
- 前田
- そうですね。僕は小中でサッカー部で、よく1、2、1、2と声をみんなで出しながらランニングしていました。音楽も同じで、みんなで拍感を共有しないと音楽がふわふわしてしまう場合が多いです。
具体的な練習方法は、リズムを正確にとるのか、拍感をもって演奏するのかで具体的な練習方法は変わります。拍感を養う練習は、足踏みをしながら演奏するのが一つの方法です。またカウントを1、2、3,4と声に出しながら演奏するといいでしょう。
- ──
- つまり、手以外の体も同時に使うということですね。
- 前田
- そうです。簡単なリズムだと手だけでも拍感を持つことができるけど、難しいリズムは拍感を失いがちです。自分の体に手以外に負担をかけることによって、手だけで演奏するときに楽になります。足踏みはトレーニング方法でもあるし、確認作業でもあるんですね。
メトロノームを使ってのリズム練習は、メトロノームに合わせるだけでは意味がありません。拍感を身につけるためにメトロノームを使うので、最終的に拍感を持たなければいけません。ところがメトロノームに合わせてしまい自身の拍感なしに演奏している場合があります。
それでは目的と手段が逆になってしまっています。メトロノームを使う理由は拍感を身につけることですから、その目的を間違えると効果の薄い練習になってしまいます。
- ──
- そういう場合ははどのようにレッスンされていますか?
- 前田
- メトロノームがなくてもテンポ通りに演奏できるかを自問してもらうようにします。自分ひとりで演奏した場合でも正確なテンポで演奏できているか、などですね。
目的と手段を明確にしよう
- ──
- 練習のときにはメトロノームはずっとかけっぱなしのほうがいいのでしょうか?
- 前田
- 自分の確認のツールの一つですので、かけっぱなしでなくてもかまいません。でもメトロノームがないと困りますね。
- ──
- 先程の話に関連すると思いますが、メトロノームに合わせなければいけない… … という気持ちが強い人もいるように思います。
- 前田
- ずっと鳴らして「合わせなければいけない」と思うのは精神的にきついと思いますね。でもそれは目的と手段が間違っている。話がそれてしまいますが、校則で髪の毛を染めてはいけないとかありますよね。その目的は生徒たちを悪いものや人から守ることなんですね。ところが、守る手段が目的となってしまうと問題が生まれてくる。メトロノームも同じだと思いますよ。
- ──
- 普段からメトロノームを使って練習されていると思いますが、練習法を教えてください。
- 前田
- 単純にメトロノームに合わせて4分音符と8分音符を4拍ずつ片手で繰り返します。
- 練習する時には、注意点、改善点を明確にして取り組んでほしいですね。リズムパターンを繰り返して練習しますが、そのパターンが長いと改善の振り返りをしづらいので、短めのパターンで練習するといいでしょう。また注意点が多すぎるとわからなくなってしまうので、1パターンで3つぐらいに収めておきます。
たとえば、叩く動作をストロークと言いますが、その確認練習は必ず鏡の前で行ない、バチがまっすぐ上がって、まっすぐ落ちているかを確認します。タイミングがぴったりか。そして同じ音量で叩けるかを確認します。
他の具体的な練習パターンは譜例を見てください。これは初心者のうちから提案する練習で、それぞれ短いパターンになっています。
▲前田さんオススメの練習パターン
- ──
- メトロノームを鳴らしたほうがよいですか?
- 前田
- 使う場合と使わない場合があります。それぞれで注意点が変わります。
メトロノームを使わない場合は、自分の音により集中することができます。利き手ではないほうの音が小さくならないように、など。自分の音色と向き合うべき練習では、メトロノームがないほうががいいです。メトロノームを使っていると、メトロノームの音を聴くことにも注意するので、集中力が分散されます。自分の音と向き合って叩く意識は減りますね。だから目的によってメトロノームの有無を判断します。
僕は基礎練習でも、曲でもメトロノームを使って練習します。メトロノームを止めた時にも、拍感を持って演奏できることを意識しますね。あと、レコーダーなども活用しています。
- ──
- ありがとうございました。
本日使用したメトロノーム
前田さんアドバイス
メトロノームは一人一台必ず持っていてほしいですね。その他に姿見、せめて上半身が映るぐらいの大きさのもの。この2つは打楽器担当の学生さんにも必須です。
KORG|TM-60シリーズ
大きな画面で見やすい表示のTM-60。メトロノームの他にチューナーがついているので、吹奏楽をやっている方には、持っていてほしいマストアイテムです。しかもチューナーとメトロノームの機能を同時に使用できるというすぐれものです。
KORG| TM-60
◯仕様
- 端子
- INPUT端子(6.3mm モノラル・フォーン・ジャック、不平衡)/
ヘッドホン端子(3.5mm ステレオ・ミニ・フォーン・ジャック)
- 出力
- ダイナミック・スピーカー(φ23mm)
- 電源
- 単4 形乾電池2本
- 寸法
- 111(W)x 74(D)x 18(H)mm
- 質量
- 100g(電池含む)
主な特徴
◯高精度チューナー機能とメトロノーム機能を搭載。2つの機能を同時使用可能。
◯従来モデル(TM-50)の約1.3倍のディスプレイに、チューナー、メトロノーム機能を同時に表示。
◯バックライト付きの液晶画面で暗い場所でも視認性抜群。
◯音程を即座に検出する、コルグならではのレスポンスの良い液晶針式メーター。
◯耳でのチューニングを身に付けられるサウンドアウト・モードとサウンドバック・モードを搭載。
◯便利なメモリー・バックアップ機能、オート・パワー・オフ機能。
KORG|BEATLAB mini
トレーニング・モードを搭載し、ゲーム感覚でリズム感を養える、打楽器奏者のためのメトロノーム&リズム・トレーナー。クリック音はサンプリングした音を使っているので、より一層音楽的に取り組みやすいのも特徴です。リズム・トレーナーでは、自分のリズムが合っているかを客観的に声で教えてくれます。
KORG|BEATLAB mini
◯仕様
- 端子
- TRIGGER端子(φ6.3mm モノラル標準ジャック)、PHONES端子・(φ3.5mm ステレオ・ミニ・ジャック)
- 出力
- ダイナミック・スピーカー(φ23mm、最大0.5W)
- 電源
- 単4形乾電池×2
- 寸法
- 82(W)x 82(D)x 27(H)mm
- 質量
- 97 g(付属電池含む)
主な特徴
◯多彩なパターンを備えたメトロノーム機能。
◯リズム感を確認・向上できるトレーニング機能。
◯ドラムのチューニングに便利なサウンドアウト機能。
◯多目的に活用できるタイマー/ストップウォッチ機能。