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vol.48「もう一歩進んだ合奏術を身につけよう」

THE SAX vol.70(2015年3月25日発刊)より転載

最近のスガワ

今号でザ・サックスは70号を迎えられるとのこと、おめでとうございます。読者にとっても、僕たち演奏家にとっても、自分の楽器の専門誌があるというのはとても嬉しいことです。毎号丁寧に作っておられる編集の皆さんは本当に大変だと思いますが、これからも末永く続けていただけることを願っています!
さて今回は、サクソフォーンのアンサンブルについて、僕がこのごろ感じていることを書いてみたいと思います。最近では様々な形でサックスを楽しむ方たちのアンサンブルと共演したり、聴かせていただいたりすることも多くなってきました。サックスという楽器はみんなで吹くと気持ちがいいのでつい朗々と大きな音で鳴らしてしまいがちです。そうすると、一瞬かっこいいんですが、1曲を通して聴くと色の変化が乏しくなってしまう。もっとメリハリのある演奏にするには、どうすればいいでしょうか?

 

 

もう一歩進んだ合奏術を身につけよう

サクソフォーンの音は、発音してから息を吹き込むと音がどんどん響いて広がっていきます。同じ音量で吹いているつもりでも、音がフワーンと広がって、聴覚的には後から膨らんでいるように聞こえるんですね。そうすると、アンサンブルにおいて誰かがメロディを吹いた後に入ってくる人は、音が膨らんでいるからさらに大きい音で入ってこなければなりません。その後に入ってくる人はまたさらに大きく、次の人はまたさらに……、そして結局、常に大音響になってしまうというわけです。

「サックスは音が大きい」と言われますが、「大きい音“も”出る楽器」だと、僕は思っています。 主張するべきところは主張し、他の人にメロディを渡した後の音量は思っている半分くらいでもいい。例えば、メロディの後ろで音を伸ばしている時。普通に吹くだけでは音が拡散して大きく聞こえてしまうので、伸ばし始めたら少し静かに、ディミヌエンドするくらいの気持ちでいるほうがうまくいくと思います。 僕は現状、むしろ反対になってしまっているケースが多いと感じています。特に、普段あまり響かない部屋で練習していて本番を迎え、広いホールで吹くときの気持ちよさはたまらないものですが、そこであまりの気持ちよさに全員が朗々と吹ききってしまうと……結果はどうなるか、おわかりでしょう。

アンサンブルで、自分がメロディを吹いているときはある程度主張してもいいですが、まずは長い音符を少し小さく吹くこと。長い音符を吹きながら、他でメロディを吹いている人たちを、自分で意識して聞けているかどうか。1曲の全体像はみんなで作り上げていくものですから、一番のクライマックスで力を抜くことはないと思いますが、全体のバランスを立て直すことで、全体のメリハリ、印象ががらりとかわってきます。

もうひとつ、サクソフォーンの難しいところは、音が出る瞬間。発音です。ソロを演奏するときは発音をデリケートに、タンギングのノイズが聞こえないようにと、我々は習うし、教えます。ただ、アンサンブルにおいては、そこがデリケートになりすぎているばかりに音の頭がモヤッとしてしまうことがすごく多いと感じます。ステージでお客さんとちょっと離れてしまえばタンギングがちょっと堅めに入ったとしてもあまり気になるものではありませんから、ソロ(ピアノ伴奏含め)のときとアンサンブル(サックス属だけ演奏する)の時の発音方法は、少し変えてみてもいいと思います。ある程度クリアに、やさしいメロディであっても、思っているよりも少し大きくハッキリめに発音するほうがいいでしょう。その音が鳴って、自分がメロディの中心になったなと判ったらスッと弱めにする。そうしたとしても、もともと小さかったように聞こえます。

これは吹奏楽にも共通することですが、よくあるのはfで「バン!」と鳴らした残響がある中に静かなメロディが入っていく場合。pという表記通りに小さくデリケートな発音で入っていったら、頭の音は残響に負けて絶対に聞こえません。コツとしては、「バン!」というfの後に、新しいメロディは自分に移りましたということを少しハッキリと聞かせて、すぐにpにする。そうすると、聴衆に対してメリハリがつくことに加え、一緒に演奏しているメンバーの耳も新しいメロディに傾き、伴奏もデリケートになってくるというわけです。このようにテクニックとして工夫すべきじゃないかなと思います。

あとは、音楽の種類をわかりやすくするために音の処理の仕方をそろえることです。音の止め方、響かせ方をそろえることによって、音楽のジャンルも変わって聞こえます。

長い音の扱い方、発音、音の処理。この3つの項目をテクニックとして覚え、まずはアンサンブルの骨組みを作ってみてはいかがでしょうか。メロディがどこに移ったか、何が伴奏かを明確化してやりさえすれば、その後は音楽の内容に沿った音量調整をしていけばいいと思います。「小さく吹いたら聞こえない」と思うから大きく吹くのではなくて、「聞こえさせた」あとに小さい音にする。こういったことがサックスアンサンブル全体の上達に繋がると思います。

我こそは!と積極的に取り組むのはいいことかもしれないし、豊かな響きがサックスの魅力であるのは確かです。ただ、そればかり主張しては「もうお腹いっぱい」ですよね。その魅力を一層引き立たせるためにはどうしたらいいかを、いま一度考えてみましょう。

 

次回のテーマは「“サックス大国日本”をさらに盛り上げるために」。
日本でとても人気のあるサックスを、文化として広めていくための取り組みについて考えます。お楽しみに!

※このコーナーは、「THE SAX」誌で2007年から2015年にかけて連載していた内容を再編集したものです

 

須川展也 Sugawa Nobuya

須川展也
日本が世界に誇るサクソフォン奏者。東京藝術大学卒業。サクソフォンを故・大室勇一氏に師事。第51回日本音楽コンクール管楽器部門、第1回日本管打楽器コンクールのいずれも最高位に輝く。出光音楽賞、村松賞受賞。
デビュー以来、名だたる作曲家への委嘱も積極的に行っており、須川によって委嘱&初演された多くの作品が楽譜としても出版され、20-21世紀のクラシカル・サクソフォンの新たな主要レパートリーとして国際的に広まっている。特に吉松隆の「ファジイバード・ソナタ」は、須川が海外で「ミスター・ファジイバード」と称される程に彼の名を国際的に高め、その演奏スタイルと共に国際的に世界のサクソフォン奏者たちの注目を集めている。
国内外のレーベルから約30枚に及ぶCDをリリース。最新CDは2016年発売の「マスターピーシーズ」(ヤマハミュージックコミュニケーションズ)。また、2014年には著書「サクソフォーンは歌う!」(時事通信社)を刊行。
NHK交響楽団をはじめ日本のほとんどのオーケストラと共演を重ねており、海外ではBBCフィル、フィルハーモニア管、ヴュルテンベルク・フィル、スロヴァキア・フィル、イーストマン・ウインド・アンサンブル、パリギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団など多数の楽団と共演している。
1989-2010年まで東京佼成ウインドオーケストラ・コンサートマスターを22年余り務めた。96年浜松ゆかりの芸術家顕彰を表彰されるほか、09年より「浜松市やらまいか大使」に就任。2016年度静岡県文化奨励賞受賞。
サクソフォン四重奏団トルヴェール・クヮルテットのメンバー。ヤマハ吹奏楽団常任指揮者、イイヅカ☆ブラスフェスティバル・ミュージックディレクター、静岡市清水文化会館マリナート音楽アドバイザー&マリナート・ウインズ音楽監督、東京藝術大学招聘教授、京都市立芸術大学客員教授。
 
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