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山元康生の吹奏楽トレーニング!│第1回

「吹奏楽の甲子園」とも言える「全日本吹奏楽コンクール」が中止になって、練習のモチベーションが下がっている方も多いかと思います。
しかし、この機会にフルート演奏の基礎を見直して「良い音」「正しい音程」「音量のコントロール」「正確で俊敏な指使い」を手に入れられるトレーニングをしてみませんか?

♪♪♪

コンクールが目前に迫っていると、基礎をないがしろにして課題曲、自由曲の練習ばかりになりがちです。実は基礎力が足りない状態で曲を練習するのは、時間と体力のムダ使いになり、大変な損をしてしまいます。
これから吹奏楽のフルート、ピッコロ奏者に、すぐ役立つ基礎練習を6回に分けて連載します。
基礎力のアップができれば、譜読みの時間(楽譜を初めて見てから間違えず止まらずに吹くことができるまでの時間)を短くできますし、音量、音程のコントロールも上手にできるようになります。
毎日、少しの時間でできる練習を連載していきますので、来年のコンクールだけでなく、フルート人生に役立ててください。

今回は5つの調の音階とアルペジオ(分散和音)を練習します。
吹奏楽ではトランペット、クラリネット、サクソフォーンなどの移調楽器が演奏しやすいように、変ロ長調、変ホ長調などの♭系の調性で書かれた曲が大変多いです。
調性は全部で24あり、そのすべてを練習する必要がありますが、とりあえず調号が♭4つまでの長音階を練習しましょう。
音楽理論を勉強する意味でも必ず毎日練習してください。

 


まず、5つの調の楽譜をご覧ください。
この5つの音階と、それに続くアルペジオを、いつでも暗譜で吹けるようになることが目標です。焦る必要はありません。一週間に1つずつ練習していけば5週間でできるようになります。
それぞれを練習するだけでなく、音階の名前と意味を覚えてください。
それぞれの音階に英語、ドイツ語、日本語での名前を付けておきました。どの言語でも最初は主音の音名(音階をスタートする音)、その次は長調、短調の区別が示されています。
例えば、B♭major、B dur、 変ロ長調と書かれていれば、この譜例の場合は、シのフラットからスタートする長調という意味になります。(ちなみに短調は英語ではminor、ドイツ語ではmollと言います)
それぞれの音階を丁寧に練習することによって、楽譜の最初にフラット2つの調号が書かれているのを見た時に「シとミは自動的にフラット!」と、すぐに意識する事ができるようになります。
ただし、フラット2つの調号は変ロ長調だけではなく、ト短調の場合もありますので、最終的には、24すべての音階が吹けるようにしてください。

C major-C dur-ハ長調
※F major-F dur-ヘ長調
※B♭ major-B dur-変ロ長調
※E♭ major-Es dur-変ホ長調
※A♭ major-As dur-変イ長調

※B♭はブリチャルディキーと右⼈差し指の両⽅の指使いで練習する

>>次のページへ続く


 

山元康生

山元康生│Yasuo Yamamoto
1980 年、東京藝術大学音楽学部器楽科卒業。同年6月渡米し、ニューヨークでのジュリアス・ベーカー氏のマスタークラスに参加し、ヘインズ賞を受賞。その後2ヵ月間にわたってベーカー氏に師事。1982年、宮城フィルハーモニー管弦楽団(現・仙台フィル)に入団。1991年より、パリ・エコールノルマル音楽院に1年間学ぶ。1997年から度々韓国に招かれマスタークラスやコンサートを行なう。また、2006年にはギリシャとブルガリアにてマスタークラスとコンサートを行なう。2002年、Shabt Inspiration国際コンクール(カザフスタン)、2004年、Yejin音楽コンクール(韓国)、仙台フルートコンクールに審査員として招待される。

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