健康とフルートのレベルアップ! 紫園 香&松村 卓 第1回

「フルート☓骨ストレッチ®」

「骨ストレッチ®」──それは松村 卓氏が考案したストレッチで、スポーツ界の一流アスリートに称賛され、TBS「金スマ」、日本テレビ「シューイチ」などを始めとしてTV、メディアに広く取り上げられている、今注目のストレッチです。この骨ストレッチに出会った紫園 香氏がフルートをはじめとする楽器奏者にも広めたいと、この度、松村氏との対談が実現。動画での実演も含め、3回シリーズでお届けします。特別な器具や道具もいらない簡単ストレッチで、あなたの体が劇的に変わります!

第1回テーマ 骨ストレッチとは?──骨が大切な理由

紫園先生が骨ストレッチと出会ったきっかけを教えてください。
紫園
数年前に骨ストレッチを知る機会があり、東京・新宿で行なわれているレッスンにお邪魔しました。続けたいと思っていましたが、姑の介護があり通えなくなったので、松村先生の本を頼りにコツコツ自分で骨ストレッチを続けていました。ところが、介護疲れで腰を痛めてしまい、医者には手術が必要だと言われ青ざめました。
痛くて何もできない状態でしたが、不思議に骨ストレッチだけはでき、そこに一筋の光を見出して、これをやるしか私には再生はないと思ったのです。それ以来2年ほど経ちましたが、体の内側からエネルギーが溢れ出るような感覚になり、腰の痛みもなくなりました。
私の楽器は24KSRというとても重い楽器で、今まではそれを鳴らさなければ、と頑張って吹いていたのが、骨ストレッチをするようになってからは自然に鳴らせるようになりました。脱力と骨にまかせる吹き方が功を奏しています。
アンサンブルレッスンでも骨ストレッチを取り入れてみたのですが、生徒さんたちの音色と響きがとても良くなるんですね。それで、ぜひ音楽界、特にフルート界に広く紹介させていただきたいと思った次第です。
松村先生は、骨が大事だということをどのようなきっかけでお気づきになりましたか?。
松村
私は若い頃、陸上の100m走をやっていて、本氣で日本一を目指していました。特に力を入れていたのは、筋トレです。
しかし、からだ本来のバランスを考えずにパワーばかり求めた結果、度重なる怪我に悩まされました。夢を追いかけて全力で取り組んだことが何故、良い結果に結び付かなかったのだろうか……。その答えを知りたくて、現役を退いてから体のことを独学で勉強し始めました。
当時、宮城県の強化コーチをされていたS先生から「骨盤を動かしてみないか?」と云われ、“骨盤なんか動かして足が速くなるのだろうか?”
これが私が「骨」を意識した始まりでした。
ところが人間は意識したら不思議と情報が入ってくるもので、たまたま入った書店で野口三千三先生(故)が考案された「野口体操」の本に出逢いました。
“体を操るのが体操だ”の言葉に魅了され東京で開催されている講座を受講しました。
前屈の姿勢から起き上がる時に頭から起き上がるのが普通ですが、野口体操では腰から徐々に背骨を意識して起き上がり、最後に頭を乗せるイメージで行ないます。
このメソッドを行なっている最中に生まれて初めて“背骨の動き”を感じることができたのです。
「骨って動くんだ!」と感動しました。
それから、NHKの「プロフェッショナルの流儀」という番組で、ガンダムの特集が組まれていたのを見たときのことです。セル画をイラストレーターに書かせているときに、「なぜ節々の関節を派手に大きく書くのだろう?」と思い、無意識に右手首の関節を左手で持って振ってみました。すると、右肩がストンと落ちたんです。
そこで突然閃いて出てきた言葉が「節々」でした。風邪を引いたときに、高熱を出すと寝返りをするのもきついですよね。でも熱が下がって風邪が治ったら体は楽になる。もしかしたら風邪を引いているときは“節々の関節の微調整”をしているのではないか、と考えて全身の関節を持って動かしていくうちに骨ストレッチの原型ができたのです。
その後、武術研究家の甲野善紀先生と出会い、人間のすべての動作には骨が重要であると確信しました
紫園
偶然の出会いが重なったのですね。
松村
はい、そこから深層筋という、目には見えない、いわゆる“インナーマッスル”を活用することがもっとも大切であることを知りました。私が昔、取り組んでいた筋トレでは胸板や太い腕や足、腹筋などの“アウターマッスル”ばかりを一生懸命に鍛えていましたがアスリートに大事なのは内側の“インナーマッスル”だったのだと氣づいたわけです。
僕も紫園さんも、同世代の方と比べるととても若く見られます。
人間には「ミトコンドリア」という微生物が体の中にいて、この「ミトコンドリア」が元氣な人は健康でいられる。実は、「ミトコンドリア」が活性化すると長寿遺伝子がONになります。また、若さのスイッチもONの状態になります。
骨ストレッチは体の中心にある“骨格”を動かすメソッドが多いので、インナーマッスル(深層筋)内のミトコンドリアが活性化されるのです。
インナーマッスルを鍛える、というような動画が多いですね。
松村
そうですね。筋トレで表層筋(アウターマッスル)の筋肉を鍛えたら、体の中にある深層筋(インナーマッスル)を鍛えることができると思いますか?
例えば、池や湖の表面の水が凍って固くなったら、中の水を触ったり動かしたりすることはできませんよね。
だから、私は筋トレ、腹筋や背筋などをやめて表層筋(アウターマッスル)を柔らかくしてみようと考えました。骨ストレッチは体の芯にある「骨」を動かすメソッドなので自然と無理なく深層筋(インナーマッスル)を鍛えることができます。
その結果、骨格を支える「骨格筋」がしっかりしてきますので猫背の改善や腰痛やひざ痛を緩和し、また、「ミトコンドリア」も活性化されるので健康な体にドンドンなっていきます。
ところで骨は「骨ホルモン(オステオカルシン)」を出すというのを知っていますか? 
骨に刺激を与えると骨芽細胞が活性化されて“特別なホルモン”が出ます。
この「骨ホルモン」は、記憶や免疫力をアップしますし、若返りにもなる。骨ストレッチは骨を刺激するので、やればやるほど女性は若返ります。
話は変わりますが……、米俵一俵は60キロですが、なぜ60キロかわかりますか?

いいえ、考えたことはありませんでした。
松村
昔、女性と子供が持ちやすい重さにするために60キロになったそうです。昔の女性だったら当たり前に持てる重さが60キロ。びっくりするでしょ。重量挙げの選手も同じで、骨で持ち上げるコツがあるんです。だから、紫園さんが吹いているフルートも筋肉で持つと、疲れるのが早くて長く持てないと思います。でも骨ストレッチの基本の「手のひら返し」をやると、骨格で持てるようになるから楽に吹けるんです。
紫園
本当にそうですね。手のひら返しはいつもやっています。
松村
「骨身にまかす」とか「骨が折れる」「あいつは骨がある」など、日本語には骨を使った言葉がたくさんあります。日本人は骨という言葉を身体感覚で表していたんです。それが戦後にアメリカ文化が入って、筋肉に変わったんです。でも、歌舞伎や舞、日本舞踊などの世界の人は今でも、骨格を使うことを伝統で引き継いでいます。「骨」「筋肉」「関節」を連動させて本来のいい状態に戻すのが私の骨ストレッチです。
紫園
骨ストレッチをする前は、筋トレをずっと続けていましたが、帰宅すると体が重くなって、フルートを吹くときに「何故なんだろう?」と疑問を感じていました。でもそれは外側の筋肉にだけ効いていたのですね。骨ストレッチを行って骨身に任せる吹き方をすると、体が反応して、自然に楽に響くのです。今までは外側の筋肉を使った結果、締め上げ気味に吹いていたことに気づき、目が開かれる思いでした。
 

次回テーマは「骨ストレッチは体の羅針盤」で3月3日に公開予定です。お楽しみに♪

 

Profile
ペトリ・アランコ Petri Alanko
紫園香【フルーティスト】
(しおん かおり)
東京藝術大学、同大学院を各首席卒業。渡欧しフルートの巨匠M.モイーズに師事、薫陶を受け、マスターコース修了。第7回「万里の長城杯」国際コンクール他、入賞多数。NHK洋楽オーディション入選。ジュネーヴ国際音楽祭等、海外から招聘多数。外務省招聘等で世界24ヶ国でリサイタル開催。近年では2018年ブラジル、2019年アメリカから招聘。皇居にて御前演奏。現在、日本クラシックコンクール審査員。MFLC、ユーオーディア・アカデミー各講師。ケニア「コイノニア教育センター」特別講師。日本バプテスト連盟東京神学校教会音楽科講師。キリスト品川教会音楽伝道師。NHK、スイス放送など世界各国のメディアでその活動は大きく報道されている。13枚のオリジナルCD他発売中。ハンガーゼロ(日本国際飢餓対策機)構親善大使。
紫園香HP http://sionkaori.com/

 

Profile
松村 卓
(まつむら・たかし)
1968年生まれ。スポーツケア整体研究所代表。中京大学体育学部体育学科卒業。陸上競技・短距離選手として全日本実業団6位などの実績を持つ。引退後、ケガが多かった現役時代のトレーニング法を根底から見直し、筋肉ではなく骨の活用法に重点を置いた「骨ストレッチ」を考案。仙台市を拠点に全国各地で講習会を行い、多くのアスリートや体に不安を抱える人たちの指導にあたる。著書に『ゆるめる力・骨ストレッチ』『やせる力・骨ストレッチ』(文藝春秋)『「筋肉」よりも「骨」を使え!』(共著・甲野善紀)など。
・スポーツケア整体研究所 https://www.sportcare.info
・WT-LINEⓇシューズ公式オンラインショップhttps://wtline.jp/
 
 
 

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