フルート記事 エチュード活用法 アルペジオ編
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THE FLUTE 146号 Special Contents

エチュード活用法 アルペジオ編

LESSON

147号の特集では、アルテスやケーラーなどフルートの練習でよく使用される教則本を取り上げ、「タンギング」「音の跳躍」「アーティキュレーション」というテクニック別の上達する練習法を紹介しました。フルートオンラインではこの雑誌の内容に続き「アルペジオ」についてWEB限定の記事を配信します。指導経験豊富なプロ奏者の方々の解説をもとに、フルートをさらに上達させましょう!

4人の奏者からメッセージ
エチュードをもっと活用しよう、楽しもう!

“練習方法についてのアドバイス ” 〜横山聡子〜

横山聡子

エチュードのそれぞれの曲には、必ず課題があります。
● スタッカートをはっきり!
● アーティキュレーションを正確に!
● 表情豊かに歌おう!
● 指をできるだけ早く正確に!
など……。
この曲は何が課題でどのような演奏を求められているのか?ということを考え、この曲ができるようになるためには、どのような基礎練習が必要かを分析し、それに合わせてタファネルゴーベールなどの音階分散和音の訓練をすると、効率の良い練習ができます。

最初から既定の早いテンポでやりたいという気持ちはよくわかります。しかし、最初の譜読み段階で誤って楽譜を読んでしまうと、そのミスをずっと引きずってしまいます。最初はかなりゆっくりとしたテンポで丁寧に楽譜を読み、できるまではテンポを上げずに正確に練習してみてください! 最終的に早いテンポで吹ければいいので、ゆっくり落ち着いて! 自分がスローモーション動画の主人公になったかのように。上手に曲が仕上がるので、試してみてくださいね!

“まず大切なこと ” 〜町井亜衣〜

町井亜衣

どの練習をするときにもまず大切になるのは、フルートを持った時の姿勢が無理のない正しい姿勢であるかどうか、指や腕などに無駄な力が入っていないか、ということです。姿勢一つ、脱力一つで、今までできなかったことが楽にできるようになってしまうことは頻繁に起こりますので、よい姿勢でフルートを構えられているか、まずはチェックしてみましょう!
その他、基礎となる「お腹の支え・息のスピード・アンブシュアの柔軟性」も重要な要素です。それらの点を十分意識しながら、理想の演奏ができるようにステップアップするための技術を手に入れていくことができたら、ワクワクした楽しいフルートとの時間を過ごすことができるでしょう。

“苦手分野を克服する ” 〜久保順〜

久保順

皆さんは「エチュード」と聞いた時、どんなものを想像しますか? ああ、あの「基礎練習よりは面白そうだけど、曲未満な感じのアレ」と思っていませんか? 確かにエチュードってCDにはなってないし、リサイタルなどでも聴かないし、どう選んでいいか、何が良いかがわからない……という方が多くいらっしゃると思います。だけど、実際には演奏したい曲を自在に吹けるようになり、演奏力をパワーアップするビタミン剤なのであります(!)

エチュードの選び方ポイント
日本語では「練習曲」と言われる通り、エチュードとは練習して個人の技術を向上させるための曲であり、苦手なテーマを集中して練習できる、素晴らしいツールなのです。音符や楽譜を読むのに慣れてきたら、演奏したい曲中でテクニック的にどうしても苦手だなと思う箇所をピックアップしてみましょう。そしてそれをピンポイントで繰り返し、かつフルートの全音域で練習できるエチュードを選びましょう。エチュードを選ぶ時のポイントは
● 何を練習したいか(苦手なテーマ)
● テーマが全体に繰り返されているか
● 自分で理解できるか
がはっきりしている曲かどうかを、まずチェックしましょう。楽器を手に持つ前に、エチュードの全体を見て気をつけなければいけない箇所、難しそうな音などは、簡単に先に譜読みをしてから始めます。

練習で必ず守りたいこと
● メトロノームを使って、ゆっくりから
● 1段から3小節、2小節、1小節、1拍ずつと小分けにする
● 5回完璧にできたら、徐々にテンポを上げる

大切なのは、最後まで演奏できることよりも「苦手なテクニックが克服できているか」です! 楽譜の1段ずつ、ゆっくりからテンポが速くなっても完璧に吹けるようになれば、上達している証拠です。

“楽しもう! デュエットを使ったおすすめ練習 ” 〜池邊昇平〜

池邊昇平

タンギング、アーティキュレーション、アルペジオ、音の跳躍……といった項目をより良くする方法を挙げるとすればキリがなく、無限のアプローチがあるのではないかとさえ思います。
通常とは少し趣の違う練習曲として、ガリボルディ作曲・フルートのためのデュエット 作品145 第1集(シンフォニア)は、アルテス第1巻を終え、第2巻に入っている方が、先生や友人たちと楽しみながら学ぶには良い教材であると思いますので、ご紹介させていただきます。
さまざまなテクニックを総合的に学んだり、アンサンブルの中で得られる楽しさは、一人では得難いものです。相手がいることで、反射的にオウム返しのようなアプローチが可能であることも、奏法上のインスピレーションを得るきっかけになるのではないでしょうか。

故アンリエット・ピュイグ=ロジェ氏は「音楽とは何か?」という問いかけに対し、“音楽は夢に、未知なるものに、言葉にならないものに開かれた扉である”と仰っていました。僕の大好きな言葉のひとつです。フルートを、音楽を楽しんで下さい!

 

教則本を持っていても、本当に役立つ練習方法や、なぜこの練習をやるのか?という目的などがいまひとつわからない……という人も多いようです。
今回取り上げたのはさまざまなエチュードの中のほんの一部ですが、克服したいテクニックを意識した練習の大切さがご理解いただけたと思います。
一度練習したら終わり、ではなく、この先も何度も見返して繰り返し練習してくださいね。そのたびに、必ず発見があるはずです。

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