青木 明 Aeterna-永遠の響き-
日本のフルート界を牽引し、とりわけフルートアンサンブルにおいて大きな功績を残してきた青木明氏。93歳を迎えた現在もなお精力的に活動を続ける氏が、門下生たちとともにコンサートを開催した。
1956年に東京藝術大学を卒業後、東京フィルハーモニー交響楽団、京都市交響楽団で活躍し、上野学園大学、武蔵野音楽大学、桐朋学園芸術短期大学、名古屋芸術大学および大学院教授(現・名誉教授)として数多くのフルート奏者を育ててきた青木明氏。
また、東京フルートアンサンブル・アカデミーの創立指揮者として、フルートオーケストラの礎を築いた存在としても知られている。
今回開催されたのは、長年育て上げてきた弟子たちとのコンサート。90歳を超えた今もなお、真摯に音楽と向き合う姿に深い感動を覚える公演となった。
人柄がにじむ、温かな音色
コンサートは、青木氏によるR.シュトラウス『ソナタ Op.18 より インプロヴィゼーション』で幕を開けた。
車椅子でステージへ進み、静かにピアノ椅子へ移る。そしてフルートを手にした瞬間、表情がふっと“演奏家の顔”へ変わる。その姿だけでも胸を打たれる。
長年にわたり培われてきた青木氏の音色は、どこまでも温かい。聴き手の心にすっと染み込んでくるような心地よさがある。
とりわけ静寂の中で奏でられる弱音の美しさは格別で、言葉では形容しがたいほど繊細だった。

圧倒的な『グランド・ポロネーズ』
愛弟子である菊池かなえ氏との和やかなMCを挟み、続いて演奏されたのは、R.シュトラウス『4つの歌曲』Op.27より〈モルゲン〉。
フルートアンサンブルならではの柔らかく透明感のある響きが生かされ、楽曲の持つ抒情性を美しく描き出していた。
続いて披露されたのは、清水信貴氏をソリストに迎えた『グランド・ポロネーズ』。難曲として知られる作品だが、清水氏のテクニックは圧巻だった。
しかし、それ以上に強く印象に残ったのは、その音色である。フルートオーケストラを背にしながらも埋もれることなく、むしろそれを突き抜けてくるような濃密で艶やかな響きに、思わず聴き惚れてしまった。
この2曲はいずれも青木氏による編曲。フルートアンサンブルとオーケストラを知り尽くした氏だからこそ成し得る、絶妙なオーケストレーションが光っていた。

93歳とは思えぬ躍動感
後半は、F.メンデルスゾーン『交響曲第3番』。出演者の一人でもある西澤佳代氏によるアレンジで、指揮は青木明氏が務めた。 ティンパニやハープも加わり、フルートオーケストラの枠を超えた壮大なサウンドが生み出されていく。
この作品は全4楽章から成り、作曲者自身が“楽章間を切れ目なく演奏すること”を望んでいたことで知られる。この日の演奏もノーカットで披露された。
何度も年齢に触れるのは恐縮だが、青木氏は93歳。しかし、そのタクトから生まれる音楽には、年齢をまったく感じさせない躍動感があった。
重厚な響きの中にも繊細さが宿り、ホールいっぱいに豊かなハーモニーが広がっていく。作品が内包するエネルギーを、フルートオーケストラという編成で存分に引き出した演奏だった。
終演後にはロビーでレセプションも行われ、多くの関係者や門下生たちが集った。
誰もが青木氏との会話を楽しみ、記念写真に収めていく。その光景からは、氏がこれまで築き上げてきた歴史と、人とのつながりの深さが自然と伝わってくる。
これからも末永く元気に、音楽活動を続けていただきたい——そんな思いを胸に、会場を後にした。

青木 明 Aeterna~永遠の響き~
93歳のフルーティストと門下生たちによる音の継承
[日時]5/9(土)13:30開場 14:00開演
[会場]昭和音楽大学ユリホール(神奈川)
[出演]青木 明/清水信貴(ソロフルート)、後藤晴美(フルートダモーレ)、朽名杏樹(Vc)、朽名彩音(Cb)、渡辺かや(Hp)、石川幸枝(Pf)、萩原和也(Timp)、相場皓一/五十嵐由美/石井美由紀/榎本祐子/大石三郎/大鳥居明子/大洞佳子/大見幸司/長永圭庫/菊池かなえ/菊池直人/北澤 幸/古田土勝市/権藤純子/佐々木寿弘/佐藤真理/澤田由香/清水理恵/高橋恵子/高久 進/段田尚子/千脇久美子/塚本満帆子/土澤裕子/遠山美緒/永井由比/西澤佳代/濱吉麻里子/平山 恵(Fl)
[曲目]R.シュトラウス:ソナタOp.18より インプロヴィゼーション、R.シュトラウス:『4つの歌曲』Op.27より “モルゲン”、T.ベーム:グランドポロネーズOp.16、F.メンデルスゾーン:交響曲第3番 『スコットランド』Op.56イ短調
[主催]青木明コンサート実行委員会










