ラテン音楽 代表的ジャンルと進化の歴史[その1]
“ラテン音楽”と一言でいっても、その背景には実に多様な国々と文化、そして長い歴史がある。カリブ海から中南米に広がる音楽は、先住民文化、ヨーロッパ文化、アフリカ文化が交錯しながら独自の進化を遂げてきた。本稿では、“ラテン音楽”と総称される数々のジャンルを、その歴史や特徴とともに紐解いていきたい。
写真提供:赤木りえ、城戸夕果、幸枝

ラテンって何?
人々の人生と深く結びつく
中南米の音楽
“ラテン”という言葉は、「ラテンアメリカ」に由来する。一般的には、中南米地域を指す言葉だが、日本の音楽シーンでは、カリブ海諸国から中南米までを含めた広い地域の音楽をまとめて“ラテン音楽”と呼んでいる。
ひと口にラテンアメリカといっても、その地域は非常に広大であり、言語や文化も実に多彩だ。メキシコ、アルゼンチンなど、多くの国々ではスペイン語が公用語として使われている。一方、ブラジルではポルトガル語、ハイチなどではフランス語、スリナムではオランダ語、ジャマイカなどでは英語が使われている。プエルトリコではスペイン語と英語の両方が公用語だ。
このように、地域的には近接していながらも、それぞれ異なる歴史と文化を持っているからこそ、ラテン音楽は多様な発展を遂げてきたのである。
中南米の人々にとって、音楽は生活の一部だ。祭りや祝祭だけでなく、結婚式や誕生日など、日常のさまざまな場面で人々は歌い、踊り、演奏する。しかしラテン音楽は、単に“陽気な音楽”というだけではない。そこには、苦悩や哀愁、社会への怒り、祈り、そして希望までもが込められている。だからこそ、音楽は人々の人生と深く結びつき、世代を超えて受け継がれているのである。
ラテン音楽の起源
ラテン音楽の起源は、15世紀末に始まったヨーロッパ諸国によるアメリカ大陸侵略の歴史と深く結びついている。
1492年、スペインの支援を受けたクリストファー・コロンブスがカリブ海へ到達。その後、“コンキスタドール”と呼ばれるスペインの征服者たちが各地を制圧し、アステカ帝国やインカ帝国などの高度な文明も滅ぼされていった。
先住民たちは過酷な労働を強いられ、さらにヨーロッパから持ち込まれた疫病によって人口が激減した。そこで、サトウキビやタバコ農園の労働力を補うため、アフリカから多くの人々が奴隷として強制連行されることになる。これが“大西洋奴隷貿易”である。
こうして中南米では、先住民文化、ヨーロッパ文化、アフリカ文化が複雑に交わり、新しい文化が生まれていった。
特に音楽に与えたアフリカ文化の影響は極めて大きい。コール&レスポンス、複合リズム、打楽器中心のアンサンブルなど、今日のラテン音楽に見られる特徴の多くはアフリカ由来である。
一方、ペルーやボリビアのアンデス地域では、先住民文化が比較的色濃く残った。ケチュア語やアイマラ語とともに、独自の民族音楽も現在まで受け継がれている。
リオデジャネイロにあるショーロ学校「Escola Portátil de Música」の中庭で行なわれたHamilton de Holandaの演奏を聴きに(photo by Yukie)
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