フルート記事
kokoro-Neがお届けする〜フルートで彩る フィギュアスケートの世界〜

第19回|「オペラ座の怪人」

皆様お久しぶりです! 2本のフルートとピアノのトリオ、kokoro-Neです。
お陰様でこのコーナーも4年目に突入しました! 今シーズンも、フィギュアスケートで使用された楽曲の魅力をフルートを通してお伝えすると共に、プログラムやスケーターについても熱量多めでお届けしたいと思います。4年目の第1回は、メンバー満場一致で号泣の「鈴木明子×オペラ座の怪人」についてお話します。お楽しみください。

 

ミュージカル「オペラ座の怪人」

【登場人物】
エリック(怪人):
音楽の才能に恵まれながらも、醜い容姿で生まれたために、母親からも愛されず、オペラ座の地下に引き篭もって孤独に暮らしている。クリスティーヌにストーカーのような愛情を募らせてしまい、自分好みの歌手に、そして妻にしようと画策する。

クリスティーヌ:
有望な若手コーラスガール。楽屋の裏から自分にだけ聞こえるように指導してくれる謎の声を、亡き父の使いである「音楽の天使」と信じてメキメキと実力をつける。「音楽の天使=怪人」と知ってからも、音楽の師匠としてエリックを尊敬してしまう。

ラウル:
オペラ座の支援者の子爵。クリスティーヌと幼馴染の青年。クリスティーヌを事件や怪人から守ろうとする。

物語の舞台は1870年代、パリのオペラ座。謎めいた事件が起きており、“オペラ座の怪人”に支配されている、と噂されていた。
そんな中、急遽代役に抜擢されたクリスティーヌは見事に大成功を収める。それを聴いていたラウルとも再会。しかし、ラウルからの食事の誘いを断って「音楽の天使」のレッスンに行ってしまうクリスティーヌ。“音楽の天使”は「姿を見せよう。」と、オペラ座の地下の隠れ家へクリスティーヌを連れて行く。実はそれが怪人で……というお話です(だいぶざっくり!)。 バッチバチの三角関係だけではないので、まだの方は是非ご覧ください。

アンドリュー・ロイド・ウェバー

『エビータ』『キャッツ』など、名作を多数生み出している作曲家。
タイトル曲『オペラ座の怪人』は、観たことがない人も、あのパイプオルガンの「ジャーーーーージャジャジャジャジャーーーー(動画の1’13”)」だけは耳にしたことがあるのではないかと思います。
わかりやすいメロディ、サウンドで、吸引力が高い作品が多いです。特にボーカル曲は捨て曲なし、曲だけ聴いて「これ観に(聴き)行きたいなぁ」と思わせてしまう、類い稀な作曲家です。

タイトルが「Phantom」+「Fantasy」=「Phantasia」と造語になっている通り、オペラ座の怪人に出てくる名曲たちが、フルートの「カルメン幻想曲」のようなヴァリエーションで彩られています。セルフカバーとは言え、これだけメロのパワーが強く、曲単体で知名度が高くなってしまっているヴォーカル曲を、インストならではの良さを活かして編曲するのは簡単なことではないと思います。「これでもか」と、演奏者の技術を過剰に見せつけることなく、上品かつほどよい匙加減のヴァリエーション。10曲以上をまとめ上げている構成力がお見事です。個人的にはこの「Phantasia」ベースのプログラムが好きです。

鈴木明子×「オペラ座の怪人」

冒頭のオルゴールのシーンを彷彿とさせる明子クリスティーヌ!(この衣装もむちゃくちゃ好きです)

演技開始から、一気に物語の世界に連れて行ってくれます。可憐なクリスティーヌを表現しながら、ぐんぐん加速して、事件を予兆するような「序曲」に曲が変わると、ジャンプを3本。

一転して「Think of Me」に入ると、代役で大成功したクリスティーヌを思わせる様な瑞々しさ溢れる見事なステップ! ヴァリエーションが付いて音数が増えたフレーズの1音も逃さぬように、足元では一歩ずつ見事に拾い上げ、腕ではサウンドを包み込むような表現……現役ラストイヤー、経験値を積んだ上での“初々しさ”の表現に目を奪われてしまいます。

「The Point of No Return」に変わると、曲調と同じく、足元も力強くなっていくのですが、この場面、音をオフにして見ても曲が変わったのがわかるくらい、違います。こういうのも垂涎ポイント。ぐんぐん加速してジャンプも決まり、「Music of the Night」の壮大なメロディとともにスパイラル。

メロディの山の「シレレレ♪」で、最後に3サルコウが決まるのもかっこいいです(全日本の時、ここで小さくガッツポーズ出ちゃってたのがかわいかった)
ラストは、繊細なスピン。オペラ座で起きたことを回想するように静かに締めくくられます。最後のポーズも真似する人がいっぱいいましたね。大好きな作品です。

名プログラム『オペラ座の怪人』

髙橋大輔 2006-07 FS
音楽の編集が好きです! そして今季、かなだいペアのFDが『オペラ座の怪人』というニュースが先日飛び込んできました。大ちゃんは15年ぶりですね。かなちゃんと、どんなプログラムを見せてくれるのか、とっても楽しみです。

●パトリック・チャン 2009-11 FS
何滑っても美しい……ローリー・ニコルの振り付けも素敵です。

●グレーシー・ゴールド 2014-15 FS
他の選手があまり(誰も?)使っていない「Wishing You Were Somehow Here Again(墓場にて)」をメインにした選曲が新鮮でした。

 

演奏動画

 

プロローグ(「マスカレード」のメロディ)
序曲 オペラ座の怪人
Think of Me
Angel of Music
怪人の隠れ家
墓場にて
No One Would Listen
The Point of No Return
The Music of the Night
All I Ask of You

10曲で構成したメドレーです。著作権の関係で楽譜の出版はできませんが、kokoro-Neではもう10年近く、大事に演奏しています。さすがに30分は無理なので10分強にまとめましたが、これがもう、あちこち捨てがたくて(〃ω〃)

あれもこれも入れようと欲張ると、ヴァリエーションやサウンドのテンションが支離滅裂になったり、 曲ごとの良さが引き立つように並べ替えるとストーリーとかけ離れてしまったり……。

アレンジの前に、構成でクタクタになってしまいましたが、お客様からも長年愛聴していただいているので、 今となっては取り組んで本当によかったです(と思うことにしています。アレンジあるある。笑)

記事内で触れたプログラムや楽曲の動画をご紹介するblogも書いています。 ご参考になさってください。

①「オペラ座の怪人」を使用したフィギュアスケートのプログラム
https://ameblo.jp/mayuoowada/entry-12768674387.html

②オペラ座の怪人の楽曲
https://ameblo.jp/mayuoowada/entry-12768680005.html 

 

お知らせと読者プレゼント!

①お知らせ

kokoro-Ne Presents「フィギュアスケートの世界 Vol.3」開催決定!
日時:2023年2月23日(木・祝)14時~
場所:パウエル・フルート・ジャパン アーティストサロン“Dolce”(各線「新宿」より徒歩5分)

大好評のフィギュアシリーズが4年ぶりに帰ってきます! バックナンバーでご紹介した18回分に、新レパートリーを加えてお届けする予定です。詳細は次回お伝えします。お楽しみに!

②読者プレゼント、その1

こちらも3年ぶりとなるクリスマスシーズンの公演です。
お馴染みのクリスマスの名曲をkokoro-Neサウンドで再現します。
是非ご来場ください。こちらのコンサートを、抽選で1組2名様にプレゼント!ご応募お待ちしております!!

 

 

コンサートサロンALKAS 自主企画 第15回演奏会
[日時]2022年12月11日(日)13:30開場 14:00開演
[会場]コンサートサロンALKAS(JR「西船橋」より徒歩5分)
https://alkas-salon.com/
[出演]kokoro-Ne:門井のぞみ(Fl)、大和田真由(Fl)、田仲なつき(Pf)、ゲスト:加藤義男(Ten)
[曲目]Have Yourself a Merry Little Christmas、戦場のメリークリスマス、花のワルツ、クリスマスメドレー、ブエノスアイレスの冬 他(変更になる場合がございます。ご了承ください
[編曲]大和田真由&kokoro-Ne
[料金]¥3,000(税込、全席自由)
こちらのコンサートを、抽選で1組2名様にプレゼント!
ご応募お待ちしております!!


[応募締め切り]11/28(月)
※無料のアカウント登録が必要になります。

 

①読者プレゼント、その2
kokoro-Neの15周年に続き、楽譜のLibraryシリーズも5周年を迎えました。このフルート×フィギュアコーナーのご愛読と、楽譜をご利用いただきました事、改めて御礼申し上げます。ささやかですが、読者の皆様に5周年記念特典のクーポンをお届けします。クリスマスシーズンのご準備にも是非ご活用ください。

 

kokoro-Ne(ココロネ)プロフィール

kokoro-Ne (ココロネ)
門井のぞみ・大和田真由・田仲なつきによる、2本のフルートとピアノのトリオ。
クラシックで培った確かな技術と表現力を基に、色彩豊かなアレンジやハイレベルな演奏で好評を博している。
2007年結成当初より、ジャンルを超えたレパートリーに挑みながらも、リズムセクションや打ち込みなどを敢えて加えず室内楽トリオの可能性を追求し続けている。
TPOに合わせた演奏を得意とする一方、CD・楽譜・オリジナル作品の発表にも力を入れており、オーディエンスはもとより多くのプレイヤーからも支持を得ている。
主な作品
・2009年 1st Album 「 kokoroーNe/ココロネ 」
・2013年 「 コンサートで使えるフルートデュエット曲集kokoro-Ne編 」(ドレミ楽譜出版社)初版以降も増刷を重ね、ロングセラーとなる
・2016年 2nd Album 「 Microcosmos 」
同収録のオリジナル曲「 ミクロコスモス 」楽譜出版
・2017年 楽譜出版「 kokoro-Ne Library 」を立ち上げ、これまでに30タイトルを超える楽譜を発表。続々と新作発表を控えている。

kokoro-Ne公式HP https://www.kokoro-ne.net/
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