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Special Report

みると氏が参加した米国オカリナ・フェスティバル

Photos by:米国オカリナ協会、Mark Chan、Scott Curtis、樹 紫苑
Text:樹 紫苑

 

2015年10月9日、10日の二日間にわたって、米国テキサス州ダラスのアレン市で「米国オカリナ・フェスティバル」が行なわれました。このイベントは、地元アレン市の後援を受けて米国オカリナ協会(US Ocarina Association、理事長:Cris Galeさん、理事:Jon Toneyさん)が昨年に引き続き2回目として企画主催したものです。海外のオカリナ奏者だけでなく、主に米国各地から集まったオカリナ愛好家が多数参加しました。

■1日目(10/9)
1日目は、Allen Library Civic Auditoriumにて米国、日本、中国、ノルウェイのプロのオカリナ奏者によるメイン・コンサートが行なわれました。

Cris Gale(クリス・ゲイル)

Cris Galeさん

同協会の理事長であるCris Galeさん(米国)は、シングル管だけでなく複数管も取り入れた安定の演奏技術と美しい音色で観客を魅了しました。日本との親交が深い彼女ならではの情感豊かな『あざみの歌』を聞いていると、古きよき時代のノスタルジックな日本が思い出され、とても印象的でした。

Cornell Kinderknecht

Cornell Kinderknechtさん

オカリナだけでなくインディアン・フルートをはじめ様々な笛の演奏家として世界各地で活躍するCornell Kinderknechtさん(米国)は軽快なおしゃべりを交え、素晴らしいステージを展開しました。木製のダブルオカリナで演奏した彼のオリジナル曲『ジェネレーション』は、一度聴けば耳に残るメロディラインで聴衆を魅了しました。

Øystein Haga

Øystein Hagaさん

Øystein Hagaさん(ノルウェイ)はオカリナ制作者でもあり、自作の片手オカリナを使って、深みのある豊かな音色で様々なノルウェイの曲を演奏してくれました。不慮の事故により片手を失うという大きなハンデを負ってさえも、Øysteinさんのオカリナ制作と演奏に対する熱意は消えることなく、そのあたたかい音色は聴く人の心にしっかりと刻まれたことでしょう。

Jingya Liu

Jingya Liuさん

Jingya Liuさん(中国)は、中国の伝統的な衣装を身にまとい、神秘的なアジアの美しい音色を届けてくれました。なかでも複数管による馬のいななきを再現した曲が人気で、早いパッセージでも息が乱れることなく、元気いっぱいの演奏で会場を沸かせました。

みると、樹

みるとさんと通訳を務めた樹さん

みるとさん(日本)は、エフェクターを使ってリアルタイムでオカリナの音を重ねていき、最後には複数の共演者と演奏しているかのようなハーモニーを聞かせてくれました。またピアノと合わせてジャズのスタンダード『Take Five』と『Waltz for Debby』をインプロビゼーションとともに披露してくれました。
この記事を執筆している私、樹(日本)も、オカリナと歌で参加させていただきました。日本の曲を中心に演奏し、ボーカルによる原曲とほぼ同じ構成のみるとさんとの『美女と野獣』のデュエットで締めくくりました。なぜか演奏よりもジョークに会場が沸きました(笑)。
最後は、日本の曲『ふるさと』を、みるとさんアレンジのアンサンブルで演奏し、1日目のメイン・コンサートの幕を閉じました。

ふるさと

最後は『ふるさと』を演奏

 

■2日目(10/10)
2日目は、オカリナと音楽に関する様々なプログラムが行なわれました。オカリナによるアンサンブルの練習から始まり、続いてみるとさんによる「オカリナに活用するエフェクター・ワークショップ」が行なわれました。みるとさんは、その柔らかな音色と豊かな表現力、ジャズテイストのインプロビゼーションで知られていますが、オカリナという素朴な楽器に、ギターの演奏に使われる様々なエフェクターを使った斬新な演奏スタイルは、特に世界各国の若い世代の愛好家を魅了しています。

ワークショップ

みるとさんによるエフェクター・ワークショップ

ワークショップでは、ステージ上にみるとさんが普段の演奏活動に使っている様々なエフェクターが並べられ、エフェクターという機材の基本的な機能と電源を入れるところからの使い方、また電気が流れる機材を使ううえで注意しなければならない点などの説明がありました。機材を使えば、オカリナだけでは実現できない様々な効果を生み出すことができる反面、複数のエフェクターをつなぐシールドや電源の状態の確認をはじめとする本番までの準備や音響担当スタッフの方との連携が本番の演奏の仕上がり具合を左右します。こうした目に見えないところにも気を配りお客様に喜んでいただきたいという、みるとさんの想い(ご苦労?)が伝わってきました。次に、波や泡の音、カモメやトンビなどの鳥の鳴き声を再現してくれました。ディレイという効果を使って生み出された不思議な宇宙空間のような雰囲気やループという機能で複数の音をリアルタイムで重ねたサウンドに、聴衆からは驚きの声が上がっていました。その後、お客様にステージに上がっていただき、オカリナでエフェクターを体験していただきました。参加者の顔には、聴く側にある時とは違う楽しさに驚きを交えた笑顔があふれました。

音楽・スタイル講座

参加型の音楽・スタイル講座

エフェクター・ワークショップの後は、同協会理事のJonさんによるユーモアたっぷりのプレゼンテーション「オカリナの歴史」やオカリナのレッスン、ピアニストのCynthia Stuartさんによる様々な音楽スタイルに関する参加型講座があり、盛りだくさんの内容でした。続いてフリー・コンサートです。多くの方がステージで演奏を繰り広げました。
当日、オカリナ愛好家として参加していたJarvis Raymondさんは、実は米国のシカゴでプロとして活躍するギタリストさんです。地元で活躍するパーカッションのJeffrey Ballさんも加えて急きょ打ち合わせ、みるとさんとのセッションが実現しました。ジャズのスタンダード『セント・トーマス』、『A列車で行こう』、『枯葉』、『Isn’t She Lovely』で会場を沸かせました。

ポスターとご紹介カード

地元レストランに貼られたポスター(左)と、公共の場に置かれていたご紹介カード(右)

イベントを終えて、Crisさん、Jonさんとお話しをする機会がありました。米国においてはまだまだオカリナという楽器が知られていないため、イベントを行なううえでは、どうしたらオカリナを知らない方たちに興味を持っていただき会場に足を運んでいただけるのかという点が一番の悩みだそうです。そうした悩みを少しでも打破しようと、地元メディアへの積極的な働きかけでラジオ番組の取材や地元紙への記事掲載も実現しました。アレンという町のいたるところに当フェスティバルのポスターが張られ、多くの公共の場にご紹介カードが置かれていました。お二人の並々ならぬ努力の軌跡と熱意がうかがえました。今後も地元の様々な協力団体と連携をとりながら、まずはオカリナの音色を聴いていただき、オカリナの楽しさに触れていただけるような企画を考えていきたいと、目をキラキラと輝かせていました。

記念撮影

参加者による記念撮影

今回初めて米国でのフェスティバルに参加させていただいたなかで一番印象に残ったこと―それは、愛好家の方がとにかく熱い! 日本、韓国、台湾などのアジア諸国では、年々オカリナ・フェスティバルの数が増え、各地で企画開催されています。このことを踏まえると、まだ発展途上の米国のオカリナコミュニティではありますが、オカリナに対する想いは勝るとも劣らず。彼らは、自分たちが持っているオカリナについての情報を交換しあい、オカリナを吹いてみて動画を作成し思い思いの感想を報告しあいます(オカリナ・レビューと言います)。日本の愛好家の間ではなかなかないことですが、オカリナを比較しその善し悪しについて自分の意見をはっきりと述べたりもします。一言でいうと、オカリナに対してストレートなんですね。またミネソタやデンバーなど、米国の各地で昨年あたりから独自にプログラムを作成して、オカリナのレッスンを提供するケースもあり、その他にも今回フェスティバルに参加した愛好家の方が自分たちの地元でオカリナ・ミートアップという会合を開いているそうです。日本と米国(他の国々も含め)の間でオカリナをキーワードにそれぞれの愛好家による交流がさらに深まれば、オカリナのますますの発展に寄与するのではないかなと感じました。
あっという間の2日間でした。フェスティバルの開催においては、準備から当日までのコーディネートに大変なご苦労があったことと思います。海外からお招きしたゲスト奏者の方々やオカリナ・フェスティバルに参加した愛好家、フェスティバルのお客様一人ひとりのために、どんな時も笑顔で対応してくれてアットホームな雰囲気づくりに気を配ってくださったCrisさん、Jonさんに心から感謝の気持ちを伝え、米国を後にしました。ありがとうございました。

 







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