須川展也 ヤマハサクソフォンを高みへと導いた世界的スタープレイヤー
今やアルトサクソフォンの最高峰として、誰もがいつかは手にしたいと憧れる銘器となったヤマハのカスタムモデルYAS-875EX。
その誕生から今年は20年の節目となる。そこで今回はYAS-875EXが国内外でジャンルを問わずトップ・プレイヤーに愛されるに至った理由を探っていく。まずは本邦サクソフォン界のシンボルとも呼べる世界的プレイヤー須川展也氏に話を訊こう。長年、須川氏とタッグを組み開発に携わってきたヤマハ株式会社B&O事業部 B&O開発部 管教育楽器開発グループ主幹の内海靖久さんにも同席してもらった。
(文:中野 明/写真:土居政則/協力:ヤマハ株式会社、株式会社ヤマハミュージックジャパン)
須川展也氏(左)とヤマハ株式会社B&O事業部 B&O開発部 管教育楽器開発グループ主幹の内海靖久さん先入観なしで判断することの重要性に気づいたブラインド試奏会
印象的だったのは、カスタム発売の直前の頃に、浜松市内のホールを借りてブラインド試奏会をしたことです。ジャン=イヴ・フルモーさんと僕の二人が代わる代わるに他社の楽器も含めステージ上で何本も吹いて、客席の一番後ろでヤマハのスタッフの方々と聴いて(楽器は見ずに)音だけで評価するという。僕がジャン=イヴの音を聴いて「これが一番良い音だなあ、セルマーに違いない(笑)」と二重丸を付けた楽器が、実は875だったんです。先入観なしで聞いたら、ヤマハが一番良かった。逆にジャン=イヴも僕の吹いたヤマハに二重丸を付けていました。
先入観なしで判断するというのはとても大切です。いまも試奏する際には自分ではなくこの楽器を将来きっと吹くであろう大勢の人たちのために、できるかぎり公平で客観的に判断したいと常に思っています。
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・どの方向にも行ける柔軟性を持っているアンテナを立てられる楽器
・最終的にはジャンルを問わずあらゆる人のインスピレーションを刺激したい
須川展也
Nobuya Sugawa
日本が世界に誇るクラシカル・サクソフォン奏者。長きにわたり、現代の名だたる作曲家への委嘱を継続し、クラシカル・サクソフォンのレパートリーを開拓し続けている。国際的に広まっている楽曲が多くあり、クラシカル・サクソフォンの領域への貢献は計り知れない。国内外の著名オーケストラと多数共演。ウィーンのムジークフェラインをはじめ30ヶ国以上で公演やマスタークラスを行なう。東京藝術大学卒業。第51回日本音楽コンクール、第1回日本管打楽器コンクール最高位受賞。02年NHK連続テレビ小説「さくら」テーマ曲演奏。最新CDは自身初の無伴奏作品となる「バッハ・シークェンス」(令和2年度文化庁芸術祭レコード部門優秀賞受賞)。そのほか数多くのCDを録音して世界に発信。東京佼成ウインドオーケストラ・コンサートマスター(89〜10年)、ヤマハ吹奏楽団常任指揮者(07〜20年)を歴任。マリナート・ウインズ、長野市芸術館、イイヅカブラスフェスティバル、東広島くららホールにて参加型吹奏楽のプロデュースを行ない地域と結びついた音楽体験を推進。東京藝大招聘教授、京都市立芸大客員教授。トルヴェール・クヮルテットのメンバー。
[使用楽器]ヤマハYAS-875EXG / ヤマハ YSS-875EXG
(2025.11)













