THE SAX vol.90 Special Contents-1

サックス ネックに関する10の質問〜名門ブランドのトップに訊く

まずはネックに関する基礎知識から知っておくとタメになる耳寄りな話までを識者にレクチャーしてもらおう。 ザ・サックス編集部からの疑問に答えてくれたのは、セルマー・ジャパンを運営する 株式会社ノナカ・ミュージックハウス代表取締役社長 廿樂文彦氏だ!
(協力:株式会社ノナカ・ミュージックハウス)

 

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Q1.ネックを設計する上で、最も大切なコンセプトとは何でしょう?
廿楽
音色や音程に関して影響力が強いのは、振動体であるリードとマウスピース、リガチャー、それからネック、そして楽器本体という順番になります。つまり楽器全体の中では本体も大事ですけど、ネックの重要度が高い。そして、サクソフォンという楽器がどういう方に演奏されているかと考えると、初心者からプロフェッショナルな演奏家まで非常に幅広いですよね。そんなすべての方にとって音圧が軽くもなく重くもなく、また低音から高音まで均等に出る、そういうネックを設計しなければいけないと考えています。とても難しいことですけど、それが一番の目標です。
――
Q2.ネックの製造方法を教えてください。また、過去と現在で製造方法に変化はありますか?
廿楽
まず、台形の金属板を巻いて、昔はロウ付けしていましたが現在は電気溶接で付けます。パイプ状にしたところに、昔は金属の曲げた部分がシワにならないように溶かした鉛を詰めて、それを固めてから軸を使って曲げていました。最後に鉛をネック自体の金属には影響が出ない温度で溶かして、中を綺麗にしていきます。それが今は鉛の替わりに水を入れて液化ガスで冷やして氷にして、同じような工程で曲げて仕上げます。そのあとに成形をしますが、型にはめ込んで中に大量のエアーを注入して形を整えていきます。これでネックのベースとなるチューブの部分は完成。ここからトーンホールを空けて、塗装やメッキをしてからキィなどを取り付けて完成です。

 

サックス ネック
一番左の台形の金属板から最終的に右端の完成形に至る


サックス ネック
パイプ状にしたネック内部に水を入れて液化ガスで冷やしている様子


サックス ネック
型にはめ込んで成形していく様子

(写真はHenri Selmer Parisのホームページより)

 

(次のページへ続く)

Q3.ネックのテーパーや傾斜角度によって、音色や吹奏感にどういった違いが出るのでしょうか?

Q4.セルマーのシリーズIIとシリーズIIIのネックで最も大きな違いは何でしょう?

Q5.ネック前部の三角のロゴプレートにはどのような役割があるのでしょか?

Q6.オクターブキィのオクターブチューブの穴の大きさの違いによって何が変わりますか?

Q7.ネックリングが付いているものと付いてないものがありますが、音色や吹奏感に影響があるのでしょうか?

Q8.演奏ジャンルによって好まれるネックの傾向はあるのでしょうか?

Q9.ラッカー、金メッキ、銀メッキなど、仕上げの違いによる音色や吹奏感の特徴を教えてください。また本体がラッカー仕上げの楽器に金メッキや銀メッキ仕上げのネックを装着している奏者もいますが、どんな効果があるのでしょう?

Q10.ネックコルクの質の良し悪しはあるのでしょうか? また接着の方法は?

 

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