サックス記事

最初に憧れたサックスの音色を追い求めて

vol.95 Interview Plays Wood Stone 日野林 晋×齊藤 達彌

今回ご紹介するのは、サックスが求められるあらゆる音楽シーンでプレイする一方で、自身が音楽と出会った当初から魅せられているジャズやフュージョンのジャンルにおいて、その本領を発揮しているサックスプレイヤーだ。衝撃的な音楽との出会いから、理想の音色を追い求めていく中で影響を受けたプレイヤーについて、また、現在の活動とそれを支える愛器について話を聞いた。オンラインでは一部抜粋してお届けする。

少年時代に出会った理想の音色

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お二人はビッグバンドなどで共演されていますが、同じ大学のご出身だそうですね。
日野林
二人とも、中央大学「スウィングクリスタルオーケストラ」というビックバンドサークルの出身なんですが、入れ違いなんですよね。僕がちょうど大学を卒業してすぐくらいに齊藤が入ってきて。当時僕はよく大学のサークル棟に練習しに行っていて、後輩の邪魔にならないように隅の方でこっそり吹いていたら、齊藤が「教えてくれませんか?」と声をかけてきたんです。
斎藤
現役もOBも一緒になって大勢練習しているんですけど、隅の方でやたら速いフレーズをカッコ良く吹いてる人がいて「なんだこの人は!?」と。それが日野林さんでした。僕は楽器を始めたのが遅かったので、まだどんな練習をすればそんなに吹けるようになるのかもわからないころです。日野林さんの音はたくさんの中でも際立っていましたから、思い切って「何でもいいから教えてください」と声をかけました(笑)。
――
そして今でも音楽仲間として関係が続いているのですね。お二人の音楽、サックスとの出会いはどんなものでしたか?
日野林
僕は小学生くらいから音楽を聴くことがすごく好きでした。姉がクラシックのピアノを習っていたので最初はクラシックを聴いていて、その後たまたまテレビでポール・モーリア楽団などのムードミュージックをいくつも聞いて、同じ曲なのに楽団ごとにアレンジが違うということに興味を持ちました。中学に入ったらすぐ音楽を始めたかったんですが吹奏楽部がなくて。その間音楽を聴き続けていたので、耳年増みたいになっていました。トランペットだとメイナード・ファーガソンがすごく流行っていたし、たまたま聞いた「ザ・プレイヤーズ」という日本のバンドで山口真文さんのソプラノサックスがすごくいい音だなぁと思ったり。トロンボーンなら向井滋春さん、父親がテレビで見ていたベニー・グッドマンのクラリネットもいいなぁと。とりあえず何か管楽器をやりたいと思いました。
高校の吹奏楽部でサックスになって、当時はザ・スクエアがデビューしたばかりで、やっぱり伊東たけしさんの音にはシビれましたね。日本のフュージョンはとても勢いがあったので、熱心に聞いてすごく影響を受けました。デュコフのマウスピースを吹奏楽で使って、リードミスばかりして先生に叱られたり(笑)。
斎藤
とりあえず形から入るというね(笑)。僕は親戚のピアノ教室で習い始めたのがきっかけで、いろんな音楽を聴くようになりました。中でも当時、サントリーホワイトのテレビCMで伊東たけしさんがリリコンという電子サックスを吹かれていたのを見てかっこいいなぁと。流行りの音楽に詳しい友達にザ・スクエアのカセットテープを貸してもらって聞いたら、サックスも吹いている。それでサックスっていいなと思うようになりました。何かレコードを買おうと、当時知っていた『サマータイム』か『朝日のようにさわやかに』が入っているものを探して、見つけたのがチャーリー・パーカーの「ウィズ・ストリングス」とソニー・ロリンズの「ヴィレッジヴァンガードの夜」。そのレコードを延々聞いて、ジャズに傾倒していったんです。たまたまでしたが、名盤中の名盤と呼ばれるものを手に取ったというのがラッキーだったと思います。そこでもし違うものに出会ってたら、こんなに好きにならなかったかもしれない。

聞けば聞くほど深くはまっていくジャズの世界

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実際に楽器も吹いていたのですか?
斎藤
そうですね。メーカー名も忘れてしまいましたが、60,000円くらいで買ったサックスを持っていて、なんとなく家で吹いていました。高校に入ったら吹奏楽部もありましたが、ちょっと音の方向性が違うなと思って入部せずに、やはり家で一人で吹いていました(笑)。
――
現在は主にどんな演奏活動を?
斎藤
自分のバンドでライブをやったり、ビッグバンドに呼んでもらったり。パーティやテーマパークでの演奏、アイドルグループのサポートもしましたし、指導もしています。ひとつには絞れないくらい、仕事としてはいろいろとやらせてもらっていますが、ライブのフィールドは?と聞かれればやっぱりジャズになります。サックスを始めたときにパーカーやロリンズの強烈な演奏に出会ってから、やりたいことはずっとジャズなので。この二人の演奏は未だに聞いていて新しいというか、聞けば聞くほど深く底のない世界で、勉強すれば勉強するほどはまっていくんですよね。
――
日野林さんも様々な音楽シーンで演奏されていますね。
日野林
はい。僕は大学卒業後サラリーマンをしながら音楽を続けていて、ある時サークルの後輩に偶然再会した縁で、プロをたくさん輩出している社会人バンドに入り、そこで音楽一本でやっていく決心をしました。ビッグバンド、サポート、テーマパーク、いろんな現場で仕事をさせてもらっていますが、メインは2011年に立ち上げた「NF4」というリーダーバンドの活動で、去年は全国各地、35本くらいライブをやらせてもらいました。5月30日に3枚目のアルバム「Third Party」を発売しますが、レコーディングした後にやむを得ない家庭の事情でドラマーが交代することになり、新しい体制でレコ発ライブをやることになっています。
――
「NF4」ではどんな音楽を演奏されるのですか?
日野林
アコースティック・フュージョンですね。僕はフュージョンから音楽の世界に入りましたが、齊藤と同じでだんだんジャズに傾倒してきたんですね。最初のころですが、ポップなフュージョンって、ペンタトニックだけで何となく格好がついちゃうと思っちゃうようなところがあって、でも、ジャズはそれだけだとどうも格好がつかない。なぜだろう?と勉強して少しずつわかると楽しくなって、気がついたらハマってるんですよね。

楽器選びは「吹いていて楽しく感じるか」を基準に

――
お二人共に、現在Wood Stoneのニューヴィンテージをお使いですね。選んだ理由を教えてください。
日野林
僕はアンティークフィニッシュ、いわゆるラッカーがされていないもので、管体が重いヘビータイプというものを1年半ほど前に手に入れてから、ジャズを演奏する現場ではほぼこの楽器を使っています。
僕にとっていい楽器とはメーカーがどうのではなくて、個体との出会い、相性が一番大切だと思ってるんです。ちょっと抽象的な言い方ですが、試奏した時に吹いていて楽しいか楽しくないかが大きなポイントです。楽しいとはどういう状況かと言うと、ストレスがない状態ですね。ピッチも自分がイメージした通りに取れること。音色に関しては、初めての楽器を吹くにあたって自分が想像したイメージを超えてきた音がすると、お?と期待値が高まります。試奏中でも無意識にずっと吹いていられるものが良い楽器だと思うんですが、そういう部分でこの楽器は、非常に楽しかったんです。
この楽器を手にした人の多くが「即戦力」だとおっしゃるんですが、僕はもう、買ったその日にライブで使いましたからね。楽器やマウスピースなどいろんなパーツ全部そうですが、買う時に100%惚れ込んで買ってもその後少しコントロールがしづらい部分に気づいたりして、だんだん歩み寄って行かなきゃいけない部分もあるんですが、この楽器は早かった。2~3ヶ月で仲良くなれましたが、不思議とまだ成長している感じもするんですよね。
――
サブで使っているアルトもWood Stoneですね。
日野林
はい。仕上げはゴールドラッカーです。まだ手に入れて数ヶ月ですが、気に入ったアルトに出会ったのはもう20年ぶりぐらいですかね。マーク6以来です。僕はテナーがメインですから、アルトは持ち替えた時すぐにパリッと反応してくれるところが良いと思いました。
――
齊藤さんのメイン楽器はアルトですね。
斎藤
はい。アンティークフィニッシュの、F#キィがないものです。F#キィがある楽器よりも、少し音色が柔らかい感じがしました。
使い始めて、2年くらいになります。石森さんから「アルトができたから吹いてみてよ」と言われて試奏したとき、日野林さんと清水洋之助くんというサックス吹きと一緒だったんですが、二人がすごくいい音だと言ってくれまして。じゃあ買おうと(笑)。もちろん吹いていてすごく楽だったし、イントネーションも付けやすいし、素直に良い楽器だなぁと感じました。アンティークフィニッシュ以外も吹いてみましたが、音色、音の密度、吹奏感など、僕としてはこれが一番好みで。でも、ヴィンテージラッカーのテナーを気に入って買いましたし、ちょっとアルトももう一度試してみようかなぁ……なんて思っているところです。
日野林
僕もこのアンティークフィニッシュのアルトを吹いたことがあるんですが、すごくアルト吹きのための楽器という印象でした。アルトメインの人がガンガン使って吹きこなす楽器という感じですね。僕の持っているゴールドラッカーは、テナーから持ち替えた時にパリッと反応が良いところが気に入りました。メインとサブでは、選ぶ基準が変わりますね。メインの楽器は毎日のように吹くので、ちょっとした音色の深みとか、そういうものを重視して選びます。
斎藤
まさに。メインとサブで基準が変わりますね。僕はテナーを使うことがはあまりないんですが、このヴィンテージラッカーのテナーは良い意味で軽く音が出せるというか、すっと息が入ってくれるんです。吹奏感がいい。楽器の中にはあえて吹奏感を重くしているものもあって、それが持ち味だったりするんですが、経験が少ない人には難しい部分もあります。Wood Stoneの楽器に関しては、初めて間もない人にも無理なく鳴らせると思います。また、昔は音程を取るのが難しい楽器も多かったですが、この楽器の音程は素晴らしいので、変な吹き方をして悪い癖がつくようなこともないんじゃないでしょうか。
――
最後に、楽器選びのアドバイスをお願いします。
日野林
大事なのは、必ず石森管楽器さんのような信頼できるお店に行って試奏することですね。吹いた感じを確かめることはとても大切で、その楽器に、吹きやすいという感覚が持てるか。楽器って、今時の技術をもってしても一本一本個体差があって、音程が良かったり悪かったりすることもあります。同じ機種を3~4本吹かせてもらって、音色が全部の音域で均一かどうか、吹いていて楽しめるかということを確かめたら、できれば自分より吹ける人にチェックしてもらうといいですね。もしかすると、楽器屋さんで試奏したらもう買わなくちゃいけないと思って躊躇してしまう人もいるかもしれませんが、石森さんはもちろんたいていの楽器屋さんは快く試奏させてくれるものです。恐れずにたくさん試してみるうちに、自分が吹いていて楽しいと思える楽器に出会えると思います。
――
ありがとうございました。

全文はTHE SAXvol.95にてお楽しみください!

 


日野林晋

日野林 晋
高校時代よりサックスを開始。大学時代はビッグバンドサークルへ所属。卒業後テナーサックスへ転向し様々なコンボ、ビッグバンドなどへ参加。並行してアレンジャーとしてもJazz Vocalist・水上まり、足立直子、出口雅之氏のJazzアルバムなどにもアレンジを提供。NF4の他にも数多くのセッションへの参加。SAX講師、テーマパーク、パーティー演奏、レコーディングなどでも活動中。

使用楽器〈Tenor〉Wood Stone Tenor Saxophone New Vintage AF(アンティークフィニッシュ)、マウスピース:Wood Stone PHLOX F9、リガチャー:シルバースタイン(クライオ処理)、リード:Wood Stone 21/2 、〈Alto〉Wood Stone Alto Saxophone New Vintage GL、マウスピース:Wood Stone STUDIO DELUXE 6番、リガチャー:Wood Stone、リード:Wood Stone 3

 

CD Information

Third Party,NF4
Third Party,NF4

「Third Party」NF4
[BQR-2075]¥2,315 BQ Records

[演奏]日野林晋(Ts,Ss)、小畑智史(Pf,Ep,Org,Syn)、石井圭(El & Ac Bass)、西村悟志(Dr,Perc)、Guest Musician 白山貴史(Guit)、髙橋香織/岩戸有紀子(Vn)、成瀬かおり(Va)、津森奈保子(Vc)、中野渡章子(Vo)
[収録曲]Third Party、Fly、Levitation、Parade、Night Music、Thread A Maze、季節のかけら、Beats、May

 

live Information

NF4 3rd CD Third Party 発売記念ライブ
5/30(木)六本木バードランド
http://www.bird-land.co.jp/
Music Charge:3,500円(予約) 4,000円(当日) +2order
出演:日野林晋(Sax)、小畑智史(Pf)、石井圭(Bass)、黒田慎一郎(Drums)
Guest 中野渡章子(Vocal)、白山貴史(Guitar)


齊藤達彌

齊藤達彌
1970年生まれ。中学の時にチャーリー・パーカーの『サマータイム』に感銘を受けジャズに興味を持つ。中央大学でスウィングクリスタルオーケストラのコンサートマスターを務める。大学在学中にテーマパークでの演奏でプロの音楽活動を開始する。都内近郊で自己のグループやビッグバンド等でライブ活動中。レコーディングや、講師としても活動。サックスの他にもディキシーバンドでクラリネットを担当し全国の小中学校で演奏。

使用楽器〈Alto〉Wood Stone Alto Saxophone New Vintage AF(アンティークフィニッシュ)/WOF、マウスピース:MEYER 5MS、リガチャー:Rovner、リード:RICO(D’Addario)3、〈Tenor〉Wood Stone Tenor Saxophone New Vintage VL(ヴィンテージラッカー)/WOF、マウスピース:Okutsu Saxophone Mouthpieces Traditional II 7
リガチャー:Wood Stone Copper、リード: Vandoren JAVA(赤箱)3

 
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