サックス記事 齊藤健太×馬場智章 Special Saxophone Night
ヤマハホール・コンサート・シリーズ 珠玉のリサイタル&室内楽

齊藤健太×馬場智章 Special Saxophone Night

第7回アドルフ・サックス国際コンクールで優勝を果たした齊藤健太さんと、世界を舞台に多方面で活躍する馬場智章さん。サクソフォン界注目の若手プレイヤーであるこの二人が、ヤマハホール・コンサートシリーズで初共演を果たす。クラシックとジャズ、それぞれのジャンルで躍進する二人がどんなタッグを組むのか、注目の的となっているリサイタルの内容を語ってもらった。
(インタビュー・文:鬼木玲子/写真:橋本タカキ/取材協力:ヤマハホール)

 

お互いの情報共有は、新発見の連続

お二人の共演は、初めてだそうですね。
馬場
はい。初めて対面したのが、今年の4月かな? 僕らは二人とも、楽器のメンテナンスをヤマハアトリエ東京の中澤さんに担当していただいているという共通点がありました。実は、年齢も同じです。僕が調整に訪れた時、中澤さんと同世代のサックスプレイヤーの話になって、クラシックプレイヤーがどんな練習をしているのか興味が湧きました。「詳しい話が聞きたいので、今度会わせてください」と、お願いしたのがきっかけです。
齊藤
お互いにクラシックとジャズをやっていて、奏法の違いや音楽の作り方の違いなど、情報共有したいねというところから始まりました。ジャズプレイヤーがどんな基礎練習をしているのか全く知らなかったので、僕もいろいろ訊いてみました。コードを決めて、そこに音を当てていくトレーニングをやっていると教えてもらい、すごいなと思いました。
馬場
僕も、クラシックプレイヤーが変わった練習をしているらしいと聞いていたので、「本当にそんなことしているの?」と訊きました。例えば、ビブラートの回数をしっかり決めて、メトロノームに合わせて練習するとか。齊藤くんは、その場でやって見せてくれました。
齊藤
やりました(笑)。
馬場
同じ楽器だけれど、まったく別物ですね。トランペットなどの金管楽器よりも、サックスのほうがジャンルの違いが出るんじゃないかと思います。出音も違うし、ゴールとされている音も違う。僕はレコーティングの仕事の際、クラシック系のスタジオミュージシャンの方とご一緒する機会もあるのですが、ほとんどが金管楽器や弦楽器のプレイヤーでした。同じサックスを吹くクラシックプレイヤーと現場で遭遇することがなかったので、新発見の連続です。
齊藤
僕は東京藝術大学の別科に通っていたころ、大学で毎年恒例になっていたジャズのコンサート「ジャズin藝大」などにも触れていました。でも、いわゆるゴリゴリにジャズをやっている人と共演するのは、今回がおそらく初めての経験です。ジャズは大好きだし、今回は馬場くんのオリジナル曲を一緒に演奏するので、どんな作品が出来上がってくるのか楽しみにしているところです。
 

従来の「クラシックとジャズの融合」と一線を画す

今回のリサイタルのために、馬場さんが曲を書き下ろすのですね。
馬場
今回の企画にあたって、クラシックとジャズの二人が集まって何をするのが一番いいか考えた時、僕は単純に曲を書きたいなと思いました。お互いの良さが出る楽曲を、しっかり作ろうと考えています。これまでも、「クラシックとジャズの融合」という企画は、世の中にたくさんありましたよね。そういう時に演奏する曲は、どちらのジャンルのプレイヤーも演奏できる中間地点のようなものになることが多かったように感じます。もちろん、お客さまの要望や企画の意図によって選曲されてきたのだと思いますが、果たして僕らが今回やるものはそれに該当するのだろうかと。いま、僕らは尖りに尖った若手であり、これからの自分たちのキャリアとして何をやっていくかを考えている時期にあります。そんな僕らが、お互いの中立を探るような音楽をお客さまに届けるのは、メリットがないと考えました。だから、新しい作品を世の中に出して、こんな音楽もあるんだということを伝えたい。今後の音楽シーンに対しても、これが面白い働きかけになるのでないかと思っています。
齊藤
馬場くんは、しっかりした世界観を持っていると思います。先日、彼のライブを聴きに行ったのですが、作るサウンドも素晴らしい。ですから、今回は完全にお任せして、馬場くんが思ったとおりに書いてもらいたいです。それに対して、僕自身がどう味付けしていくかが、今回の楽しみになると思っています。
馬場
二人で一緒に演奏する部分は、すべて新曲を書き下ろす予定です。特に、クラシック奏者とのデュオは初めての試みなので、楽しみですね。サックス2本で演奏することは、ジャズの現場でもほとんどありませんが、僕は個人的に好きです。新しいアルバム「Gathering」でもやりました。その時は、かなりファンキーな内容でエキセントリックに(笑)。今回はどこまでやっていくか、そのバランス感覚が挑戦だと思っています。
齊藤
サックスのデュオは、クラシックでもなかなかありませんね。アンサンブルは、人数が増えれば増えるほど会話が成立しにくいので、二人でやるというメリットは大いにあると思います。さらに、ジャズプレイヤーの馬場くんとのデュオですから、まったく違う言語が出てくるだろうし、それに対して自分はどう返答していくのか、ステージに立ってどういう会話が飛び出すか、そのやり取りに期待してください。
 

次ページにインタビュー続く
・クラシックとジャズ それぞれの視点で現代音楽を
・二人が見据える日本サックス界の未来

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Concert Information

齊藤健太×馬場智章 Special Saxophone Night
 
[日程]2023年1月29日(日)開場17:30 開演18:00
[会場]ヤマハホール(東京・銀座)
[出演]齊藤健太/馬場智章(サクソフォン)、AKIマツモト/壺阪健登(ピアノ)、小川晋平(ベース)、小田桐和寛(ドラム)
[曲目]J.S.バッハ:フルートと通奏低音のためのソナタ BWV1035、棚田文紀:ミステリアス・モーニングⅢ、ほか
[料金]全席指定 一般 4,500円 学生 3,500円
[申込み]チケットぴあでのご予約・お申込
・WEBからのお申し込み※座席選択可能
・Pコード:227-018
※政府のイベント人数制限方針により販売席数が変動する可能性がございます。予めご了承ください。
※本公演は2022年12月3日(土)からの振替公演です。
 12月3日(土)公演のチケットをお持ちのお客さまは、そのままのチケットにて2023年1月29日(日)の公演にご入場いただけます。

[注意事項]
※都合により出演者、曲目が変更になる場合がございます。予めご了承ください。
※未就学児のご入場はご遠慮いただいております。
※チケット料金には消費税が含まれております。
[主催]ヤマハ株式会社ヤマハホール
[問合せ]ヤマハ銀座店 TEL.03-3572-3171(ヤマハ銀座店インフォメーション)11:00〜18:30火曜日定休
 

Profile

齊藤健太 (サクソフォン)
1992年東京都足立区生まれ。洗足学園音楽大学を、優秀賞を受けて卒業。東京藝術大学別科修了。サクソフォンを金井宏光、二宮和弘、須川展也、池上政人、林田祐和、室内楽を池上政人、有村純親、ジャズサクソフォンを佐藤達哉、MALTAの各氏に師事。
第31回および第34回日本管打楽器コンクールサクソフォン部門で第3位に入賞。第27回大仙市大曲新人音楽祭コンクール管楽器部門では最優秀賞、並びに審査員推薦を受ける。第9回国際サクソフォンコンクールノヴァゴリツァ(スロベニア)で第2位。
2019年にはベルギーで開催された、サクソフォン界で最も権威のあるコンクール「アドルフ・サックス国際コンクール」において、日本人として17年ぶりとなる第1位を獲得。および新曲賞受賞。この優勝を記念した凱旋コンサートを今年1月に文京シビックホールにて開催した。2020年6月にはCAFUAレコードより「凱旋」をリリース。
現在は洗足学園音楽大学の非常勤講師として後進の指導にあたるほか、Saxophone Quintet “Five by Five”のメンバーであり、ブリッツフィルハーモニックウインズのコンサートマスターを務めている。

[使用楽器]
アルト:ヤマハ YAS-875EXG/マウスピース:セルマー S90 180/リード:バンドーレン トラディショナル(青箱)3½
ソプラノ:ヤマハ YSS-875EX/マウスピース:セルマー コンセプト/リード:バンドーレン トラディショナル(青箱)3½

 

馬場智章 (サクソフォン)
2005年、タイガー大越氏により開催されたバークリー音楽院タイアップの「北海道グルーブキャンプ」を受講し優秀賞受賞、2010年、Terri Lyne Carrington(Ds)が指揮する「Berklee Summer Jazz Workshop」のメンバーに選抜され奨学生として参加。
2011年、バークリー音楽院に全額奨学生として入学以来、Terri Lyne Carrington、Terrence Blanchard(Tp)、Jamie Callum(Vo,Pf)などのグラミーアーティストと共演。
2016年から4年間「報道ステーション」のテーマ曲を自身も所属するバンド“J-Squad”で手掛け、ユニバーサル ミュージックよりアルバム「J-Squad」「J-Squad Ⅱ」をリリースしブルーノート東京のステージやフジロックフェスティバル‘17などにも出演。ファッションブランド“TAKEO KIKUCHI”ともコラボレーションを行なう。
2020年に自身初のリーダーアルバム「Story Teller」をリリース。2022年4月、2ndアルバム「Gathering」をリリース。

[使用楽器]
テナー:ヤマハ YTS-82Z/マウスピース:SYOS 馬場智章モデル/リード:ダダリオウッドウインズ セレクトジャズ 4M(ミディアム)

 
登場するアーティスト
画像

馬場智章
Tomoaki Baba

1992年生まれ。札幌ジュニアジャズスクールにてサックスを始め、2005年、タイガー大越氏により開催されたBerklee College of Musicタイアップの「北海道グルーブキャンプ」で優秀賞受賞、2010年、テリ・リン・キャリントン(Ds)が指揮するBerklee Summer Jazz Workshopのメンバーに選抜、奨学生として参加。2011年、バークリー音楽大学に全額奨学生として入学以来、テリ・リン・キャリントン、テレンス・ブランチャード(Tp)、ジェイミー・カラム(Vo,Pf)等のグラミー・アーティストと共演。2016年から4年間 「報道ステーション」のテーマ曲を所属するバンド「J-Squad」で手掛け、UNIVERSAL MUSIC JAPANよりアルバム「J-Squad」、「J-Squad Ⅱ」を リリースし「Blue Note Tokyo」、「Fiji Rock Festival 17」にも出演。2020 年 に自身初のリーダーアルバム「Story Teller」、 2022年4月に2ndアルバム「Gathering」を発表。

登場するアーティスト
画像

齊藤健太
Kenta Saito

東京都出身。2015年、洗足学園音楽大学卒業、同時に優秀賞を受賞。2017年、東京藝術大学別科修了。第31回及び第34回日本管打楽器コンクールサクソフォーン部門第3位。第27回大仙市大曲新人音楽祭コンクール管楽器部門最優秀賞、並びに審査員推薦を受ける。
9th International Saxophone Competition Nova Gorica 第2位。2019年、第7回アドルフ・サックス国際コンクール第1位。洗足学園ニューフィルハーモニック管弦楽団とH.トマジのサクソフォーン協奏曲で共演(秋山和慶指揮)。これまでにサクソフォーンを金井宏光、二宮和弘、須川展也、池上政人、林田祐和の各氏に、室内楽を池上政人、有村純親の各氏に、ジャズサクソフォーンを佐藤達哉、MALTAの各氏に師事。Saxophone Quintet “Five by Five”では「KENTA」として活動。ブリッツフィルハーモニックウインズ、コンサートマスター。

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