当代随一のスター・サックスプレイヤーが新作を携えて4年ぶりに来日!
プロ、アマチュア問わず、日本のサックスプレイヤーからもフェイバリットとして名前を挙げられることが多いカーク・ウェイラム。ジャズ、フュージョン、スムースジャズ、R&B、ゴスペルなど、様々なジャンルを消化した懐の深い音楽性と飛び抜けた演奏技術、そして高いエンターテインメント性も兼ね備えた真のスタープレイヤーと呼べる存在だ。そんな彼がコロナ禍を経て4年ぶりに、それも新作を携えて来日を果たした。
インタビュー・文:櫻井隆章
取材協力:株式会社ブルーノート・ジャパン/株式会社キングインターナショナル
Top Photo & Live Photo by Makoto Ebi
ホイットニー・ヒューストンのTVライブ中に折れたネック


ネックに取り付けられた支柱
マウスピースはJody Jazz Hand-Hammered HH Tenor 8☆
リードはThe Boston Sax Shopの4ソプラノはあらゆるところから音が鳴るからスタンドマイクで吹く

本当に音楽が判っているな、というね。だから、逆に言うと東京のお客さんたちは世界でも一番怖い批評家たちかもしれないね(笑)。これは、僕に限らずアメリカのジャズ・ミュージシャンは誰もが言っていることだ。あ、それと、もう一つ付け加えたい。日本のお客さんたちは、我々アーティスト側に対しての敬意が半端ないと思う。実に僕らに対して手厚い尊敬心を示してくれるんだよ。そんなことがあるから、いつでもまた日本に戻ってきたくなるんだな。あ、まだあった。これはもしかしたらサックス奏者に限っての話かもしれないが、日本の楽器屋さんのリペア技術は間違いなく世界最高だ! どんなトラブルが起きても、すぐに対処してくれて、楽器を最高の状態に戻してくれるんだよ。ホント、アメリカに連れて帰りたいくらいだ!
KIRK WHALUMカーク・ウェイラム
6/26(水)ブルーノート東京(東京)
[演奏]カーク・ウェイラム(Ts,Ss,Vo)、ジョン・ストッダート(Key,Vo)、アンドレア・リサ(Guit,Vo)、ブレイロン・レイシー(Bass,Vo)、マーカス・フィニー(Ds,Vo)
[曲目]BIG OL’SHOES 〜 MR. MAGIC、DO YOU FEEL ME 〜 FUNKY GOOD TIME、BAH-DE-YAH!、INTO MY SOUL、VORTEX、KW 2024 BALLED MEDLEY : ANY LOVE 〜 NOW TILL FOREVER 〜 PILLOW TALK、WELL ALRIGHT 〜 WADE IN THE WATER、MF

超満員のお客さんを前に、まずはバック陣が登場。イントロが始まったところで主役が出て来て、いきなりの大ブロウだ。そして妙に綺麗な、そして正しいイントネーションで「元気ですか!」。この発音が実に綺麗な日本語なのである。今の表記も、片仮名で書くよりは漢字交じりで書きたくなるのだ。余程、耳が良いのだろう。ステージは、新譜「Epic Cool」からのナンバーも交え、実にバラエティに富んだ内容で、特に受けたのが『幸せなら手をたたこう』である。お客さんも充分に反応したのだが、二番に入った際にカークがお客さんたちに「違う、違う!」と、「二番は足を鳴らそう、だろ!」 と促す。これにはお客さんも大爆笑。途中、ギター&ヴォーカルのアンドレア・リサのナンバーが一曲挟まれた。彼女がリリースしたアルバムからの曲なのだが、これが実に聴き物だった。実にユニークで、聴いたことがないフレーズやら何やらが飛び出し、これはカークが見込んでバンドに引き入れたのも納得であった。今後も注目な存在だ。そしてカーク。もう貫禄のステージぶりで、自らの持つ力量を充分に見せながら、曲間のトークで笑わせてくれる。平易な英語を使うから、決して英語に堪能ではないお客さんにも通じるのだ。この辺りにも、日本公演の回数が多くなったからこその気遣いを感じるところである。終演後のお客さんたちの、満足気な笑顔も印象的であった。(櫻井隆章)
カーク・ウェイラム
Kirk Whalum
1958年、テネシー州メンフィス生まれ。父親が牧師で、幼い頃からゴスペルやR&B に親しむ。9歳でドラムを、高校に入るとサックスを演奏し始める。ヒューストンの南テキサス大学に入学、在学中テキサス・テナーのアーネット・コブに魅了され薫陶を受ける。1983年にボブ・ジェームスのグループに入り、プロとしての本格的なキャリアをスタート。1985年にジェームスのサポートによりタッパン・ジー・レコーズから「Floppy Disk」でソロ・デビュー。1980年代後半から1990年代前半にはクインシー・ジョーンズ、ルーサー・ヴァンドロス、アル・ジャロウ、ホイットニー・ヒューストンらと共演。数多くのアーティストとの交流を深め、ホイットニー・ヒューストンのメガ・ヒット『アイ・ウィル・オールウェイズ・ラヴ・ユー』でのサックス・ソロは彼が担当している。2000年代以降はスムース・ジャズ・ブーム旗頭的存在としても活躍。デイヴ・コーズが主宰するランデヴーからスマッシュ・ヒットを放った。2012年にジョン・コルトレーンとジョニー・ハートマンに捧げたカバー・アルバム「ロマンス・ランゲージ」を、2015年に「The Gospel Accordingto Jazz」第4弾をリリース。来日回数も数多い。












