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エリック・ミヤシロ 待望のニューモデルYTR-8330EM が完成!!

THE TRUMPET vol.9 | インタビュー

世界中にその名を轟かせるスーパートランペッターであるエリック・ミヤシロ。そんな国際的な人気奏者が監修したシグネチャーモデルのトランペットが、17年ぶりのモデルチェンジを果たした。EMモデルの名称でもお馴染みのYTR-8340EMが、YTR-8330EMとして大きな変化を遂げたのだ。開発の目的や完成までの試行錯誤の様子についてなど、早速エリック・ミヤシロ本人に質問をぶつけてみた。
(インタビュー・文:埜田九三朗/写真:橋本タカキ/取材協力:ヤマハ株式会社、株式会社ヤマハミュージックジャパン)

何かを変えれば別の何かに影響が出る……そこが管楽器開発の難しさ

さまざまなリニューアルが施された今回のYTR-8330EMですが、そういった試行錯誤のアイデアの源泉は?
E
自分で思いついたこともあるしヤマハアトリエ東京の技術者の青柳さんからもいろんなアイデアが出てきて、そういうやりとりを17年間、ほとんど毎月のように繰り返してきたんです。
Bobby ShewモデルとEMモデルに採用されている「ステップボア」と言うのはどのようなものなのでしょうか?
E
これは他のメーカでも採用されている設計手法で、M、ML、Lなどのボアサイズを組み合わせて楽器全体のバランスをとる設計です。旧EMモデルではピストンのポート、穴自体はMで、そこから分かれる抜差はLでした。ピストンを押すと管を曲げた部分が増えるので抵抗が増えるわけですので抜差のボアを太くして、抵抗感や音色感のバランスを整えたのがYTR-8340EMでした。今回のリニューアルで楽器全体の色々な改良が行なわれたので抜差をMLに変更することによって、さらに効率が良くなりました。
ボアサイズの違いによる変化は、内径が太くなるから、というより管厚が薄くなるからだ……という説がありますが?
E
両方だと思います。特にLボアになると内管径が広くなるのと薄くなるのと両方の相乗効果で変化を大きく感じるのだと思います。径の変化、といってもその違いは髪の毛一本くらい……内部に汚れがたまっただけで、簡単にMLボアもMボアみたいになっちゃうくらい、デリケートな変化なんです。内管が太くなったり細くなったりすると、それだけで管内の音波の跳ね返り、吹き込んだ時の抵抗感が変わります。ボアが太くなると菅体の肉厚が薄くなり、重量が軽くなったことで楽器本体の共振が増え、吹きやすくなると感じる人もいると思いますが決して太くなったから息がもっと入るようになった、ということではないんです。管楽器は流体理学で考えてはいけなく、音響学で考えないとダメなんです。
すべてはバランスしているから、一か所の変化だけにこだわっていると本質を見失う……ということですね
E
何かを変えれば必ず別の何かに影響が出るんです。そこを見極めてバランスをとるのが管楽器開発の難しさですね。最初のEMモデルも製品化までに3年かかったんです。今回のYTR-8330EMも、製品化が決まってから2年くらいかかりました。

楽器で自分の音色は変えられない……という事実に気づくべき

どんな順番で改良していったんですか?
E
そもそものベースが以前から師匠のBobby Shewから勧められていたYTR-6310Zだったので、その良い部分を残しつつ自分が扱いやすいように変えていきました。抵抗をなくすという方向で、まずはマウスパイプをどんどん広くしていったんです。ところが「5分間のヒーロー」になってしまって、すぐバテてしまうような楽器になってしまってこりゃだめだ! ということで見直し。僕の考える改造って「やりすぎた!」というところまで持っていって、そこから引き算をしていくというやり方です。足し算より引き算のほうが、ちょうどいいところに落ち着くものです。物理的に言うと、最初は超でっかい楽器ができて、そこから小さくしていったということです。
5分間のヒーロー! 心に突き刺さるキャッチフレーズですがその意味は?
E
アメリカではよくそう言うんですが、楽器やマウスピースを変えると勿論ですが今までとは違う感じを受けますよね? 新しい感覚が上手くいっていると勘違いしてしまう時がありますが、人間の体って不思議なもので、しばらく使っていると無意識的に体は馴染みの深い元の覚えている感覚に戻る本能があります。なので結局は元の音、感覚に戻ってしまい「ああ、5分間だけのヒーローだったね……」または”ハネムーン期間は終わったね”という言葉が生まれたんです。
そこからマッピ沼、楽器沼、みたいなものにはまってしまって自分を見失うマニアのいかに多いことか……。
E
そういう「沼」に陥らないようにするには、楽器で自分の本来の音色はさほど変えられない……という事実に気づくべきだと僕は思います。これは、ヤマハとの付き合いのなかで考えられることを全部試し、物理的なことをやりつくした結論です。音色を変えようと思って楽器自体を変えたりマウスピースをいじったりしても、結局は自分の持ち前の“声”は大きく変えられないので使う人自身の中で聞こえている、求めている“声”が変わらなければ変化は一時的なものにすぎません。様々なメーカー特有の音がある、というのは幻想なんじゃないかとも思います。あるいは、「クラシックはあのブランドじゃないと」とか「銀メッキじゃないと」とか「ジャズはあのモデルじゃないと」というのも、僕は信じていません。その人それぞれの声があり、その人の声になる、それだけなんです。マイクもそうです、どんなに高いマイクでも下手な人が上手くなるわけじゃない。楽器というのはあくまで道具であり、それ以上ではないんです。楽器で音色をなんとかしようとしても空回りするだけ。ヤマハと一緒にいろいろ苦労していたある日それに気づいて、じゃあ自分の頭のなかに浮かんでいる音に近づきやすいような、操作性の高いものにしよう……と思って、自分のイメージをもっと明確にする方向にシフトしてみたんです。
その結果生まれたのが今回の新しいEMであると?
E
確かに楽器を「明るめ」「暗め」と大きい枠で分けたらこの楽器は「明るめ」と感じる人は多いかもしれません。でもさっきもいったように楽器固有の音というのはないと思います。暗めの楽器を明るくなるように操作するのはとても難しいですが、明るめの楽器を暖かめの音色で演奏するほうが楽だと思います。この楽器の改良で僕が一番気を付けたのは反応の良さと、このような自分が思い浮かべる音色へのコントロールのしやすさです。

 

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