トランペット 記事
トランペットの可能性を拡げる2ndアルバム制作秘話

トランペットアンサンブルのアルティザン「Bach Artists Japan 匠」インタビュー

トランペットアンサンブルの魅力を発信する新アルバム

次回作のアルバムは、すでにレコーディングが終わっていると伺いました。
佐藤
はい、昨年の12月にレコーディングしました。しかし、まだリリースの予定が見通せておらず、おそらく来年になってしまいそうな状況です。発売する際はコンサートとタイミングを合わせたいのですが、ホールの都合もついておらず、実は今回のインタビューで今年初めてこの5人がそろったという状況なので、なかなか意見交換や練習が進んでいないというのが現状です。
どのような曲を収録されたのですか。
長谷川
1stアルバムでもお世話になったトランペット奏者でもある作曲家、E. モラレスの『X1』と『パス・オブ・ディスカバリー』、J. ノーレの『カクテル』A. プログの『コントラスト』、F.スペックの『ルーメン』、トリオではP. M. デュボワの『5つのバガテル』とB. ブリテンの『セント・エドモンズベリーのためのファンファーレ』、他にカルテットも数曲収録しています。
前回のアルバムではさまざまな時代の楽曲を収録されましたが、今回の収録曲はどのように選曲されたのでしょうか。
長谷川
選曲の際は全員で決めるのですが、楽譜が入手できれば音出しをしますし、入手できなければ音源を聴きながら決めていきます。
佐藤
今回は特にテーマを決めているわけではないのですが、共通しているのはトランペットの魅力を音で伝えられる力のある作品であり、聴いていても吹いていてもおもしろいということです。
今まであまりアルバムで音源化されていない楽曲も多いので、そこも聴きどころだと思います。
前回のアルバムもそうでしたが、パーカッションなど他の楽器は入れず、すべての曲をトランペットアンサンブルのみで演奏されていますね。
佐藤
それは私たちのポリシー、こだわりのひとつですね。結成した時からこの5人だけで、トランペット5本だけで何かを表現したいという思いが強いです。トランペット五重奏というジャンルのレパートリーは決して豊富とは言えないのですが、その中でも今回収録した曲のようにあまり知られていない魅力ある作品はまだまだあるので、ぜひ知っていただくひとつの機会になればいいと思います。
収録時の印象的なエピソードがあればお聞かせください。
井上
今回の収録は前回と同様にホールで行なったのですが、『セント・エドモンズベリーのためのファンファーレ』を収録する際に、音響効果を狙って演奏者がそれぞれ客席の離れた場所に散って演奏することにしました。楽譜上で3か所に分かれて演奏する指示はあるのですが、お互いが見えないような位置で、指揮もなしで演奏するというのはなかなか刺激的な体験でした。お互いを信じて吹いたら何とか縦を合わせることができ、いい経験になりました。
安藤
Bachの黒いストレートミュート(1860)を『コントラスト』で使用したことですね。急遽使用することになったので、野中貿易のご担当より会場に直接送っていただきました。柔らかくていい音がするミュートでしたね。
 

Bachにしか出せないサウンド

「Bach Artists Japan 匠」は全員Bachの楽器を使用されていますが、使用楽器が同じBachであることの強みはどこにあると思われますか。
BachにはBachにしか出せない音色を持っていますし、演奏者の個性をバランス良く表現できる楽器だと思います。その個性を表現しながら、その上でアンサンブルや音色の面で、合わせること、ブレンドすることが簡単にできます。また、このメンバーだからこそ出せるBachサウンドもあると思って活動しています。
長谷川
アンサンブルなのでもちろん合わせていく、調和させることは重要なのだと思いますが、その上でそれぞれの個性が見えてくるということも同じように大事なことです。合わせるだけではおもしろみがなくなるし、かといって個性ばかりではまとまりがなくなってしまう。Bachは繊細な表情から華やかさ、激しさも表せる幅の広い楽器です。同じメーカーの音色という統一感がある中にも、よく聴くとそれぞれの奏者の個性が見えてくるという演奏ができるのは、Bachという楽器自体のポテンシャルも一つの大きな要因になっていると思います。
ありがとうございました。それでは2ndアルバムの発売と、リリース記念コンサートを楽しみにしています。
 

「Bach Artists Japan 匠」メンバーよりお知らせ

 

 佐藤友紀
東京藝術大学卒業。アカンサス音楽賞受賞。第16回日本管打楽器コンクール第1位。第69回、第72回日本音楽コンクール第2位。第2回リエクサ国際トランペットコンクール入選。第6回フィリップ・ジョーンズ国際コンクールトランペット部門 第3位。東京藝術大学管弦楽研究部非常勤講師(芸大フィルハーモニア)を経て、ドイツ国立ハンブルク音楽演劇大学に留学。これまでに岡田治久、杉木峯夫、福田善亮、エドモンド・コード、ピエール・ティボー、マティアス・ヘフスの各氏に師事。現在、東京交響楽団首席トランペット奏者、シエナ・ウインド・オーケストラ客員契約団員。Bach Artists Japan匠のメンバー。東京藝術大学、洗足学園音楽大学、尚美ミュージックカレッジ専門学校ディプロマ科、各非常勤講師。日本トランペット協会常任理事。ARK BRASS(アークブラス)のコア・メンバーとしても活躍

 
 

 長谷川智之
北海道函館市生まれ。東京藝術大学音楽学部卒業。これまでにトランペットを杉木峯夫、松田次史、関山幸弘の各氏に師事。第22回日本管打楽器コンクール第2位受賞、第75回日本音楽コンクール第1位受賞、および岩谷賞(聴衆賞)受賞。 NHK-FM「名曲リサイタル」に出演。ソリストとしても、東京フィルハーモニー交響楽団と協奏曲を度々共演している。東京フィルハーモニー交響楽団首席トランペット奏者を経て、現在、NHK交響楽団首席トランペット奏者。2021年11月、初のソロアルバム「Intrada」をMClassicsレーベルよりリリース。また、ブラス・ヘキサゴン、Bach Artists Japan 匠、Brass Code12のメンバーでもあり、室内楽奏者としても活動している。また、洗足学園音楽大学客員教授、愛知県立芸術大学、国立音楽大学、東京音楽大学、各非常勤講師として、後進の指導も行なっている

 
 

 井上圭
熊本県出身。東京藝術大学卒業。第20回ヤマハ新人演奏会に出演。第75回日本音楽コンクール入選。元名古屋フィルハーモニー交響楽団 首席トランペット奏者。
これまでに名古屋フィルはじめ複数の団体とハイドン、アルチュニアン、トマジなどのコンチェルトを演奏。Bach Artists Japan 匠、Aichi Trumpet Section、トランペットアンサンブルCozy 各メンバー。これまでに市原 彰、本村孝二、津堅直弘、北村源三、杉木峯夫、関山幸弘、野口浩史の各氏に師事。現在、愛知県立芸術大学准教授、名古屋音楽大学非常勤講師

 
 

 安藤友樹
宮城県石巻市生まれ。東京藝術大学卒業。第16回大曲新人音楽祭コンクール優秀賞。日演連主催のオーディションに合格しアルチュニアンのトランペット協奏曲を仙台フィルハーモニー管弦楽団と共演。2008年〜2016年まで東京フィルハーモニー交響楽団に在籍。トランペットを杉木峯夫氏、津堅直弘氏、森岡正典氏、井川明彦氏に師事。エマーノンブラスクインテット、Brass Code12メンバー。NHK交響楽団トランペット奏者。ARK BRASS(アークブラス)のアソシエイト・プレイヤーとしても活躍

 
 

 尹千浩(ユン・チョノ)
横浜市生まれ。愛知県立芸術大学音楽学部卒業。在学中、アジアユースオーケストラ、小澤征爾音楽塾、PMFに参加。トランペットを織田準一、佐藤友紀、武内安幸の各氏に師事。その後渡米し、クリーヴランド音楽院にてマイケル・サックス、コルバーン音楽院にてジェームス・ウィルトの両氏に師事。在米中ウエストヴァージニア交響楽団の副首席トランペット奏者、バークレー交響楽団の首席トランペット奏者を歴任し、2015年より読売日本交響楽団トランペット奏者。昭和音楽大学、洗足学園大学各非常勤講師。ARK BRASS(アークブラス)のアソシエイト・プレイヤーとしても活動する

 

「Bach Artists Japan 匠」メンバー使用楽器(B♭管)

 佐藤友紀 
⟨楽器⟩Stradivarius 180ML37 SP
イエローブラス・銀メッキ仕上げ/MLボア/ベル:#37/マウスパイプ:#25
⟨マウスピース⟩Bach 1½ C

【使用楽器の気に入っているところ】
倍音が豊富なので響きがとても豊かに感じられる楽器です。自分の出したい音色を表現できる楽器なので、ずっと信頼してBachトランペットを使用しています。

 

 長谷川智之 
⟨楽器⟩Elkhart 50th Anniversary37 SP
イエローブラス・銀メッキ仕上げ/MLボア/ベル:#37/マウスパイプ:#25
⟨マウスピース⟩Bach 1C #24スロート・#24バックボア

【使用楽器の気に入っているところ】
気に入っているというレベルを超えて、身体の一部となっています。音色はもちろんのこと、音楽的な場面やシチュエーションに応じて吹き方を変えるときに、自分のイメージとリンクしてくれるので非常に演奏しやすいです。このような楽器はBachしかありません。

 

 井上圭 
⟨楽器⟩Stradivarius 180ML37 SP
イエローブラス・銀メッキ仕上げ/MLボア/ベル:#37/マウスパイプ:#25
⟨マウスピース⟩Bach 1½ C カスタマイズ

【使用楽器の気に入っているところ】
Bachらしい個性を持ちつつ、いい意味でクセがなく、自分のやりたい演奏に楽器が近づいてくれるような感覚が感じられる楽器です。

 

 安藤友樹 
⟨楽器⟩Elkhart 50th Anniversary37 SP
イエローブラス・銀メッキ仕上げ/MLボア/ベル:#37/マウスパイプ:#25
⟨マウスピース⟩Bach 1C #26スロート

【使用楽器の気に入っているところ】
低音パートを吹いている時に、上のパートとオクターブで重ねるときもテンションに負けずに鳴ってくれるのでしっかりついていくことができる楽器です。しっかり音を掴める感覚があるので、すべての音を鳴らし切ることができる楽器です。

 

 尹千浩 
⟨楽器⟩Stradivarius 180ML37 SP
イエローブラス・銀メッキ仕上げ/MLボア/ベル:#37/マウスパイプ:#25
⟨マウスピース⟩Bach 1X カスタマイズ

【使用楽器の気に入っているところ】
とにかくトランペットらしい音を出せる楽器で、トランペットを吹く醍醐味が詰まった楽器だと思います。いいバランスで個性を出せる素晴らしい楽器だと思っています。

 

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