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07|ビザの取得について

当時のことを振り返ってみる

What's えびちゃん留学記 ...

自分が感じる「違い」はなんなのだろう───
演奏の違いから様々なことを探求して行った留学時代と海外生活時代を振り返りながら、現地の情報もお届けします。ファゴット奏者で、指揮、講演、コンサートの企画、オーガナイズ、コンサルティング、アドバイザーなど様々な活動をする基盤となった海外留学とはどんなものだったのか。思い出すままに書いていきます。

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蛯澤亮

蛯澤 亮
Ryo Ebisawa


茨城県笠間市出身。笠間小学校にてコルネットを始め、笠間中学校でトランペット、下妻第一高等学校でファゴットを始める。国立音楽大学卒業。ウィーン音楽院私立大学修士課程を最優秀の成績で修了。バーゼル音楽大学研究科修了。 ザルツブルク音楽祭、アッターガウ音楽祭、草津音楽祭などに出演。元・ニューヨーク・シェンユン交響楽団首席奏者。茨城芸術文化振興財団登録アーティスト。ファゴットを馬込勇、ミヒャエル・ヴェルバ、セルジオ・アッツォリーニの各氏に師事。 「おしゃふぁご 〜蛯澤亮のおしゃべりファゴット」を各地で開催、クラシック音楽バー銀座アンクにて毎月第四金曜に定期演奏、池袋オペラハウスにて主宰公演「ハルモニームジーク 」を毎月第二水曜日に開催するなど演奏だけに留まらず、様々なコンサートを企画、構成している。

 

 

 

 

ビザの取得について

入試に合格し、9月からは晴れて学生となることが決まった。となると早速、学生ビザの取得をしなければならない。

ちなみに日本人には日本を卑下する風潮があるし、ニュースなどでも「日本がダメだ」という流れが一般的と言って良いぐらい普通になっている。しかし、海外に出てみると日本のパスポートの信頼性はとても高い。その信頼を作ってきたのは先人たちだし、日本人の先輩方に感謝しつつ、その信頼を落とすようなことは音楽留学生たちにもして欲しくないと願う。

そのビザだが、日本人はパスポートさえ持っていればオーストリアに六ヶ月滞在できる。ドイツや他のヨーロッパの国々は普通三ヶ月だが、オーストリアは六ヶ月だ。そのおかげで私も早いうちから入国してレッスンを受け、慌てることなくビザ申請をできたのだが、自分の留学する国にどのくらい滞在できるかなどは大事な情報なので「普通三ヶ月だ」と思い込まずにちゃんと用件を調べておくのが良いと思う。国によって様々で、アメリカではオバマ政権の時にESTAができ、入国することが厳しくなった。私はアメリカのオケのオーディションにいく時にこれを知らず、ベルリンで乗り継ぎができずに一泊するハメになった。日々変わっていくことでもあるので短期留学でも海外に行く時にはしっかり調べていこう。

さて、オーストリアのビザ取得は私が留学した時代からだいぶ変わっているので詳しく解説しない。私が申請したのは警察署だった。昔は警察署にビザ申請の部署があったのだ。しかし、程なくしてマギストラートという役所ができて、ビザに関しての業務を行うことになり、私は警察署で申請して受け取りはマギストラートだった。この時の書類の移行が大変だったのか、えらく時間がかかった。さらにここ数年また窓口が変わったようだ。

オーストリアは年々、外国人に厳しくなっているが、これはヨーロッパの先進国では全体的にある状況ではないだろうか。日本では移民問題が最近やっと取り沙汰されているが、日本と違ってヨーロッパはすでに大量の移民を受け入れてきたのだ。オーストリアは東ヨーロッパの窓口のような国なのでかなり外国人の流入も多い。ドイツからすると、オーストリアがどんどん入れるからドイツに流れてくる、という怒りもあるようだ。ウィーンでは「地下鉄の一車両にオーストリア人が一人もいないこともある」と言われるほど外国人であふれているのだ。ウィーン国立音大の学生のうち七割は外国人だと私が留学していた当時聞いたことがある。

それもあって最近右派政権が成立し、ここ数年でさらに厳しくなったという話を聞く。最近はちゃんと学校に合格してもなかなかビザがもらえないという事態が多々あるようだ。ビザを取る時の準備には無犯罪証明書など日頃使うことのない書類を取らなければいけないなど面倒なことが多いが、自分のしたい勉強のために準備は国内にいる時からしっかり準備していくことをお勧めする。ウィーンは首都で大使館もあるが、大使館や領事館がない町へ留学する場合はさらに気をつけたほうが良い。取り寄せに時間がかかったり、遠い大使館まで出向かないといけないなど、さらに面倒なことになるかもしれない。日本で取れる証明書は取っておくのが最善だ。

あと、ビザを取りに行く時だけではないが、役所の人と接する時におどおどしないことを意識してほしい。様々な国からいろいろな人が来るので声が大きい人や主張が強い人も多い。そんな中、声も小さく、何か聞いてもほとんど話さずおどおどしていると役人は逆に面倒だと感じる。言葉がちゃんと話せるかどうかは関係ない。その時できる自分の精一杯の言葉を使って、感じ良く、堂々と接することが大事だ。「こんにちは」としっかりと言い、感じよく接しながら堂々と自分が主張するべきことや答えなければいけないことに対応しよう。

私も警察署にはじめてビザの申請に行ったとき、受付で「すみません」と言ってビザの受付はどこか質問し始めたら、警察官が「こんにちは」と私が話すのを遮ってきた。もう一度「こんにちは」と言うので私も「こんにちは」と言うとその警察官「この国では『すみません』ではなく『こんにちは』の挨拶から会話が始まるんだ」と言ってきた。確かに日本的には「すみません」で何事も通るが、そう言った挨拶の感覚は言葉や国によって違う。そこで萎縮するのではなく、ここはそういうものなのだ、と頭に入れてその国の習慣を掴んでいくと馴染みやすくなると思う。大抵のヨーロッパ人は日本人とは違った接し方で一見こわい感じがするが、彼らにとってはそれが普通であり、指摘されれば理解して受け入れれば良いこと。挨拶の仕方や言葉の使い方などは典型で、今思えば、柔軟に文化の違いを楽しむくらいがちょうど良いのではないかと思う。

おそらくこの留学記で何度も書いてしまうことになるが、外国人と接するときに一番大事なのは感じよく堂々とすることだ。たとえ言い合いになったとしても問題が解決すれば良いのだ。その点、オーストリアは柔軟な人たちも多い。自分の意見をしっかりと持ち、堂々と言えるようにすることが相手からの信頼を得る第一歩だと思う。

さらっと書く予定が1500字を超えてしまったようなので今回はここまで。

 

 


 

次回予告 :夏の講習会とザルツブルク音楽祭について

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