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トロンボーンのバルブって何? 後編

mini vol.5|What is Trombone Valve?

トロンボーンの奥深いバルブの世界、前編に引き続き、さらに深く掘り下げていきます!
今回はF管アタッチメントの巻き方の種類からご紹介します。ノナカ・テクニカルサービス株式会社の飯塚丈人さんに引き続きお話を伺いました。

F管アタッチメントの巻き方は2種類

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バルブ使用時に息が流れるF管アタッチメントは巻き方が楽器によって異なりますが、どのような種類がありますか?
飯塚
一般的に基本的な巻き方であるトラディショナルラップと現在主流となっているオープンラップという2種類の巻き方があります。
トラディショナルラップ
は半世紀以上昔から変わらない巻き方です。本体からはみ出さないコンパクトなレイアウトです。
オープンラップは曲がっている場所を極力減らした巻き方です。抵抗が少ないのでより解放的な音を出せます。

トラディショナルラップ(左)/オープンラップ (右)

 

飯塚
トラディショナルラップは屈曲が多く抵抗値が高いため、オープンラップと同じ管の長さで製作すると音程が高くなってしまいます。そのためトラディショナルラップの管の長さはオープンラップに比べて約6cm長く製作されています。長いぶん楽器の重さが加わり、それを支える支柱も増えるので、細かい動きは演奏しづらくなりますが、骨格のしっかりした音が出ます。
ロータリーバルブはトラディショナルラップとオープンラップ、どちらのモデルも販売されていますが、ハグマンバルブとアクシァル・フロー・バルブに関してはオープンラップの楽器がほとんどです。これらのバルブはよりスムーズな吹き心地を目指して開発されたバルブなので、管を屈曲させて抵抗を増やす理由がありませんし、ロータリーバルブとはレイアウトが異なるので、理論上トラディショナルラップにするのが難しいです。(例外あり)

バルブの種類によってF管アタッチメントの管のレイアウトが異なる
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バストロンボーンのバルブについて教えてください。
飯塚
現代のバストロンボーンのバルブはひとつの楽器に2個ついているものが多いです。特に現代曲では複雑なロートーンを多用しますが、バルブを2つ使用した時は抵抗がより表れやすくなるので、ハグマンバルブやアクシァル・フロー・バルブの抵抗の少なさが反応の良さとして表れやすいといえます。

ハグマンバルブのバストロンボーン

バルブのお手入れ、過ぎたるは及ばざるが如し!

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バルブのお手入れの方法を教えてください。
飯塚
バルブは構造が複雑なので、分解することはあまりおすすめしません。きちんと歯を磨いてから演奏すれば、バルブまで汚れが入ることは極力抑えられるはずです。適所にオイルを注し、毎日楽器を吹く学生さんでしたら半年ごとを目安に楽器屋さんへメンテナンスに出しましょう。
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バルブのお手入れをする時の注意点を教えてください。
飯塚
オイルはおおまかに分けると3種類の粘度のオイルが出ていますが、オイルは正しい場所に適量注しましょう。(編集部注:ロータリーの詳しいお手入れの仕方はWind-i mini Vol.2の「お手入れ向上委員会が行く! オイル後編」で紹介しています。)
例えば軸に注すスピンドルオイルをバルブの中に間違って注してしまうと動きが鈍くなってしまうことがあります。また、ローターオイルを多く注し過ぎてしまうと余分なオイルがチューニング管のほうまで流れ、グリスと混ざり粘り気の多い液体となります。その液体がさらに逆流してバルブに入り込み、バルブの動きが非常に悪くなってしまっている楽器も見かけます。ローターオイルを注す量は米粒2〜3滴で充分です。楽器をメンテナンスに出すときに、リペアマンに直接お手入れの方法を確認してみるのもいいと思います。

トロンボーンのバルブという楽器の一部分だけでも、これだけ多くの要素を考えながら、情熱を持って製作されています。よりよい音質と操作性を求めて、これからもトロンボーンのバルブは進化していくことでしょう。飯塚さん、貴重なお話をどうもありがとうございました!

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