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特集!毎日の練習を濃いものに!! 憧れの演奏に近づくためのアドバイス

Wind-i mini 16号 特集

アンブシュア

アンブシュア

アドバイザー:谷風佳孝

谷風佳孝
Profile:京都市立芸術大学をフルートで卒業後、ウィーンに渡り声楽を学ぶ。帰国後、桐朋オーケストラアカデミー研修課程を修了。第5回KOBE 国際学生音楽コンクール管楽器部門を鍵盤ハーモニカで審査員長賞。同コンクールを室内楽で奨励賞。日本フルートコンベンション・コンクール・ソロ部門第3位(第10回)アンサンブル部門第1位(第16回)。第8回びわ湖国際フルートコンクール入選。ミュージカル「星の王子さま」にて「うぬぼれや」役を熱演。バレエ「ジゼル」に貴族役として出演。フルート四重奏団「アンサンブル・リュネット」のメンバー。現在、フルートと鍵盤ハーモニカを中心に多種多様な演奏活動を行なっている。天理楽器フルート講師。

唇を横に引くのは危険!

唇を横に引くのは危険!

フルートのアンブシュアというと、唇を「イー」と横に引くイメージがありますが、これを私はとても危険な慣習だと考えます。唇を強く横に引くと、下アゴがガチガチに固定されます。それによりアゴや首が緊張しやすく、口の中も狭くなる傾向があります。また、フルートを吹く時は、歌口の1/4 〜1/3ほどを下唇で塞ぎますが、唇を強く引くと下唇で上手く歌口を塞げないため、つよく楽器を下顎に押し当てることになり、楽器も内側に転がりやすくなります。それにより、右手で握るように楽器を持ってしまい、右手親指が楽器より前に出て、右手小指はピーンと突っ張ることになります。そして、右手親指が楽器を持つ支点になってしまうと、唇への圧着のために左手で力強く押し当てることになり、気がつけば、慢性の肩こりに悩まされます。

息が通るアパチュアの位置は?

アパチュアは横長のペターッとした穴ではなく、小さい丸い穴のほうが良いでしょう。アパチュアは、息の勢いで開けるのではなく、意識的に開いた状態を作ることになります。アパチュアは唇の中央に開くのが理想と考えますが、唇の真ん中が出っ張っていて息が二股に割れてしまう人は、場合によっては横にアパチュアをずらすのもアリだと思います。その場合は、どちらかと言うと左側にアパチュアを開けたほうが、身体には楽かと思います。右側にアパチュアを開けますと、右腕が後ろに下がるため、右肩が凝ってしまいやすいです。
アンブシュアは目に見える唇の形ばかりに意識がいきますが、唇の奥にある歯の場所も非常に大切です。フルートを吹くアンブシュアを作り、そのアパチュアにフルートの掃除棒を3cmほど息の方向にそってゆっくりと挿しこんでみてください。この時、掃除棒が歯にぶつかってしまう人は要注意! 歯が息の通路を邪魔しています。歯が邪魔していると、いくら頑張ってもしっかりした息は出ません。
また、盲点になりやすいのが、楽器を吹いている際の舌の形や置き場所も息の密度感や角度、スピードに大きな影響を及ぼします。口の中がどうなった時に、どういった息の出方になるのか……これは自分で体感するほうが手っ取り早いと思います。手のひらに息を当て、色々と息の形を変えてみてください。

最後に……

「リラックスした唇で吹きましょう」……言うのは簡単ですが、実際には唇周りの筋肉が発達していないと、息を出した途端にアンブシュアは崩壊してしまいます。脱力をするためには、あらゆる筋肉がしっかりとバランスよく発達し、繊細に使えることが必要不可欠なのです。唇の末端まで意識を渡らせることは一朝一夕にはいかず、目標に向かって地道に鍛錬を積むしかありません。結果がすぐ出ないので諦めたり飽きてしまったりしやすいですが、アンブシュアのトレーニングを美顔のエクササイズと思って、ぜひ続けてみてください。

(THE FLUTE vol.133より)

 


アドバイザー:小山真之輔

小山真之輔
Profile:京都市立芸術大学卒業。大学在学中に指揮に興味を持ち指揮活動を始める。オーケストラアンサンブル京都、奈良交響楽団、京都フィルハーモニー室内合奏団、オペラプラザ京都を指揮。フルートを山田はじめ、大嶋義実、瀬尾和紀、室内楽を朝比奈千足、渡邊潤也、村上哲の各氏に師事。またジュゼッペ・ノヴァのマスタークラスを受講。全日本学生音楽コンクール高校生の部入選、シュガーホール新人演奏会入選、日本フルートコンヴェンション アンサンブル・アワード部門1位(アンサンブル・リュネット)、ドルチェ音楽教室講師。メガネをかけたフルート男子4名によるパフォーマンス・グループ「アンサンブル・リュネット」のメンバー。現在は指揮者、フルート奏者の両方で活動を行なっている。

一体アンブシュアとは?

アンブシュアを確認する目的はなんでしょう?
フルートの音色の安定、改善ですね。理想とする音色、目標とする音色はありますか? 理想や目標とする音色をゴールとすると、ゴールを見据えずに練習を開始するということは羅針盤を持たずに航海に出るのと同じで(表現が古かったですね)大海原で迷子になって結局出発地点に戻ってしまいます。
理想の音(ゴール)があって、現実の音(出発地点)があります。理想と現実のギャップを埋めるために練習していきましょう。そうすれば羅針盤(先生や教則本)が道しるべになってくれるでしょう。

理想のアンブシュアを大研究

いよいよ鏡で自分のアンブシュアを見てみましょう。手本とするアンブシュアと自分のアンブシュアの違いはどこにあるのでしょう? 楽器の角度? 息のスピート? 唇の引き方? 真似をするところから始まります。
どんどん真似しましょう。「楽器の角度はこれくらいかな?」さあ同じ角度でやりましょう。「お、唇を横に引いているな」そうそう、同じように引っ張ってください。いいね!いいね! 「楽器は◯◯製の楽器を使っているみたいだな」もう楽器も同じものに買い換えちゃいましょう。
「あれ?? 同じ音にならないぞ!」なるわけないやろー!!
人には個人差があり、唇どころか骨格も身長も体重も練習時間も話す言葉さえも違うのですから、形は同じようにやっていても違うのが当たり前なんです。それでも諦めずに鏡で自分のアンブシュアを見て音を出してみましょう。
「あれ、先生よりも楽器の角度を内に向けたほうが先生みたいな音がするな」そうそう。
「あの人は唇を引いているけど、私はあの人よりも唇を引かないほうが良い音になったな」それも良い発見。
そう、これが理想と現実のギャップを埋めていく作業ですね。理想と現実のギャップが埋まるのは(ゴールが見えてくるのは)一週間後? 半年後? 答えは人それぞれです。ゴールにたどり着いてしばらくするとまた自分の音色に悩んで航海に出る時もあるでしょう。それも結構。たどり着いたゴール地点で永住することもあるでしょう。それもまた結構。
大事なのは“アンブシュアとは自分で見つけていくもので、先生や教則本は道しるべでしかない”ということ。
ようこそ大海原へ。みなさんのアンブシュア探しの航海が素晴らしい旅になりますように、心から祈っています。

(THE FLUTE vol.133より)
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