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全日本吹奏楽コンクール課題曲はこう攻略せよ!

Wind-i vol.7│特集

Ⅲ ある英雄の記憶 金管編

冒頭のファンファーレはかっこいいですが、3連符のタイに少し苦労しそうですね。
拍頭に音の変化がない、つまりタイや休符、伸ばしの途中などは、縦がズレる原因の1位に挙げても過言でないと思います。
正確に合わせていくには拍頭に何か音を埋めて練習するといいでしょう。
この冒頭の部分で言えば、「タイをはずして練習して、正しい拍の感覚を身につけてから楽譜通りに戻す」といった練習が必要です。
さてこの曲では途中、テンポ♩=138〜144とやや速い場面が出てきます。さらには変拍子まで……。
メトロノームでじっくりさらいましょう!!
ここではEからのトロンボーン、ユーフォニアムのメロディを題材にして考えていきます。
まずはオーソドックスですが、倍テンポからじっくりさらいましょう。ここでは♩=60〜70くらいからさらい始めるのが妥当でしょうか。もし吹けなかったらさらに遅くしてください。吹けるテンポを見つけたらそこから1〜4ずつテンポを上げていきます。できたら2上げ、できたら2上げ……こんな感じにじっくりです。1ずつ上げてさらえれば最高です! もしかしたらこのまま♩=140まで上がっちゃうかもしれませんが、大概そうはいきません(>_<)
もう気づきましたね? 4分音符の後が難しい!

別の練習をします。名付けて「1拍と1つ練習」です!例えば30小節目で説明します。テンポはin tempo(♩=138〜144)か、先ほどつまづいたテンポで。

①1拍目と2拍目の頭まで吹きます。Cis-A-C
②2拍目と3拍目の頭まで吹きます。C-B-A-G
③3拍目と4拍目頭
④4拍目と次の小節の頭
できたら、増やします。
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❶1・2拍目と3拍目頭
❷2・3拍目と4拍目頭
❸3・4拍目と次の小節の頭
できたら、増やします。

……という感じです。部分部分を練習して繋げるという練習ですね。解消したらまた通してみて、と繰り返していきましょう。
臨時記号が多く音も取りづらいので、マウスピースを使って音をとる練習も、効果的です。
Gにはトランペット・ホルンに似たようなものが出ますね。参考にしてください。

最も苦労するのはHでしょうか。もちろんゆっくりから練習します(個人でも、合奏でも)。
休符を何かで埋めて練習します。楽器を置いて歌ってもいいですね。
トランペット1stならこのように歌ってみましょう。
「レララすすすすレラソファファすすすすソファソラすすソラすすソソララー!」
“す”で埋めました。“た”でもいいかもしれません。手で叩いて埋めてもいいです。楽器を吹いて音で埋めても良いです。とにかく色々工夫して、休符の短さを習得しましょう! Pのトランペット、カッコいいですね。気持ち良いでしょう。羨ましいです。ついつい拍を大きく取りがちですが、ここの伴奏はとても細かい音が並んでいるので、大きくで歌う感覚と、細かくで進行する感覚を同居させて吹きましょう!

Ⅲ ある英雄の記憶 木管編

全体的に大変展開の早い曲で、和声進行も複雑です。一歩間違えば、ただ楽譜に書かれた音符の音を出しただけということにもなりかねません。指導者の楽曲理解度がそのまま音楽に直結するので、深い分析と丁寧な練習が必要と思われます。

冒頭:3小節目からの低音の動きは冒頭のTpのテーマが展開されています。調性感を大切にして美しい響きで。4小節目アウフタクトの高音木管の連符の動きは、次の小節に向かってエネルギーをかけていきたいところ。ClとSaxのフレーズは、小節ごとの和声進行、音程を確認しておきましょう。4 ~ 5小節目にかけては音楽に広がりを持ってAに繋げたいですね。
A:前からのフレーズが2拍ごとに楽器を変えて現れます。音色の変化を見せたいところです。音楽はA冒頭を頂点に徐々に収斂されていきます。自然なディミヌエンドになると良いですね。3小節目からのB.Clの動きは重要なので、他の金管低音群と音程、音型をしっかりとそろえておきたいところです。
B:アウフタクトからのBsnとB.Saxの旋律は、Euphと同じ動きです。音色感のある響きとクリアな輪郭が欲しいところです。B.ClはTrb 3rdやTubと同じ動きになります。旋律を追い越すことがないように、しかし存在感が必要です。
C:アウフタクトからClとSaxが旋律を引き継ぎますが、pesante の雰囲気はそのままに、音色感とクリアな輪郭を心がけて。奏者の人数が増えている分だけ音程、音型がそろいにくくなるので注意が必要です。重々しさの中にも推進力を失わずに演奏することにより、最後のrit.が効果的に聞こえるでしょう。
D:場面転換を印象付けるためにもSax群の動きはよりクリアに。低音の動きは拍子感に直結するので注意。2小節目3拍目からの高音木管の動きは滑らないように気をつけて。調性感も忘れずに。
E:4小節目の高音木管はリズムの正確さと音程をしっかりと出したいところ。グロッケンとの連携も確認しておきましょう。A.Saxの動きはHrnのサポートなので、しっかりとそろえていきましょう。和音になっていますので、音程もシッカリ確認を。
F:アウフタクトからのClの3連符の動きは、流れに乗って正確なリズムで。ここからのCl の旋律はインターバルの確認が必要です。4度下降には特に注意。4小節目のA.Sax1st の4度も確認しておきましょう。5小節目アウフタクトから旋律に加わる高音木管についても同様です。音色変化も欲しいところです。和音進行が途中から変化しているので注意。8小節目からDの雰囲気が戻ってきます。Sax群と低音の3連符の動きはクリアなサウンドが欲しいですね。噛み合わせ注意。
G:4小節目の高音木管の連符の動きはリズムの正確さと音程、音色感が欲しいです。丁寧に確認しながら練習してみてください。全体のサウンドが濁る原因になりますので注意してください。
H:3連符の噛み合わせをチェック。打楽器との連携も確認しておきましょう。4小節目はテンポが走りやすいところです。特に2拍目のSax群の動きには気を付けましょう。
IObソロは音量記号にとらわれず、伸びやかさとツヤのある音色が欲しいですね。2拍目からのCl群は、Hrnと同じ動きになりますが、非常に音程を合わせづらいところですので、しっかりと確認をしておきましょう。
J:アウフタクトからのBsn のsoli は、非常にずれやすいので注意が必要です。5小節目アウフタクトのFl、Ob、Saxの旋律は音がオクターブで重なるので、音程に注意。8小節目の旋律のディミヌエンドは、Cl1stの音に収斂し ていく感じが良いと思います。
K:アウフタクトからのClの旋律は、徐々に音楽に広がりが出てくる感じで良いと思います。伴奏の8分音符の動きのリレーは1本に聞こえるように確認を。7小節目からの高音木管の3連符の動きは、人数は少ないですが緊張感 のあるサウンドでLに繋げていきたいですね。
L:冒頭の高音木管の音程は非常に取りづらいので、強奏せず音色、音色をコントロールしましょう。LEの旋律の再現ですが、新たにCl とT.Sax の動きが加わりますので、音量は落としていても存在感は欲しいところです。潤いとツヤのある音色で演奏できると良いですね。9小節目からの3連符の噛み合わせがずれないように気をつけましょう。
MFの再現となりますが、新たに加わるObとSaxの8分音符の動きはアピールが欲しいですね。8小節目からのSax 群と低音の3連符の噛み合わせは確認しておきましょう。
NLをさらに複雑にしたものになります。7小節目から金管との動きも含めてしっかりとそろえていきたいところです。8小節目2拍目の低音はしっかりとしたサウンドが欲しいですね。
O:噛み合わせは要確認。7小節目の低音は音程を探らずにインパクトが欲しいところ。
P:A.ClとT.Saxはしっかりとアピールを。2小節目から旋律に合流するOb とCl は、Tp の輝かしいサウンドに近づけると良いですね。8小節目からの旋律は、エコーも含めて様々な楽器に受け渡されるので、強奏しすぎず音色感の変化で、さらに壮大な世界観を描きたいところです。1小節目からのFl、9小節目からのClは、主張しすぎず密度の濃い音楽づくりをサポートできると良いと思います。
Q:冒頭の8分音符から始まる動きは、しっかりと集合した感じが出せると良いと思います。緊張感のある音でクリアに聞かせたいところ。オーバーブロウ(吹き過ぎ)で開いた音にならないように注意を。
Rpiù fでテンションは高いですが、オーケストレーションが分厚いわけではないので、緊張感のあるクリアなサウンドが求められます。3小節目は混沌とした感じに聞こえやすいので、1つひとつの音符の輪郭をクリアに。スラーがかかった連符も粒立ち良い演奏になると良いと思います。5小節目のグロッケンと同じ動きの高音木管は、テンションの高さの中にもキラキラ感を失わずに演奏したいところです。最後の小節の3連符は和音がクリアに聞こえると良いと思います。最後のDes音は正しい音程でしっかりとキメたいところです。


PAGE.1|全日本吹奏楽コンクール課題曲はこう攻略せよ!
PAGE.2|『課題曲I』マーチ・スカイブルー・ドリーム
PAGE.3|『課題曲Ⅱ』スペインの市場で
PAGE.4|『課題曲Ⅲ』ある英雄の記憶
PAGE.5|『課題曲Ⅳ』マーチ「クローバー グラウンド」

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