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全日本吹奏楽コンクール課題曲はこう攻略せよ!

Wind-i vol.7│特集

Ⅳ  マーチ「クローバー グラウンド」 金管編

「重くて遅い」表打ち解決法
表打ち隊の楽器がよく陥ってしまうのは[重くて遅い]ということです。メトロノームでピッタリさらってきたのに、合奏で「テューバ遅いです」って言われたことはありませんか? しかし速く吹いたからといって合うわけでもなく……^^;
そんな時、(仮にテンポ感は合っていたとして)原因は大きく2つ考えられます。

①音の立ち上がりが鈍い(息の初速が遅い)

擬音にすると、「も…も…も…」という感じでしょうか。そうならぬよう、タンギングをしたと同時にトップスピードの息が放り込めるように練習を重ねましょう。タンギングの強さに頼らないように! コントラバスは手元のほうで弓を短く使い、軽快さを出しましょう。


②表現がない、または歌を感じていない

流れるようなメロディに対し、「バッ!ボッ!バッ!ボッ!テンポど〜おりっ!」と伴奏してしまっては合いません。メロディのフレーズ感、質感、音の向かう方向に合わせて同じ気持ちで伴奏しましょう。簡単に言えば、頭の中でメロディを歌いながら合わせて吹いてみましょう、という感じです。

裏打ち、これに気をつければ大丈夫!
さて裏打ちです。最近ではホルンの他にトロンボーンにも回ってきますね。裏打ちを一言でまとめるなら、[短い長さで吹く]です。
裏打ちに余韻があると、まるで表打ちのようになってしまってどんどんズレていきます。かといって点で(タンギング音のみ)吹いてしまっては和音が鳴りません。裏打ちという短い時間に16分音符程度の長さの息を入れましょう。
続いて拍の取り方ですが、始めは「んパッ、んパッ…」と取っていたものがだんだん「んパッ、んパッ、パッ…パッ…」と表取りしてしまっていませんか? または下手な“太鼓の達○” のように「ぅはっ!ほっ!やっ!」って隙間をつつくような狙い方をしていませんか? 良くないです。
1拍ずつ縦揺れせずに、メロディと同じような長い息をベースにして、フレーズ感を持ってアプローチしましょう。息継ぎも少ないほうがいいです。裏打ちがしっかりと表現や音楽(クレッシェンド・ディミヌエンドや和音の進行)をつけてあげることで、曲に自然な流れが生まれます。

さあ、表と裏を合わせてみましょう! ズレてしまいましたか? ズレてしまった場合、大概は表打ちが疑われます。裏打ちは8ビート、表打ちは4ビートなので、表はルーズになりがちです。裏を感じながら表を打たないと、裏打ちは吹きづらく感じてしまいます。

鍵はトランペット!!
曲のほうに目を向けていきましょう。
マーチの基本的なアーティキュレーションは〈マルカート、スタッカート、レガート、テヌート〉で、できています。楽譜には何も書かれていなくても必ず何かに近い音形になります。えてして学生は何も表現記号の書いてない音に対してノーアイデアな音を出しがちです。はじめのうちは参考演奏を聴いて真似するところから始めてもいいと思うので、根気強く伝えていきましょう!

第2マーチの部分(ⅠもⅣもCの場面)では、中低音の勇ましいメロディがあります。が、ここも[重くて遅い]ポイントになってしまいます。やはり8ビートで細かくカウントを取りたいのと、大切なのは息の初速です 。

今回はどの課題曲もトランペットが鍵になります。1st 以外にも独立して動く2nd、3rd があったり、ベルトーンがあったりソロがあったり……。初心者の1年生を3rd にして、音を隠すといった工夫は通用しなさそうなので、しっかり練習させてください。

 

さいごに

金管楽器で共通するのはマウスピースです。なんか上手くいかないなぁ……という時はマウスピースだけで練習してみましょう。いかにいいかげんな息を入れていたかに気付けるはずです。
金管楽器は口をブーっと発音して音を鳴らしていますが、そんなこと考えながら吹いてはいけません。ぼくらが考えたいのは息の流れです。口のテンションと指に頼らないでください。息を入れるアプローチを続けることで本当の音が鳴るようになります。

ここで注意!
マウスピースの練習時と楽器演奏時とではアンブシュアなどの形が少し違うはずです。
まったく同じだと音が硬くなるはずなので、上手に吹き分けてください。特にトランペットの低い音は楽器での奏法とマウスピースだけの時とではかなり変わってくるので、あまりたくさんの時間マウスピースの練習をしないように……。
今回お伝えしたことは、その場だけで役立つことではありません。他の場面でも役立つはずです。たくさん練習してほしいですが、その内容が大事。ぜひいろんな発想の練習をしてほしいと思います。みなさんの楽器人生に少しでも役に立てたなら幸いです。

Ⅳ  マーチ「クローバー グラウンド」 木管編

曲全体として同じ動きのパートが多く書かれており、その分そろえる作業も多くなりますが、一つひとつ根気よく丁寧に課題を解決してください。また調性変化も起伏に富んでおり、場所によっては展開が早く複雑ですので、その都度調性の確認をするように心がけてください。低音の調性感も重要です。またこの曲においては、多くの箇所で低音とバスドラムがリンクしていますので、意識してそろえていきましょう。

冒頭:連動するClとSax群の噛み合わせに気をつけながら、明確なイメージを持って演奏しましょう。細かい連符は滑ることがないよう正確に、またレガートが付いていますが16分音符を粒立ちよくクリアに演奏を。シロフォンも同じ動きをしており、ずれやすいので注意。6小節目の低音は丁寧にそろえて収める感じが良いでしょう。
A・B:メインテーマは、アーティキュレーションも凝っていて、丁寧にしっかりと動きをそろえていきたいところ。B後半に加わるTp のアーティキュレーションから推察すると、木管群の旋律には随所にスラーが書かれているものの、粒立ち良くクリアに演奏すると良いと思います。A.Cl とT.Sax の動きは、旋律を超えない程度に存在感が必要。ABで音量バランスにも工夫が必要ですね。A 8小節目のPicc とFl は、スタッカートに捉われすぎず、美しい音色でのキラキラ感が欲しいです。Bから加わるFl、B 5小節目アウフタクトで加わるOb、E♭Clで、旋律に音色の変化を加えたいところです。
C:アウフタクトからの低音旋律は存在感が欲しいですが、美しい音色で丁寧に音程を整えていくことが大切です。低音以外の動きでは、音価の短い音符が続きますが、響きのあるサウンドで、あまりヒステリックに聞こえないように心がけましょう。3 ~ 4小節目の調性には注意してハーモニーを確認してみてください。
D:旋律の掛け合いの形がいくつか出てくるので、しっかりと聴かせたいところ。5小節目で調性が戻るので、Eに繋がるよう意識しましょう。

EA・Bのメインテーマの再現となりますが、フレッシュな気持ちで歌い上げたいところ。同じ動きのパートが増えているので、サウンドが濁ってしまわないように丁寧にそろえていきましょう。後半からは新しい動きが入ってきますが、フレーズを大きく捉えて音楽の継続性を維持しましょう。突如違和感のあるサウンドとならないように。
FTrio に向かうブリッジとなっており、マーチとしては特殊な構造です。調性も変化に富んでおり、丁寧な確認が求められます。最初のFlとCl、3拍目からのSax群、次の小節に現れる低音、それぞれのグループの音型をそろえてクリアなサウンドを聴かせたいところ。グループごとの受け継ぎも停滞することなくスムーズに聴かせられると良いでしょう。5小節目からは小節始めにスタートする旋律はもちろん、2拍目裏からのA.Cl とT.Sax によるトリッキーな動きにも存在感が欲しいです。3拍目裏からの連符のグループは調性感を持って丁寧に。 Trio冒頭、転調後最初のDes-durのハーモニーはしっかり作っておきたいところ。音価は短すぎず響きを持って。ここからのDes-durは、音階やハーモニー練習でしっかりと響きの確認をしておきたいですね。
G:アウフタクトのClとSax群によるテーマは、しっとりとしたサウンドと朗々とした歌心が欲しいところ。オクターブで重なっているので、音程の確認とともにバランス注意。Hrnやコントラバスとのバランスも要チェック。
H:アウフタクトからFlが加わるので、音色感の変化を楽しみたいですね。A.ClとT.Saxの動きは委縮せずに存在感が欲しいところ。
IFと同様ですが、新たな気持ちでフレッシュな演奏にしたいですね。

J :楽譜には書いてありませんが「Grandioso」という感じでしょうか。テンポが落ちる分、アンサンブルが崩れやすくもなりますので注意が必要です。Trio のテーマの再現ですがスラーはないので、音楽が流れすぎず、かつ推進力を持って演奏したいですね。A.Cl とT.Sax は大変重要な動きですので、HrnやEuphともしっかりとアンサンブルを整えて、存在感をアピールしましょう。
KJ と同様な構成ですが、単調に聞こえないような工夫が必要でしょう。5小節目からは打楽器の音量変化にも注目しながら音楽を盛り上げていきたいですね。7小節目3拍目は、しっかりとした終止感をつくった後、ボリュームを落としてFlの旋律を聴かせたいところです。弱音のハーモニーの音程には注意してください。Fl は音色と遠くに響かせることを意識して、しっかりとした輪郭のあるクリアなサウンドで演奏を。オーバーブロウで音が広がってしまわないように注意。
LAのメインテーマが調性を変えて戻ってきます。軽快なテンポ感を持って曲の終わりに向かっていきたいですね。5小節目からのClの連符がしっかりとそろえていきたいところ。シロフォンとずれないように注意。A.ClとT.Saxの動きはバランスを考慮しながら上手に聴かせたいですね。
M:エンディングですが、調性も含めてひねりの効いた構成となっています。3小節目からの低音とCl、Saxは和音進行を確認しておきましょう。特に3小節目3拍目は注意が必要です。またその流れを受けた5小節目アウフタクトの高音木管の動きについても、調性感を意識しながら演奏できると良いでしょう。最後の小節のはじめにある8分音符はしっかりと終止感を持って、音程、音型をそろえておきたいですね。最後の小節の2~3拍目は音楽を収める感じが良いでしょう。すべてのパートのD音の音程と音型を整えて、有終の美を飾りましょう。


PAGE.1|全日本吹奏楽コンクール課題曲はこう攻略せよ!
PAGE.2|『課題曲I』マーチ・スカイブルー・ドリーム
PAGE.3|『課題曲Ⅱ』スペインの市場で
PAGE.4|『課題曲Ⅲ』ある英雄の記憶
PAGE.5|『課題曲Ⅳ』マーチ「クローバー グラウンド」

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