後輩たちへ|増 圭介

第3回 増 圭介

プロ奏者として挑戦し続けている若手奏者にスポットを当て、夢を追って生きること、その過程、そして今プロになって感じることを語ってもらう本コーナー。
第3回目はユーフォニアム奏者の増圭介さんです。

増 圭介
 
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プロを目指そうと決めたのはいつ?
幼いころにエレクトーンを始めて、小学校のブラスバンドでユーフォニアムに出会ってからなんとなく音楽を続けていました。そして、高校3年の時、部活で楽器のメンバーチェンジがあってトロンボーンに回されたんです。それまでは音大受験など考えていなかったんですけど、回された瞬間に「ユーフォニアムを続けたい!」と決めて、レッスンに行って急ピッチで音大受験の準備をしました。そこで、音大に進むのであればプロの道を目指そうと考え、周りの人たちにも「音楽を続けていくために音大に進みます」と伝えました。
実際はクラシックをやろうと思って音大に進んだのですが、自分の好きな音楽はポピュラー系なのに持っている楽器はユーフォニアム、この食い違いをどうするべきか葛藤していました。大学3年の時、友人のほか師匠も相談に乗ってくれて「ポピュラー系をやるユーフォニアム奏者はいないんだから、そのまま進みなさい」と言われたことで吹っ切れて、今のスタイルでいこうと決めたんです。
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プロとしての苦労は?
ユーフォニアムという楽器としてはたくさんありますね(笑)。まず、聴いてもらわないと理解してもらえないことがあります。クラシック奏者はユーフォニアムでジャズ? ポピュラー? という方が多いでしょうし、ジャズミュージシャンもモゴモゴする楽器でジャズをやるの? という感じになります。でも、実際に演奏すると僕がやりたい音楽に賛同してくれる方もいます。たまたまユーフォニアムという楽器を媒体にしているだけなんですよね(笑)。
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チャンスをモノにするためには?
僕はジャンルレスで活動しているんですけど、いろんな方に声をかけていただけるように、またいろんな音楽に関わることができるようにするための下準備が必要だと考えていて、演奏するジャンルの基礎知識を知らないとできないと思うんです。少しでもわかっていれば、そのジャンルに詳しい人にも喜んでもらえますし、チャンスも広がります。音楽ジャンルのすべてに精通することは難しいですが、なんとなくでもそのジャンルのことを理解しておけば、それだけで歩み寄ることができるんです。元々僕はユーフォニアム=クラシックというイメージがなかったので、様々なジャンルの音を自分の楽器で出すために試行錯誤しながら取り組んでいます。そのジャンルの言語で会話ができるように、幅広くいろんなものに触れ、将来的に「自分はこの音楽だ」というのを見つけたいですね。
PEDAL VOX

PEDAL VOX

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モチベーションを保つ秘訣は?
うまくいかなくなりそうなきっかけがたくさんあります(笑)。家で練習している時は、自分のプレイだけをひたすら追いかけて、自分が満足いく演奏を探すんですけど、それがお客さんにどれだけ伝わっているかを考えるとそれがいいとは言えない部分もありますよね。いろいろ悩んだ時には、自分が満足するプレイももちろん大事なんですけど、お客さんが満足するプレイはどういうものなのかを考えます。そうすると気持ちが少しラクになる部分もあり、もっとシビアになる部分もあり、それを取捨選択をしていくと、いいプレイができるんじゃないかと考えています。僕たちはパフォーマーじゃないといけないと思うので、そういう部分を大事にすると自分が悩んだ時に心の整理ができると思います。特に僕がやっていることが自己満足寄りなので(笑)。
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今でも吹奏楽の演奏をされていますが、吹奏楽の魅力は?
吹奏楽はいろんな音楽に触れられる場なんです。オリジナルの吹奏楽作品から、オーケストラ作品、ピアノ曲、ポップス、ジャズ、フュージョン、ファンクなどなど、吹奏楽ではいろんなジャンルの曲を演奏できます。その中から自分の好きな音楽が見つかるかもしれないし、そういった考えで吹奏楽に取り組めばもっともっと音楽の幅が広がると思います。
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夢を叶えるために必要なことは?
深く考えたことはないのですが、意地になってひたすらそこにしがみつくことですかね。他のことを仕事にすることもできますけど、自分に正直に、何がしたいのかを考えたら今の活動があったんです。将来的に考えると、そこにしがみつくことが正解かどうかはわからないのですが、正直、意地になっているだけなのかもしれません。ただ一つ言えることは、今やっていることは僕にしかできないと思っていて、ここで止めてはいけないんだと感じています。
SADA丸

SADA丸

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学生時代と今とでは、デイリーエクササイズに変化はありますか?
かなり変わってきています。学生時代は、クラシックのエチュードをひたすらやるようなレッスンを受けていたので、基礎的なロングトーン、リップスラーを長時間行なったあと楽曲をさらっていました。
現在でももちろん音づくりのためのロングトーンはみっちりやりますけど、自分の聴いたフレーズを同じニュアンスでどう表現できるかをずっと研究しています。今は、やりたい音楽が明確なので、そういった表現の方法を模索していますね。
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音楽家として生きていきたいという学生にメッセージをお願いします。
憧れの人が歩んだ道をそのまま追いかけるのではなく、いろんなものに刺激を受けながら自分の道を見つけることが大事だと思います。何事にも縛られず、やりたいことがあるならそれを全力で突き詰めていけばいいし、そういう気持ちを大切にしてもらいたいです。絶対に僕の後は追いかけてこないでください(笑)。

Profile

増 圭介 K e i s u k e M a s u
アブノーマルなユーフォ吹き。武蔵野音楽大学器楽科ユーフォニアム専攻卒業。 現在クラシックのみならずジャズ・ポピュラーでのユーフォニアム&トロンボーンプレイヤーとしても活動中。ローブラスホーン&ドラムによるユニット「PEDAL VOX」、ファンク・フュージョンバンド「SADA丸」メンバー。

INFORMATION

今号の「後輩たちへ」に登場いただいた増圭介さんが参加している、ローブラスホーン& ドラムによるユニット“PEDAL VOX”のライブが、5月6日に四谷Blue Heatで開催されます。

春の紅白JAZZ合戦
[日時]5月6日(土) 19:00 Start
[会場]四谷Blue Heat(http://blueheat.jp/)
[出演]とってんたん〈キンドー(Acc)、ちえこ(Cl&Sax)、せっちー(Tuba)、Akkin(タップダンス)〉、Pedal Vox〈KeisukeMasu(Euph)、TOHO(Tuba)、Shun Mafune(Ds))
[料金]¥2,500

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