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ランクアップ講座 -コントラバス-

Navigator: 佐々木 秀男

Navigator:佐々木 秀男 H i d e o S a s a k i

佐々木秀男

16歳の時より元N響首席奏者の中博昭氏よりコントラバスの手ほどきを受ける。1986年国立音楽大学入学、3年次に洗足学園大学に編入、最優秀の成績で卒業。フリー奏者として活動しながら、1996年東京芸術大学別科入学。'92、'94、'02年にソロコンサート、'97年にジョイントリサイタルを開催。2014年チェコの名門弦楽四重奏団であるシュターミッツクヮルテットとシューベルトのピアノ五重奏曲「鱒」を東京・福島にて演奏。大学在学中より、関西フィル、東京フィル、東響、群響、神奈川フィル、O.E.金沢、シエナウィンドオーケストラ等、全国の主要オーケストラにて研鑚を積む。コントラバスを、中博昭、故・江口朝彦、永島義男の各氏に師事。洗足学園在学中にゲリー・カー氏の公開レッスンを受講、好評を得る。

初めて楽器に触れる人に覚えてほしいこと3つ

①楽器の置き方

 まずどこの学校でも気になるのが、楽器の置き方ですね。音楽室でもホールでも床に寝かせている学校がほとんどです。でも横にすると、ヘッドからエンドピンまで2mもの場所を占領する他、ヘッドを蹴飛ばされたりエンドピンに引っ掛けられたりと、いいことがありません。大切なコントラバスを壊されたりピンに引っ掛けた人が怪我をしたりするので、必ず椅子に立てかけるようにしてください。

置き方は自分から見て左脇に椅子を置き、裏板を手前にして立てかけます(写真①)。これはすぐに手に取って弾けるような向きであると同時に、魂柱(こんちゅう)が下側になるようにするためです。倉庫などに保管するときには必ずケースに入れて専用のスタンドに立てます。

【写真①】


スタンドがなければ床に寝かせるのも仕方ありませんが、駒が壁側になるように、魂柱が下になるように置きます。 弓の置き方ですが、練習中の休憩などでは指板とE弦の間に挟んでおくとよいでしょう。f字孔に差したり駒の丸い穴にスクリュー(弓元にある、毛の張り具合を回して調節できるところ)を差し込んで置いておくと、表板や駒を破損したり弓自体を折ったりしますのでやめましょう。手持無沙汰だからと杖みたいに床を突いている人がいますが言語道断です! 弓を保管するときは、毛を緩めてスティックに付着した松脂をふき取ってから弓ケースにしまってください。ときどき毛を拭いている人がいますが、それは必要ありません。

②楽器の運び方

次に楽器と弓の運び方ですが、同じフロアでの移動であれば、むき出しでもよいでしょう。ただし、譜面台などの硬いものとは一緒に持たないでください。面倒でも分けて運んでくださいね。別フロアや移動距離が長いときは、ケースに入れたまま運びましょう。ケースが壊れている場合はすぐに買い替えなくてはいけません。10mm程度以上のウレタンが入ったしっかりしたものを選んでください。

③楽器の調整

もう一つ気になるのが楽器の調整。調整といっても難しいことではありません。まず駒ですが、f字孔の真ん中あたりにある切れ込みの、内側の切れ込み同士を結んだラインと駒のてっぺんが一直線に並ぶようになっていれば上下はOKです(写真②)。左右はG弦とE弦から指板の端までの間隔が同じならよいでしょう。そして弦高(弦の高さ)は、指板の終わりの部分で計ってG弦で7㎜から10㎜、E弦で10㎜から14㎜程度であれば問題ないでしょう。もし、これらが狂っていたら弦楽器の専門店で調整してもらってください。

【写真②】


 

音を出してみよう!

①弓の張り方

楽器の扱い方がわかったところで、今度は音の出し方です。よく質問されるのが、松脂のつけ方、弓の張り方ですね。松脂は練習前に、根元から弓先に向かってしっかり押し付けながら2~3回こすれば十分です。たくさんつけたからといって大きな音は出ませんよ! 弓の張り方は説明が難しいのですが、弓先のチップのところを「トン」と叩いて毛がブーンと鳴るくらい、しっかり張ったほうがよいでしょう。

②弓の持ち方

僕の弓の持ち方はジャーマン式ですのでその説明をします。フロッシュを包むように下から手をかぶせます(写真③)。親指はスティックの上面に当てて小指はフロッシュの金属リングと貝の板の境目あたりに置きます。この二本の指でしっかり挟みながら、人差し指と中指はスティックを下から支えます。でも支えるだけで力は入れません。薬指はどこにも当りません。宙ぶらりんでいいです。弓が持てたら弦の上に置いて弾きます。まず背中を伸ばして足は肩幅、左右均等なバランスで立ちます。右足は横板と平行でつま先は表板の延長線上にそろうくらい、左足は裏板と平行に。そして腕をスッと遠くに伸ばすようにして弓を置きます。置く場所は決まっています。f字孔の上側の丸い穴、これの真上が標準の弾く位置です(写真④)。背中を丸めないとこの位置に届かない場合は、エンドピンで楽器自体の高さを調節します。エンドピンは動きますか? 動かない場合はやはり弦楽器専門店に修理を依頼しましょう。

【写真③】


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【写真④】


 

③弾く準備ができたら開放弦を弾いてみましょう。弓を正しい位置に置いたら腕ごと弓をひっぱっていくイメージで。肘は動かさないように、弓は握らないように。最初は情けない音しか出ないはずですが、弓のスピードをコントロールしてあげると軽く弾くだけでぶっとい音が出ます。さらにしっかりした音がほしいときは、肘の内側の平たいところを楽器のほうに向けるような感じで弓に圧をかけます。これは文章だけでは説明が難しいのでまたの機会に詳しく説明しましょう。

弓元から弓先まで同じ音色と音量をキープします。弓の返しの直前にデクレッシェンドしたり、返した瞬間にアクセントがついたりしないように注意します。オルガンのように平らな音が出るように弾きましょう。

次に左手。G弦でソ→ラ→シと弾くときの指は、0(開放弦)→1(人差し指)→4(小指)です(写真⑤)。4の代わりに3(薬指)で弾いている人がいますが、これは効率的ではありません。日本人は手のひらの幅が狭いので3ではなくて4を使うほうが安全です。4は3と一緒に行動して2本の指でしっかりと押えましょう。また、ラからシに移るときに1の指は離さないように。シを押えたときには1、2、3、4の全部の指で押えている状況になればOKです。

【写真⑤】


 

 

※こちらの記事は、Wind-i vol.5を一部抜粋し掲載しています。

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