吹奏楽wind-iオンライン記事:須川展也のShall We SAX!|vol.21「サックス音楽を広めたい!その2」
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vol.21「サックス音楽を広めたい!その2」

THE SAX vol.43(2010年9月25日発刊)より転載

最近のスガワ

 こんにちは。今年の夏は本当に暑かったですね! 皆さん、楽しい思い出はできましたか? 僕は毎年恒例の浜松管楽器アカデミー&フェスティヴァルで演奏や指導をしたり、キッズコンサートではたくさんのお子さんたちに演奏を聴いてもらいました。今年もたくさんステージに立たせてもらえたこと、これが僕にとっての夏の思い出です!
さて、このコーナーでは前回からこんな質問にお答えしています。
「須川さんがクラシック・サックスの曲だけでなく、いろんなジャンルの曲を演奏されるようになったのは、どういったきっかけですか?」
その目的はズバリ、「サックス音楽を広めたい!」ということです。一般の方に馴染みの薄いサックス音楽を演奏する機会を作るためには、サックスそのものを知ってもらう必要があります。そこで僕は、サックスでいろんなジャンルの音楽を演奏するに至ったのです。

 

 

サックス音楽を広めたい!その2

前回は僕が芸大時代、先輩である作曲家の伊藤康英さんに出会って、弦楽器やオーケストラの名曲をいろいろと教わり、さらにはサックスのオリジナル曲まで書いていただいた、というところまでお話ししました。

大学時代に弦やオーケストラ、ピアノなどの名曲に興味を持って触れていたことで耳が育ったと思うし、他の楽器の表現方法を自分のサックス奏法に取り入れるということにも繋がったと思っています。例えば、弦楽器的にちょっとポルタメントをかけたり、ヴィブラートをコントロールしたり……。もちろんサックスの曲も聴くのは当然で、ありとあらゆるレコードを聴きまくると同時に、他の楽器のものを聴いて、刺激を受けていました。

その中にはジャズも挙げられます。それまでにもジャズっぽいものを演奏するのはすごく楽しかったし、吹奏楽でポップスっぽいものもやっていました。そもそも僕が「サックスかっこいいな」と思ったきっかけがサム・テイラーですから……。

芸大には、MANTO VIVO(マント・ヴィヴォ)という芸大生のビッグバンドがあります。芸術祭のときしか演奏しないんですが、サックス科はみんなそのバンドに入るんですね。そこで僕はアドリブ演奏に出会ったのです。アドリブというのは“自由に”という意味で、そういうものがジャズにはあるのかと。楽譜に書かれていることをそのまま吹くのではなく、コードネームを見て自由に吹くんだということを、なんとなく知っていくわけですよね。

学生時代はもう、「自由に吹いていいんだ!」と思って、何も分からず、リズムもコードも無視して吹きに吹きまくっていました(笑)。今聴いたら絶対に恥ずかしくなっちゃくらい、自由気ままに。最初は、自分はジャズ奏者になりたいわけじゃないから、アドリブソロはやらなくてもいいんじゃないかと思っていたんですけどね。なのに、いざ自分に順番がまわってくると燃えてしまうという……。

でも、メチャクチャ吹いてる中で、どこかはまった気がする時があったんです。そんな時に「あ、面白いな」って気がついていきました。スタイルの中で好きに吹くことの快感を、そこで知ったんですね。もしそこでジャズにもっとひらめいていたらさらにのめり込んでいったかもしれませんが、すでにクラシックプレイヤーの道を選んでいたので、ジャズのエッセンス的な部分を正直に味わっていたような気がします。その後演奏活動を始めてから、本多俊之さんやMALTAさんなどといったジャズ界のスーパースターと出会うチャンスをいただき、ジャズのエッセンスが加わった曲を書いていただいたり、共演させていただいたりしています。それも、芸大時代にジャズに少し触れ、その入り口だけではありますが楽しさを知り、サックスの魅力を伝える手段として僕の活動に取り入れていきたいと思ったことが関係しているように思えます。

 

結局、この大学時代に寮で伊藤さんをはじめとしたいろんな音楽家たちと接して、自分の楽器だけじゃない音楽に接したことは、知識となって今に生きているのです。ジャズもそのビッグバンドで、最初は怖い先輩に「お前そんなのもできないのか、バカ野郎」なんて言われながら演奏して、その中で喜びを少し分かりかけていたということがよかった。大学では、自分が専門に勉強している、学校で取り組まなきゃいけない曲以外の曲に触れることが多かったことが、今になってすごく役に立ってるなと感じます。

すべては、今もなお僕の活動目標である「サックスの魅力、音楽をたくさんの人に知ってもらいたい」ということから始まった。そのために、いろんなジャンルの演奏に触れ、演奏している……というのが、今回の質問への答えになるかと思います。

皆さんにお伝えしたいのは、自分の楽器の曲や、皆さんが属する音楽形態、演奏形態のもの(吹奏楽だったら吹奏楽、ジャズバンドなど)を聴くのは当然イメージトレーニングにしても大事なことですけど、そこからは離れた世界、もしかしたら演歌もあるし民謡もあるかもしれないけれど、そこにも新しい出会いが待っているかもしれないよ、ということです。僕だって、30歳すぎてからピアソラとの出会いがあり、今は大事なレパートリーになっています。出会いってすごく大切なものです。自分が持っている、歩いている道の延長にある音楽だけじゃないものに触れることというのもすごく大事だなと思います。行き詰まったら逆に自分のやってるものじゃないものを聴いてみたりするとヒントがあるかもしれません。吹奏楽をやっている人だったら、管弦楽や管楽器だけのアンサンブルも聴いてもいい、ソロだったら管楽器だけじゃなくて弦楽器も聴いてみようとか。普段とちょっと視点を変えていろんな音楽、楽器を聴くことによって、何か新鮮な喜びがあったときに、また一歩前進できるんじゃないかなと思います。

 

次回のテーマは「拍手喝采を浴びた佼成のヨーロッパツアー」。
2回に渡ってヨーロッパツアーの想い出や、印象的な出来事をお届けします。お楽しみに!

※このコーナーは、「THE SAX」誌で2007年から2015年にかけて連載していた内容を再編集したものです

 

須川展也 Sugawa Nobuya

須川展也
日本が世界に誇るサクソフォン奏者。東京藝術大学卒業。サクソフォンを故・大室勇一氏に師事。第51回日本音楽コンクール管楽器部門、第1回日本管打楽器コンクールのいずれも最高位に輝く。出光音楽賞、村松賞受賞。
デビュー以来、名だたる作曲家への委嘱も積極的に行っており、須川によって委嘱&初演された多くの作品が楽譜としても出版され、20-21世紀のクラシカル・サクソフォンの新たな主要レパートリーとして国際的に広まっている。特に吉松隆の「ファジイバード・ソナタ」は、須川が海外で「ミスター・ファジイバード」と称される程に彼の名を国際的に高め、その演奏スタイルと共に国際的に世界のサクソフォン奏者たちの注目を集めている。
国内外のレーベルから約30枚に及ぶCDをリリース。最新CDは2016年発売の「マスターピーシーズ」(ヤマハミュージックコミュニケーションズ)。また、2014年には著書「サクソフォーンは歌う!」(時事通信社)を刊行。
NHK交響楽団をはじめ日本のほとんどのオーケストラと共演を重ねており、海外ではBBCフィル、フィルハーモニア管、ヴュルテンベルク・フィル、スロヴァキア・フィル、イーストマン・ウインド・アンサンブル、パリギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団など多数の楽団と共演している。
1989-2010年まで東京佼成ウインドオーケストラ・コンサートマスターを22年余り務めた。96年浜松ゆかりの芸術家顕彰を表彰されるほか、09年より「浜松市やらまいか大使」に就任。2016年度静岡県文化奨励賞受賞。
サクソフォン四重奏団トルヴェール・クヮルテットのメンバー。ヤマハ吹奏楽団常任指揮者、イイヅカ☆ブラスフェスティバル・ミュージックディレクター、静岡市清水文化会館マリナート音楽アドバイザー&マリナート・ウインズ音楽監督、東京藝術大学招聘教授、京都市立芸術大学客員教授。
 
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