吹奏楽wind-iオンライン記事:須川展也のShall We SAX!|vol.20「サックス音楽を広めたい!」
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vol.20「サックス音楽を広めたい!」

THE SAX vol.42(2010年7月25日発刊)より転載

最近のスガワ

こんにちは。本誌が出るころはもう梅雨も明けて夏本番!といったころだと思います。みなさんお元気にサックスライフを楽しんでいらっしゃいますか?
吹奏楽でサックスを吹いている人にとっては、コンクールが開催され、一年で最も充実するシーズンですね。ステージに上がる前には大きく深呼吸して、思い切り演奏を楽しんでください。
さて今回のShall We SAXでは、こんな質問にお答えしてみたいと思います。
「須川さんがクラシック・サックスの曲だけでなく、いろんなジャンルの曲を演奏されるようになったのは、どういったきっかけですか?」
はい。これについては長〜くなりますので、次回までの2回に分けて、僕の若いころからのエピソードをお話ししましょう。

 

 

サックス音楽を広めたい!

僕は中学、高校と吹奏楽でサックスにどっぷり浸り、専門家を目指すということで芸大に入りました。念願かなって芸大に入れたら先の道はひらけているかと思いきや、「サクソフォンで演奏家になる」という現実の厳しさを目の当たりにするわけです。

まずは、サクソフォンのために書かれたオリジナル曲というのを、一般の人はみんな知りません。もちろん演奏する側は「サックスにはこんなに素晴らしい曲があるんですよ」と思って吹くんですが、音楽を聴き慣れた人でないと、専門的な曲を良いか悪いか判断することは難しいものです。やはり昔から伝わるピアノやヴァイオリンなどの弦楽器の名曲のほうが皆さんに耳なじみがあって、そういう曲を求めている人が多いという現実を知ったのです。

それは残念なことです。じゃあ僕たちサックス演奏家は、どんなふうに「サックスの良い曲」を広めていけばいいのか、どうすれば多くの人に聴いてもらえるようになるのかを、一生懸命考えるようになりました。

そこで僕がやったこと。一つめは、サックスで他の楽器の名曲を演奏することによって、サックス自体を知ってもらい、チャンスをつかむということ。クラシック・サックスのために書かれたアカデミックな曲以外で、サックスで演奏したら良さそうな曲を探しました。二つめは、同じくサックス自体を知ってもらうために、サックスといえばジャズのイメージが強いので、ジャズ的な要素を含んだ曲を探し、演奏に取り入れてみること。そして三つ目は、サックスのアカデミックな曲を模範的に吹くだけではなく、「他の楽器で演奏した場合、もしかしたらこのフレーズはこうなるかもしれない」というふうにアプローチしてみること。学生時代にはこのような考え方を軸に、日々修行に励んでいました。

芸大に入ったばかりのころは、音楽が大好きで、音楽家になることを一生懸命夢見てキラキラしているわけです。でも、学校に行くと現実を知らされ、「やっぱりサックスで生きていくのは難しいかなぁ」なんてネガティブになってしまう日もあります。でもよかったのは、僕は寮に住んでいたので、他の楽器の人たちと「日本の音楽シーンのこれから」なんてテーマで語り合って元気をもらうことができたんです。

学校が終わったら寮に帰り、寮の練習室で練習して、練習が終わったら、ちょっと走ったりして体力づくりをして、お風呂に入って、部屋に帰れば仲間と一緒にお酒を飲みながら、自然にいろんな音楽を聴くようになりました。ちょうど寮の同じブロックに、今や日本を代表する作曲家になられた、伊藤康英さんがいらっしゃいました。高校の1年先輩でもあった伊藤さんですが、やっぱり作曲科に在籍しているだけあって、いろんな曲、いろんな楽器の音楽を知っているんですね。それで彼に、「なんか面白い曲はないか」と相談して、ピアノや弦、オーケストラ……いろんな曲を教えてもらったんです。

僕がそのとき興味をもったのは、まず弦楽器でした。有名なヴァイオリン・ソナタなど、伊藤さんが薦めるものを片っ端から、自分でもレコードを買ったりして聴いていました。弦楽器は、本当に表情豊かにメロディを歌い上げるということにまず惹かれましたね。そしてサクソフォンにもヴィブラートがありますが、弦楽器のヴィブラートは非常に強力なもんだなぁと。その辺りから弦楽器的な演奏法に目覚めていって、今でも弦のために書かれた曲をアレンジして演奏することがあります。

その反面、僕はよく伊藤さんに「この曲いいでしょう?」と言ってサックスのオリジナル曲が収録されているレコードなどを聴かせて、しょっちゅう自慢げに語っていました。でもたいがい返ってくるのは「う〜ん、どうかな」とか(笑)。やはり彼は普段、古今東西の大作曲家の作品に触れ、研究していましたから、サックスのために書かれた曲というものが、当時としては物足りなかったのかもしれません。でもこちらは最初から「サックスの良い曲」と思って薦め、自分も吹きたいと言っているわけですから、伊藤さんの煮え切らない答え(?)に、だんだん「何で!?」という疑問を持つようになってきます。それである日「じゃあ、伊藤さんは作曲科なんだから、サックスの曲をいっぱい書いてよ!」と。それからも顔を合わせれば「編曲して」とか「作曲して」とか言うようになりました。それで彼も影響されたのか、「こんな曲サックスに合うんじゃないかな?」なんていってヴァイオリン・ソナタを薦めてくれたりするようになってきたんです。そして、僕が大学3年、彼が大学4年の時、共に日本音楽コンクールに入賞することができ、それを記念して企画された浜松でのコンサートのために、彼はついにアルトサックスとピアノのための『ツヴァイザムカイト』という曲を書いてくれたのでした。
伊藤さんは今でも、サックスにとってなくてはならない作曲家として、素敵な作品をたくさん書いてくれています。

……ちょっと話が逸れましたが、次回は僕とジャズ(ビッグバンド)の出会いについてお話ししましょう!

 

次回のテーマは「サックス音楽を広めたい! その2」。
ジャズやポップスも積極的に取り入れて演奏してきた須川さん。そこに込められた熱い思いを語ります。お楽しみに!

※このコーナーは、「THE SAX」誌で2007年から2015年にかけて連載していた内容を再編集したものです

 

須川展也 Sugawa Nobuya

須川展也
日本が世界に誇るサクソフォン奏者。東京藝術大学卒業。サクソフォンを故・大室勇一氏に師事。第51回日本音楽コンクール管楽器部門、第1回日本管打楽器コンクールのいずれも最高位に輝く。出光音楽賞、村松賞受賞。
デビュー以来、名だたる作曲家への委嘱も積極的に行っており、須川によって委嘱&初演された多くの作品が楽譜としても出版され、20-21世紀のクラシカル・サクソフォンの新たな主要レパートリーとして国際的に広まっている。特に吉松隆の「ファジイバード・ソナタ」は、須川が海外で「ミスター・ファジイバード」と称される程に彼の名を国際的に高め、その演奏スタイルと共に国際的に世界のサクソフォン奏者たちの注目を集めている。
国内外のレーベルから約30枚に及ぶCDをリリース。最新CDは2016年発売の「マスターピーシーズ」(ヤマハミュージックコミュニケーションズ)。また、2014年には著書「サクソフォーンは歌う!」(時事通信社)を刊行。
NHK交響楽団をはじめ日本のほとんどのオーケストラと共演を重ねており、海外ではBBCフィル、フィルハーモニア管、ヴュルテンベルク・フィル、スロヴァキア・フィル、イーストマン・ウインド・アンサンブル、パリギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団など多数の楽団と共演している。
1989-2010年まで東京佼成ウインドオーケストラ・コンサートマスターを22年余り務めた。96年浜松ゆかりの芸術家顕彰を表彰されるほか、09年より「浜松市やらまいか大使」に就任。2016年度静岡県文化奨励賞受賞。
サクソフォン四重奏団トルヴェール・クヮルテットのメンバー。ヤマハ吹奏楽団常任指揮者、イイヅカ☆ブラスフェスティバル・ミュージックディレクター、静岡市清水文化会館マリナート音楽アドバイザー&マリナート・ウインズ音楽監督、東京藝術大学招聘教授、京都市立芸術大学客員教授。
 
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