フルート記事 病気になったことがラッキー ── 教科書にない音を自分で作り上げるアーティスト
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THE FLUTE vol.211 Close Up

病気になったことがラッキー ── 教科書にない音を自分で作り上げるアーティスト

ARTIST

脳卒中を患い、右半身が麻痺という状況ながらも演奏活動を続けているフルート奏者をご存じだろうか。しかも彼は一級建築士という、いわば二刀流で活躍している稀有な存在だ。その名前は畠中秀幸氏。畠中氏のその活動がHBC北海道放送の幹部の目に止まり、数カ月にわたりドキュメンタリー映画を制作。その映画が先日開催されたTBSドキュメンタリー映画祭2026で上映された。その映画の中で奏でられた音色は、心に深く染み入るような美しい響きであった。
取材協力:TBSドキュメンタリー映画祭2026

僕には使命がある

今回映画制作に出演されたきっかけは?
畠中
HBCさん(HBC北海道放送)には、3、4年前からお世話になっていまして、昨年戦後80周年という節目の年でしたので、沖縄や広島に慰霊に行きたいということ、また僕は建築の仕事もしているので、北海道の農村地帯に「遊び」を通して音楽と芸術と食を体感できるアートビレッジを作りたいという話をしたんです。
するとHBCさんが面白い企画だということで、月に1度撮影を行ない、追跡しながら特集を組んでくれることになりました。その特集をまとめたものが、『矛盾に抱かれて 音楽 建築 哲学 悲哀 循環』という映画になり、TBSドキュメンタリー映画祭2026で上映されることになりました。
映画化されるという話を聞いてどんなことを思われましたか?
畠中
2011年に脳卒中になってからは生かされているような気がしています。左半身は健常、右半身はほとんど動きません。こういう体になってむしろ健常じゃないからこそ伝えられることがたくさんあるのでは、と思いました。HBCさんをはじめ、病気になってからは様々なお話をいただくことがあり、僕には使命があると考えました。
僕は自己顕示欲の強い人間で(笑)、音楽と建築で伝えるべきことがあると考えているので、このお話はありがたく受けることにしました。
この映画に出ることで建築に関してはどんな意義があると思われますか。
畠中
大きな目標としてはコンサートホールを建てたいという目標に近づけるかなと思っています。そのコンサートホールで自分の楽団で音楽監督をやりたいと考えています。だから大手のHBCさん、TBSさんからお話をいただけたのは嬉しいことでした。
 
 

インタビューは続きます!
・機能が塞がれたことによって得られた音色
・誰もやっていない道を進むのが楽しい
・いろんなことをしたい、何でも知りたい

 
 
 
 INFORMATION
 
 

映画「矛盾に抱かれて 音楽 建築 哲学 悲哀 循環」
まひという体が教えてくれたこと。調和の先の未来。
病気で半身まひになったことを「ラッキー」「アドバンテージ」と語る、フルート奏者で建築家の畠中秀幸さん。2011年、突然の脳内出血で倒れ、後遺症として右半身にまひが残った。まひした右と、まひがない左という“異なる身体”が対話することで感覚が2倍になり、新たな創造が生まれるという。その哲学を胸に、音楽・建築・慰霊演奏へと世界を拓いていく。矛盾に抱かれた今、対話から生まれた思いや活動は広がる。どこまでも広がる畠中さんの活動は未来にどんな音色を残そうとしているのか。

監督:時崎愛悠
編集:八尾真理子 撮影:小林大樹 宮形徹 中野修一
音声:大島空 MA:西岡俊明 CG:長崎洸祐
プロデューサー:山﨑裕侍
[2026年/81分 ©HBC]

 
 
 
 
 
登場するアーティスト

畠中秀幸
Hideyuki Hatakenaka

1969年広島県生まれ。9歳の頃よりフルートを始める。札幌で中学・高校を過ごし、中学校で吹奏楽に出会い指揮棒を振り始める。中学3年よりフルートの「個人コンクール北海道大会」で3年連続1位を受賞。高校3年の時に豊平館にて初リサイタルを開催。 1988年京都大学工学部建築学科に入学し、京都大学交響楽団に入団。1994年同大学院修士課程終了後、札幌にて「ウィンド・シンフォニカ of サッポロ」を結成。主に指揮者として活動しながらkitaraなどで、2003年までに10回の定期公演を開催。 1995年北海道の設計事務所「アトリエ・ブンク」に入所。主に「札幌ドーム」の設計に携わる。 2003年建築設計・音楽企画事務所「スタジオ・シンフォニカ」を設立。「音楽のような建築を…建築のような音楽を…」を目標に、人々が集う空間づくりを目指して住宅や公共建築を手掛けている。建築家として活躍するほか、講演会、コンサートの企画・製作・出演、舞台美術、吹奏楽の指導等、マルチ・アーティストとして高い評価を得ている。2011年5月に脳卒中を患うも、リハビリをしながら活動継続中。2024年に書籍「左手のフルーティスト」(音楽之友社)が発刊。 同時にソロCD「音の建築」を発売。

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