フルート記事
THE FLUTE 147号 Cover Story

いつもベターな状態で、よりよい音楽の表現を

この8月、浜松で開催された日本フルートコンヴェンション。そのメインゲストの一人であるペーター=ルーカス・グラーフ氏に、インタビューを行なった。86歳の大御所でありながら、よりよい音楽表現の追求に余念がないその姿は、コンヴェンションに集った若きフルーティストたちを大いに刺激したに違いない。コンサートで演奏したシュトックハウゼンの曲に施した“しかけ”とは? 同じくメインゲストであったフィリップ・ベルノルド氏との共演で味わった、世代も音楽性も超えて理解し合う体験とは……?コンヴェンション終了後、札幌公演に向かう合間のひとときに話を伺った。
通訳:田原さえ/写真:草野裕/取材協力:ヤマハ株式会社、株式会社ヤマハミュージックジャパン/写真提供:一般社団法人 日本フルート協会

シュトックハウゼンで“成功”を収める

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フルートコンヴェンションでは、お疲れ様でした。参加された感想をお聞かせください。
グラーフ(以下G)
とても大きなイベントでしたが、よく企画された催しだったと思います。素晴らしいフルーティストがたくさん参加していました。すべての演奏を聴くことができなくてとても残念でしたが……。
今回、フィリップ・ベルノルドさんとは初めてお会いしました。彼と共演できたのはとても嬉しかったですし、ゲイリー・ショッカーさんやイアン・クラークさんとも知り合えてよかったです。また、有田正広さんをはじめとする日本のフルート界のスペシャリストとも交流できて、本当に有意義なコンヴェンションでした。私の教え子も各地からたくさん集まり、旧交を温めることができました。こんな機会でもなければ、フルートをやっている仲間といえどもなかなか会うチャンスもないので、そういう意味でも楽しませてもらいました。
ペーター=ルーカス・グラーフ
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日本は今年、とりわけ暑い夏を迎えました。外を歩くだけで焼かれるような熱気を感じる気候が続きましたが、日本にいらしてから体調や演奏のパフォーマンスに何か影響はありましたか?
G
本当に、どこもかしこも暑いですね。そのせいでどこに行っても室内の温度は逆に冷えすぎるくらいになっているので、いつもストールを巻いていますよ。喉や口元を冷やさないようにね。おかげで、体調を崩したりしたことはありません。
日本はどこに行ってもきちんと段取りがされているので、余計な気を使うこともありませんね。皆さんが親切なので、そういうところも体調面でプラスに影響しているのだと思います。(次のページに続く)

次のページの項目
・グラーフより上手に吹ける(!?)
・方向性は違っても……

Profile
ペーター=ルーカス・グラーフ
ペーター=ルーカス・グラーフ
Peter-Lukas Graf
スイス・チューリッヒに生まれる。チューリッヒ音楽院でアンドレ・ジョネに、パリ音楽院でマルセル・モイーズとロジェ・コルテに師事、ウジェーヌ・ビゴーに指揮を学ぶ。ヴィントゥアー市立管弦楽団、ルツェルン音楽祭管弦楽団で首席フルート奏者を歴任。1953年ミュンヘン国際音楽コンクールで優勝。指揮者としては1960年ルツェルン歌劇場でデビューの後、1966年まで同劇場首席指揮者を務めた。『チェックアップ』や『シンギング・フルート』など各国で使用されている著名なフルートの教則本の著者としても知られ、バーゼル音楽院教授としても長く多くの後進を育成してきた。その長きにわたる功績に対してポーランド・クラクフ音楽院より名誉博士号を授与されたほか、イタリア・フルート協会“FALAUT”から“金のフルート賞”、ナショナル・フルート・アソシエーションから特別功労賞を授与されている。ニコレ、ゴールウェイ、ランパルらと共に、20世紀フルートの黄金時代を築いた巨匠は、86歳になった現在もフルート奏者、また指揮者としても世界的に活躍を続けている。
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