フルート記事
THE FLUTE 139 Cover Story|セバスチャン・ジャコー

音楽以外のことをする時間が、音楽表現の活力になる

昨年行なわれた第8回神戸国際フルートコンクールでは、二人が一位を分け合った。その一人、セバスチャン・ジャコー氏が7月に来日。ジュネーブ音楽院の同級生である増本竜士氏が発起人となって、コンサートとマスタークラスを開催。コンサートで共演した小池郁江氏、井坂実樹氏も加えたインタビューを敢行。音楽を続けていくうえで大切なことを語ってくれた。
通訳:福本しのぶ(ハープ奏者) 取材協力:管楽器専門店ダク、写真:土居政則

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今日は大阪からの移動は大変でしたね(注:関西を襲った台風のため、大阪から移動したジャコー氏の到着が2時間半ほど遅れたため)。
ジャコー
そうですね。新幹線がずいぶん遅れてやっと東京に着きました。途中静岡あたりで2時間も止まったんですよ。車内販売もこないからお腹もすいたし、線路がちょうど斜めになっている部分で止まったから身体も斜めの状態で、寝ることもできませんでした。でも無事に着いたのでよかったです。
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今回はジャコーさんと親交の深い増本さん、小池さん、井坂さんにも参加していただきました。みなさんとは世代も少しずつ違いますが、どんなきっかけでお知り合いになったのでしょうか?
増本
まず小池さんと私が東京芸術大学での同級生です。私が卒業後、スイスのジュネーブ音楽院に留学してセバスチャンと同級生になりました。当時私は24歳、彼はまだ15、6歳でしたね。
ジャコー
あと現在プラハシンフォニーのソロ首席を務めているハナ・ボウシュコワの三人がジャック・ズーンのクラスの同級生です。
小池
15歳でジュネーブ音楽院に入学とはずいぶん早いですよね。
増本
僕も後で知ったんだけど、飛び級で、特例中の特例だったらしいです。当時、セバスチャンはまだ子どもで、学校で練乳を食べていたり……そんなエピソードがいっぱいあります(笑)。
井坂
楽器は当時からすごく上手だったんですね。
増本
ものすごく上手かった。ジュネーブ音楽院では学生はディプロマのソリストコースを目指しますが、セバスチャンは1年目の最初のテストで文句なしに合格しました。私とハナは2年目に無事合格しました。
小池
私は2008年にサイトウキネンのオペラ公演でセバスチャンと一緒に吹いたのが、初めての出会いです。井坂さんは?
井坂
私は今、ジュネーブ音楽院に留学しています。ズーン先生のクラスですけど、ときどきセバスチャンがレッスンをしてくれるので、彼は私にとって兄弟子であり、師匠であり……尊敬する人です。
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みなさん、それぞれお知り合いですがアンサンブルは初めてですか?
増本
そうです。ちょうどセバスチャンがサイトウキネンで来日しているということもあって、何かイベントができないかとおもって、小池さんに相談したんです。それで7月19日にマスタークラス、翌日にはこの4人によるコンサートが、管楽器専門店ダクさんのご協力で開催することになりました。

次のページの項目
・練習嫌いだったから母と共に練習
・神戸ではまさかの1位
・好みは古い伝統が感じられる楽器
・縦横無尽な表現で聴衆を魅了

ONLINE限定:取材後記

Profile
サバスチャン・ジャコー
セバスチャン・ジャコー
Sébastian Jacot
1987年スイス生まれ。15歳でジュネーブ音楽院のジャック・ズーン氏のクラスに入学を許可され、2010年に優秀な成績で卒業。2002年から2004年にかけて、スイス青少年音楽コンクールにてフルート部門と室内楽部門、サックス部門で優勝。第8回神戸国際フルートコンクール第1位、オーディエンス賞。2006年から2008年にかけて、香港フィルハーモニー管弦楽団の副首席を務める。2008年よりサイトウキネンフェスティバルで首席奏者を務めており、現在はジュネーブのアンサンブルコントレシャンにて首席奏者を務める。現在、室内楽に力を入れており、4人の兄弟姉妹たちと、母(全員が音楽家)とともに、ヨーロッパ、メキシコ、アルジェリア、香港各地で演奏している。フルートは2014年現在、コーカスウッド製のヘインズ(1999年製)、14Kカスタムメイドのパルメノン、アーツ・グローバル財団の会長ヘザー・デハース氏より贈られた銀のミヤザワの3本を使用中。
増本竜士
増本竜士
Ryuji Masumoto
東京芸術大学卒業後、文化庁在外派遣研修員として渡欧。ジュネーブ音楽院ソリスト課程、ストラスブール音楽院特別専攻科(現代音楽分野)、パリ市立音楽院高等演奏課程(ピッコロ専攻)修了。現代音楽演奏コンクール競楽Vlll第1位・聴衆賞、フルートコンベンションコンクールピッコロ部門第1位、日本フルートコンクール びわ湖第3位・オーディエンス賞。現在、関西フィル特別契約首席奏者、同志社女子大学嘱託講師。
小池郁江
小池郁江
Ikue Koike
東京藝術大学を首席で卒業し、アカンサス音楽賞を受賞。同大学院修士課程修了。アフィニス文化財団の海外研修員として、ミュンヘンに留学。第23回日本管打楽器コンクール第1位、第6回神戸国際フルートコンクール第5位。霧島国際音楽祭、サイトウ・キネン・フェスティバル松本などに出演。札響、都響、東京シティ・フィル、九響などと共演。現在、東京藝術大学、桐朋学園大学、洗足学園音楽大学、各非常勤講師。2002年より都響フルート奏者。
井坂実樹
井坂実樹
Miki Isaka
東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校、東京藝術大学を経てジュネーブ音楽院に留学、2014年卒業。ロームミュージックファンデーション奨学生。第14回コンセール・マロニエ21第2位、第6回ルーマニア国際コンクール第2位(1位なし)。小澤征爾音楽塾に参加。P.ブーレーズ、I.フェデレ、P.デュサパン各氏のコンサートにソリストとして参加し、作曲者本人からの賞賛を受ける。現在フルートをJ.ズーン氏に、ピッコロをJ.パヴリ氏に師事。
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