フルート記事
THE FLUTE 138 Cover Story|The Flute Quartet

吹いていて楽しくない音楽なんてない――この4本の響きにはまだ驚きと発見がある

今年で結成17年目を迎えたザ・フルート・カルテット。国内著名オーケストラに在籍する奏者が集まったこのアンサンブルは、まさに超一流のカルテットだ。
今回はザ・フルートに初めて4人で登場。インタビュー中「長く続かせる秘訣は?」と聞くと驚くことに「ないです」と キッパリ。メンバー全員がその場の雰囲気に柔軟に対応する能力を備えたオーケストラプレイヤーだからこそ、ここまで続けられたのだろう。しかし柔軟とひと言で言ってもそれは簡単なことではない。どんな場にも臨機応変にする力を持っているのは、さすが日本を代表するオーケストラの首席奏者たちだ。しかし、「まだ他の楽器に学ぶことばかりで」といった謙虚な声も各々から発せられた。
今まさに日本を代表する“フルート四重奏団”が語る結成当時の話や、結成17年目の今年挑戦することとは? また、今回のインタビューでは『想い出は銀の笛』の作曲で知られる三浦真理氏も同席。新たに作曲された『ファンタスティック・モネ』の演奏をザ・フルート・カルテットが担当するということで、彼らの出会いや作曲秘話についても聞くことができた。
取材協力: 株式会社教育芸術社、株式会社ドルチェ楽器、写真:土居政則

オーケストラプレイヤーが集まった、夢のフルートカルテット誕生

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ザ・フルート・カルテットは本誌初登場となります。まず結成したきっかけを教えてください。
柴田
私は1994年までドイツにいてオーケストラに在籍し、帰国後もすぐ日本フィルハーモニーに入団しました。オーケストラで他の楽器とたくさんアンサンブルをしていましたが、ある時メロディ楽器であるフルートだけでハーモニーを作ったらどうだろうかと思ったのです。フルートアンサンブルの構造はパイプオルガンと一緒ですから、純正調の綺麗な和音ができるはずだと思って結成しようとしたのがきっかけです。メンバーはまず初期のメンバーだった大村(友樹)さんを誘いました。そして大村くんが神田くんに声を掛けて、神田くんが相澤くんに声をかけたのです。なんだか連絡網みたいですけど(笑)。
メンバーを決めるときに条件にしたのが、いろんな意味で“近い”人。まず年齢が近い、そして性別が一緒、そして活動しているところも一緒。自分となんとなく近いほうがゼロから創り上げるより、ある程度できているのでステップが上がりやすいと思ったのです。
相澤
実は僕だけ出身校がみなさんと違っていたので、話をもらったときは本当に嬉しかったですね。みなさんのことはよく知っていたから「え、このメンバーと一緒に演奏できるの!?」って。
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その時から今のように長く活動する予定だったのでしょうか。
神田
いえ、結成時はJTホール主催のコンサートに出演するという目的だけしかなかったのです。そしたら今度はCDをつくろうという話になり、レコーディングをしました。その後初期のメンバーだった大友くんが抜けてしまって、残りのメンバーで話し合って、代わりのメンバーを入れるなら斎藤和志くんに! ということになったのです。
斎藤
 
それはもう光栄でしたね。
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今年で結成17年になりましたが、長く続ける秘訣はなにかありますか
相澤
いや、ないですね。
神田
長く続かせようとして何か特別な努力をしているわけではありませんし、誰もやめようとは言わなかったので(笑)、気がついたらこんなに長くなっていました。

次のページの項目
・編曲をするといろいろなことに気がついた
・待望の人気アンサンブル曲の次作が発表
・対話する力がとても必要になる
・ONLINE限定:取材後記

 
Profile
 
ザ・フルート・カルテット
The Flute Quartet
1997年東京の4つのオーケストラの4人のフルーティストにより「よっつのふえ」の名称で結成。同年10月にアフィニス文化財団の主催によりJTアートホールにおいて第1 回リサイタルを開催。1999年メンバー自身が編曲したラヴェルとドビュッシーの作品をメインとするCD 「よっつのふえ」(DACD-991)をリリース。2001年「THE FLUTE QUARTET」と改称。これまでに「CHATS」(MM-1108)、「ARCADIE」(MM-1147)、「イタリア組曲」(OVCC-00016)、さえずり鳥ブ口グ(OVCC-00056)、「銀の笛」(OVCC-00097)など多くのCD をリリース。東京における年1 回のコンサー卜の他全国各地でコンサー卜やクリニックを行なう。「ハンドジャーナル誌」2004年3月号の表紙に登場。2007年、大村友樹氏に代わり斎藤和志がメンバーに加わる。
相澤政宏
相澤政宏
Aizawa Masahiro
宮城県出身。9才よりフルートを始める。1989年東京音楽大学3年在学中に東京交響楽団のオーディションに合格、入団する。1991年日本フルートコンヴェンションコンクールで3位入賞。1995年間楽団首席奏者に就任し、以来J.S.バッハ『管弦楽組曲2番』(G.ボッセ指揮)、モーツァルト『協奏交響曲K297b』(H.スダーン指揮)、モーツァルト『フルートとハープのための協奏曲K.299』(大友直人指揮)、モーツァル卜『フルート協奏曲二長調K.314』(V.レニッケ指揮)など同団とはソリストとしても共演を重ね、好評を博している。2004年1月、待望のリサイタルを開催し絶賛を浴びる。これまでにフルートを山元康生、小泉剛、齋藤賀雄、パウル・マイゼンの各氏に師事。現在、東京交響楽団首席フルート奏者、東京音楽大学講師、日本フルート協会理事。アジア・フルート連盟理事。
神田寛明
神田寛明
Kanda Hiroaki
神奈川県出身。1993年東京芸術大学卒業。1995年より1年間ウィーン国立音楽大学に留学。2007年東京芸術大学大学院修了。1991年、日本フルートコンヴェンションコンクールおよび日本管打楽器コンクールにおいて第1位。1992年にはソウルにおいてA.ジョリヴェの『フルート協奏曲』を韓国初演。安宅賞受賞。赤星恵一、金昌国、細川順三、ヴォルフガング・シュルツ、ハンスゲオルグ・シュマイザーの各氏に師事。NHK交響楽団首席奏者。大阪芸術大学大学院客員准教授。東京芸術大学、桐朋学園大学講師。アジア・フルート連盟常任理事。「APPASSIONATA」、「モーツァルト・オペラデュオ」をはじめ多くのCD をリリース。四重奏を中心に二重奏から大編成のものまで40数タイトルに及ぶフルートアンサンブル作品を編曲・出版している。
斎藤和志
斎藤和志
Saito Kazushi
福島県出身。東京芸術大学附属高校を経て、東京芸術大学器楽科卒業。同大学院修了。第5回神戸国際フルートコンクール第4位。第70回日本音楽コンクール第1位。合わせて加藤賞及びE・ナカミチ賞受賞。第4回びわ湖国際フルートコンクール第1位。これまでに、パウル・マイゼン、金昌国、佐久間由美子、中川昌巳、中野富雄、三上明子、村上成美の各氏に師事。東京フィルハーモニー交響楽団首席奏者。アジア・フルート連盟理事。ソリスト、室内楽奏者、オーケストラ奏者、スタジオミュージシャンとして活動中。スタンダードなレパートリーはもちろん、現代の音楽の演奏にも力を注いでおり、現代音楽演奏グループ、東京シンフォ二エッタでは副代表を務め、第68回日本音楽コンクール作曲部門本選における演奏に対し審査員特別賞を受賞。また、自身で作曲、編曲も行なっており、即興演奏も含め、従来の枠にとらわれない多彩な活動を展開している。2006年アリオン音楽財団より奨励賞受賞。
柴田勲
柴田 勲
Shibata Isao
岡山県出身。東京芸術大学卒業後渡独。ケルン国立音楽大学入学。1991年、同大学を満場一致の最優秀賞を受賞し卒業。同年、北ザクセン・アンハルト州立歌劇場管弦楽団に首席奏者として入団。3年間在籍する。1993年、ケルンにおけるソ口リサイタルによりドイツ国家演奏家資格(コンツェル卜・イクザメン)を取得。1994年、6年間に及ぶドイツ生活を終え帰国。現在、日本フィルハーモニー交響楽団フルー卜奏者。クラシック以外の音楽には目を呉れない、純粋なクラシック音楽プレイヤー。
CD information
「アラベスク」
サブタイトル
OVXCC-00108
¥3,000(税別)
演奏:ザ・フルート・カルテット(相澤政宏、神田 寛明、斎藤和志、柴田勲)
曲目:三浦真理:ファンタスティック・モネ、ドビュッシー/神田寛明編:2つのアラベスク、グリンカ/神田寛明編:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲、カステレード:笛吹きの休日、シャカリアン:フルート四重奏曲、ラウバー:コルシカ島の幻影
Score information
 
「ファンタスティック・モネ」
三重奏、四重奏ともA4判、スコア+パート譜
(株)教育芸術社03-3957-1177~9(販売部直通)
各¥4,000(税抜)
作曲者による解説はもちろん、日本を代表するフルートアンサンブル「ザ・フルート・カルテット」のメンバーによる「演奏上のアドバイス」も掲載(三重奏=柴田勲、四重奏=斎藤和志)。
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