三響フルート 木管フルート3種を試奏!
国内フルートメーカーを牽引する三響フルートから、ピンクアイヴォリー(限定生産)とモパネを使用した木管フルート2種が仲間入りする。
長年注目され続けている木管フルートだが、使用する材質によってどんな違いがあるのか、気になっている方も多いことだろう。
そこで今回、すでに販売されているグラナディラを加えた3種の木管フルートを、フルート奏者の西田紀子さん、多久潤一朗さん、竹山愛さんにそれぞれ試奏していただき、お話を伺った。
取材協力:株式会社三響フルート製作所・株式会社プリマ楽器
京都市立堀川高等学校音楽科卒業。東京藝術大学出身。現在シエナ・ウインド・オーケストラ、ピッコロ・フルート奏者。桐朋学園芸術短期大学、および長野県立小諸高校音楽科非常勤講師。
クラシックでの活動の他、都内ライブハウスを中心に、オリジナル曲、即興演奏、フリージャズなどの分野でも活動中。「のなか悟空と騒乱武士」、和楽器フリージャズ集団「蓮根魂」の一員として、地底レコードよりCDをリリース。子供向け演奏ユニット「ザ☆フルーツ」では、メロンちゃんとしても活動中。地元コミュニティラジオ(くるめラ)で、パーソナリティとしても修行中。
無数の特殊奏法や民族楽器の奏法を駆使し自作自演を軸に活動中。東京藝術大学在学時より現代音楽を中心に活動を始め、国内外の作曲家の新作初演を多数手がける。
ソリストとしてもこれまでに新日本フィルハーモニー管弦楽団はじめ数々のオーケストラと協奏曲を共演した。また自身がリーダーを務める次世代型フルートトリオ『マグナムトリオ』は様々な国の音楽祭からオファーを受け招待公演を行なっている。
TV、CMなどのレコーディングも多く、アニメ『鬼滅の刃』米津玄師『パプリカ』映画『海街diary』Nintendo Switch『スーパーマリオ』などのフルート、笛類を担当している。
東京藝術大学卒業、東京藝術大学大学院修士課程修了。学内にて安宅賞、アカンサス音楽賞、三菱地所賞を受賞。ロームミュージックファンデーションの助成を得てミュンヘン音楽演劇大学Zertifikatsstudium Meisterklasseを修了。第79回日本音楽コンクール第1位(併せて岩谷賞)。第26回日本管打楽器コンクール第1位。第8回神戸国際フルートコンクール第3位など受賞歴多数。東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団首席フルート奏者を経て、現在東京交響楽団首席奏者。
Point1 3種それぞれの魅力と特徴
西田 自分の好みを話すと私はピンクアイヴォリーが好きなんですが、一番頑張らないで吹くことができる楽器です。普段呼吸しているときや寝ているときみたいな息で吹くと、ホワっと音が立ってくれる感じが好きですね。息のスピードをかなり落としたところにツボがある気がします。力で押しても何も応えずに、「頑張るなよ~」って楽器に言われちゃう感じ(笑)。
多久 僕の中でピンクアイヴォリーのイメージは、艶ですね。木として少し硬さがあるのと、油感というか、しっとりしたイメージがあります。逆にモパネは一番木っぽい。3本の中でも軽くて、「フゥー」というノイズが一番出しやすいですね。これはシャーリングともまた違うのですが、子音の部分、要するに人が優しく喋るときに少し息を散らす感じが一番実現しやすくて、木のぬくもりを感じられる音色が出しやすいです。軽さと明るさ、そしてナチュラルさがあります。グラナディラは深みが一番あるかなと思います。重みと深みを出しやすいのはグラナディラです。
竹山 私は昨年から何度かモパネを吹かせていただいていますが、モパネは軽さと乾いた感じの音が特徴だと思います。金属で作られたフルートがハイブランドのラグジュアリーな香りだとすると、木管フルートは自然由来のナチュラルな香りや色を愉しめます。明るさという意味では、三響の木管フルートらしさはモパネが一番あると思います。ピンクアイヴォリーは今吹いた感じだと、低音まで結構パキッと鳴って、まんべんなく吹きやすく、この中では艶っぽい印象です。グラナディラは深み。支える位置も下がった、佇まいのしっかりした音楽が合いそうな感じですね。
西田 確かに楽器によって身体の支える位置が変わっていく感覚はありますね。
多久 高:モパネ、中:ピンクアイヴォリー、低:グラナディラ、だよね。
Point2 音程感と吹奏感
竹山 普段使っている金属製とは当てていく息が違い、身体の開き方なども少し変わってきますね。オーケストラの中で吹いてみると、木管フルートのほうが周りとの音質感やピッチ感のやりとりが楽に感じました。というのも先ほどもあがっていたノイズ、響きの成分みたいなものが音に乗りやすいと感じていて、それが面白いなと。いつも使っている三響の14K Goldは艶っぽい要素が多く、逆に音の輪郭を柔らかくするために息を散らしたり、音色の変化を意識したりしているので、その差がよく分かります。シンプルに他の木管楽器と素材が同じだからこそ、一緒に鳴ったときに安堵するのかもしれません。
身体で作っている部分も大きいのではっきりとは言えませんが、音の立ち方や混ざり方が全然違いますね。木管フルートをオーケストラの中でも試験的に吹いていますが、メンバーからも好評です。普段とは聴こえてくる音の柔らかさが違うのだと思います。自分の周辺の音は金属製のフルートのほうがよく聴こえるじゃないですか。だから感覚が違っていてまだつかみきれていないのですが、全体を録音で聴いてみると良い感じの響きにミックスされていたので、周りの方からの評判も良いのかなと思っているところです。
多久 僕はそれこそ昨日、とあるゲーム音楽のレコーディングにグラナディラの木管フルートを使いました。クライアントからは民族楽器のような音で吹いてほしいと言われたのですが、木の楽器の場合ノイジーに吹いてもあまり嫌悪感がないんですよね。金属製のフルートは楽に当たるし息を集めるのも得意なんですけれど、聴いている側はその強い音がストレスになることもあります。その点、木管って安心するじゃないですか。どんなに荒々しく吹いても、“木のぬくもり”みたいな効果になるので、シャーリングがシャーリングにならないんですよね。息を集めて強く吹くというよりかは、広がりで勝負するタイプの楽器です。どんなに強く吹いても不快にならないというところが、非常に実用的な気がします。
西田 木管フルートの音は、1本で吹いているときには、 小さい音かなと感じていたものが、木管五重奏など他の楽器と一緒に吹いたときには、浮かび上がってくる音色の存在感に「え? 音、大きいかも?」と、驚いたことがあります。単純な音量ではなく、その浮かび上がってくる音色に導かれて、アンサンブルの中での自分の立ち位置が見えてくるというか。例えば高音域では、金属製だと「バランス良くこれくらい抑えて」 と吹いていたのが、木製だと思うまま吹いても、周りとのアンサンブルに溶ける。溶けているんだけれど、キラキラした存在感もある。だから、変にバランスを気にせず、気持ちのままに吹けるというか。そういう印象が木管フルートにはありますね。
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