第11回 神戸国際フルートコンクール
若手フルート奏者の登竜門の一つ「神戸国際フルートコンクール」。
前回大会は新型コロナウイルスの影響で全審査がオンラインとなったが、今年は現地神戸での開催が叶った。
取材協力・写真提供:神戸市民文化振興財団
文:谷川柚衣
ー本選結果ー
★1位 Riccardo CELLACCHI リカルド・チェラッキ(イタリア)
★1位 Fabian Johannes EGGER ファビアン・ヨハネス・エッガー(ドイツ)
★3位 藤野瞳子 フジノトウコ(日本)
★3位 Brina UNUK ブリナ・ウヌク(スロベニア)
4位 Anna KOMAROVA アンナ・コマロワ(ロシア)
5位 Franziska Anne FUNDELIĆ フランツィスカ・アンネ・フンデリッチ(クロアチア/ドイツ)
特別賞 Calvin MAYMAN カルヴィン・メイマン(アメリカ)
第1位 リカルド・チェラッキ
第1位 ファビアン・ヨハネス・エッガー
第3位 藤野瞳子
第3位 ブリナ・ウヌク
第4位 アンナ・コマロワ
第5位 フランツィスカ・アンネ・フンデリッチ本選に挑む実力派の6名

本選1人目の演奏は、日本勢で唯一の本選出場となった藤野瞳子さん。協奏曲はアカデミックなスタイルに感じられる演奏が印象的で、アーティキュレーションの魅せ方にはモーツァルトらしい遊び心も窺える。K.アホ『ソロⅢ』はきめ細やかなテクニックで丁寧に奏された。2人目はフランツィスカ・アンネ・フンデリッチさん。モーツァルトとユレルの音楽的な性格の差を明確に聴かせ、まるで演奏会のプログラムを聴いているかのよう。3人目はリカルド・チェラッキさん。オーケストラをバックに際立つ美音と、『Le point est la source de tout…』でのあらゆる特殊奏法の熟練の妙に圧倒される。4人目はファビアン・ヨハネス・エッガーさん。泰然とした面持ちで、確立された音楽性でモーツァルトを華麗に演奏。一柳慧の作品でも持ち前のテクニックと表現力が如実に示される。5人目はアンナ・コマロワさん。弦楽器のように長く伸びやかなフレージングは唯一無二。『Circumambulation』では確固たるテンポキープ力と演劇のような表現力で魅せた。最後はブリナ・ウヌクさん。溌剌とした音色で、洗練され晴れやかなモーツァルトを演奏する。『フルートソロのための「ヨリシロ」』は、特殊奏法も正確に、パワーを生かしながら音楽的に演奏された。
6名それぞれの個性が輝いた演奏には、聴衆からも「ブラボー!」の声が上がった。
入賞者披露演奏会
演奏会は5位入賞のフンデリッチさんによる『モーメンツ』でスタート。歌い方や音色で主体的に場面を切り替えていき、石橋さんが演奏するキレのあるピアノとのアンサンブルを楽しむ様子も伝わってきた。続いて4位入賞のコマロワさんによる『演奏会用小品』。テクニックも音楽の中に溶け込ませ、細かい変化も余すことなく表現。一次審査時にはカットされたピアノの間奏も岡本さんにより演奏され、作品を存分に堪能する。そして3位に入賞した藤野さんの『幻想曲風ソナチネ』の演奏へ。艶のある音色と、体全体をしなやかに使ったスケールの大きい表現力が魅力的だ。その高らかに歌い上げる演奏には心が揺さぶられた。続いて同じく3位入賞のウヌクさんはJ.S.バッハの『ソナタ BWV1030』を演奏。與口さんの精緻なピアノと織りなすように絡み合う。華美なヴィブラートに頼らないウヌクさんの表情豊かな演奏は、彼女の良質な音色も際立たせた。
後半は神戸市室内管弦楽団と優勝者2名により、モーツァルト『フルート協奏曲 第2番』が演奏された。第1楽章はチェラッキさん。パッセージやニュアンスを丁寧かつ精巧に演奏し、トリルや装飾音も自然で鮮やかだ。第2・3楽章はエッガーさんで、ぼやけやすいアーティキュレーションも微細にコントロールされ、心地よく耳に届く。本選よりもさらに自由度が高く、カリスマ性を感じさせる演奏だった。
審査員による「スペシャルナイト・ガラ」
本選前日、審査のため世界中から集まった一流奏者による一夜限りの共演が実現した。ピアノの演奏は、コンクールの共演アーティストでもある、上野円さん、岡本知也さん、鈴木華重子さん。
1曲目はシルヴィア・カレッドゥさんと岡本さんによる、エネスコ『カンタービレとプレスト』の演奏でコンサートは幕を開ける。アンサンブルの妙技が光り、何とも美しい「カンタービレ」と、情熱的な「プレスト」に思わず聞き入ってしまう。2曲目のティモシー・ハッチンスさんと鈴木さんによる『ハンガリー農民組曲』では、ハッチンスさんの内面からあふれ出るような表現と、語り歌うような演奏がホールいっぱいに響く。続くグリーグ『ソナタ第2番』は、アンドレア・リーバークネヒトさん自らが編曲。パワフルでハリのあるフルートと、抜群の安定感がある上野さんのピアノによるアンサンブルだ。前半最後はアンドレア・オリヴァさんと岡本さんで『「フランチェスカ・ダ・リミニ」による幻想曲』。オペラのドラマティックさを彷彿とさせる演奏で、技巧が必要となる場面も軽やかかつ華やかに。会場も大いに盛り上がった。
休憩後はリーバークネヒト、酒井秀明、神田寛明の各氏によるドヴィエンヌ『フルート三重奏曲』。それぞれの音色がバランスよく調和し、第3楽章の各パートの掛け合いでは非常に高揚感があった。『夢と小さなワルツ』はレナーテ・グライス=アルミンさんと上野さんで。深みと哀愁のある音色がピアノの和音に溶けていくような「夢」と、音のディティールが場面ごとに変化する「ワルツ」を味わう。マルタン『バラード』を演奏したのはミヒャエル・ファウストさんと鈴木さん。冒頭、フルートもピアノも静かに忍び寄るような表現が魅惑的で、中盤のCadenzaはファウストさんによってグラデーションのようになめらかに奏された。そしてクロンケ『二匹の蝶々』を演奏するのは、オリヴァさん、カレッドゥさん、岡本さん。作品の愛らしさが伝わってくる演奏で、ステージ裏で控える審査員たちも踊っていたのだとか。最後は神田さん編曲の『羊は安らかに草を食み』を、9名の審査員全員と鈴木さんで演奏。酒井さんのバスフルートと、神田さんのアルトフルートが演奏にさらなる厚みを持たせ、澄み切った暖かい響きに会場が包まれた。

ぜひとも会場で聴きたいコンクール
コンテスタントの個性豊かで魅力あふれる演奏の数々、そんな彼らの音楽表現を的確に汲み、ともに素晴らしい演奏を聞かせてくれるピアニストの方々。本選では神戸市室内管弦楽団の伴奏でコンテスタントの協奏曲を聴くことができた。そしてこのコンクールには国内外から様々な方が来場するが、運営・スタッフ陣による万全なサポート体制があるからこそ、誰もが安心して開催期間を過ごすことができる。
まさにすべてがハイレベルなので、ぜひ現地で生演奏を聴き、その空気感に触れることをお勧めしたい。
〈表彰式〉

















