フルート記事 【FLUTE ONLINE限定】ドニ・ヴェルスト氏が選ぶランパル 至宝の名盤20選
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没後25年 巨匠ジャン=ピエール・ランパルが遺した音色

【FLUTE ONLINE限定】ドニ・ヴェルスト氏が選ぶランパル 至宝の名盤20選

MUSIC
[この記事の目次]
1│1.〜5.
2│6.〜12.
3│13.〜20.

209号連動企画として、「ジャン=ピエール・ランパル協会」の会長、ドニ・ヴェルスト氏がランパルが残した何百という録音物の中から、必聴盤とも言うべき20タイトルを選んでくれた。本誌の内容と合わせ読むと、その魅力がより伝わるため、ぜひ本誌特集と合わせてチェックして欲しい。
文:ドニ・ヴェルスト

 

DENIS VERROUST(ドニ・ヴェルスト)
ブール=ラ=レーヌ公立音楽院、サン=モール=デ=フォセ地方音楽院卒。フルートをピエール・ポーボン、イダ・リベラ、レジス・カル、フランシス・ギャバンに師事。1980年からパレゾー音楽院で教鞭を執る。演奏、教育、音楽学的研究を並行しながら、欧米各国で招待公演や講演を行ない、ジャン=ピエール・ランパル、クラウディ・アリマニー、フィリップ・ベルノルドらと共演、録音も行なう。雑誌寄稿や著作も多く、1991年には『ジャン=ピエール・ランパル 半世紀の録音』を出版。2000年までの10年間、「トラヴェルシエール・マガジン」の編集長を務め、2004年までのおよそ15年間「ラ・トラヴェルシエール協会(仏フルート協会)」の会長を務める。1996年から2025年まで「フランス・フルート・コンベンション」を組織するなどフルート界の発展に大きく寄与する。
現在は、2005年に設立したジャン=ピエール・ランパル協会(AJPR)の会長を務め、同協会のレーベル「プルミエ・ホリゾン」を主宰。2022年にはランパルの伝記『普遍のフルート奏者』を刊行した。これまでに約200タイトルの再発事業を牽引し、代表講演「ランパル:現代のヴィルトゥオーゾの始祖」は世界各地で40回以上開催。さらにマクサンス・ラリュー、オーレル・ニコレ、ピーター=ルーカス・グラーフ、アラン・マリオン、ロジェ・ブルダン、アンドラーシュ・アドリアンら巨匠を扱った研究と執筆、再発盤のリリースも行ない、その講演ではエマニュエル・パユ、アンドラーシュ・アドリアンらとともに登壇している。

 
 

ジャン=ピエール・ランパルの録音はどれも素晴らしい完成度を誇りますが、そのなかにはまさに “至宝” と呼ぶべきものがいくつか存在します。ここでは、泣く泣く厳選しながらも、ジャンルや編成の異なる 20タイトルを選びました。もちろん、この“珠玉の20枚”は人によって異なるでしょう——とはいえ、多くの録音がほぼ満場一致で名盤と認められるものばかりです。今回はあえて、比較的知られていない録音を優先して取り上げています。なお、記載されている年は録音年を示しています。

1.〜5.

1.「W.A.モーツァルト、F.シューベルト、C.ドビュッシー」

共演:リリー・クラウス
EDUCO(1953)/Premiers Horizonsより再発

若きランパルと、ピアノ界の巨匠——とりわけ当時“モーツァルト弾き”として絶大な評価を受けていたリリー・クラウスとの出会いが生んだ録音。なかでもモーツァルトの《ソナタ KV454》は、端正でありながら深い情感が凝縮された、まさに名演と呼ぶべき仕上がりだ。

 

2.「RECITAL POUR FLUTE ET PIANO—W.A.モーツァルト、M.クレメンティ、J.フランセ、W.ピストン」

共演:ロベール・ヴェイロン=ラックロワ
BARCLAY(1955)

ランパルの多彩さが際立つ、この上なく美しいリサイタル。珍しい作品も多く取り上げられ、さまざまな作曲家のスタイルを鮮やかに描き分けている。とりわけジャン・フランセの《ディヴェルティメント》は、洗練と妙技の極致と言える名演。

 

3.「フルートとオーボエのための協奏曲集—J.ハイドン」

共演:ピエール・ピエルロ
CRITÈRE(1961)/Accord・Universal(Vol.1再発)
また CBS(1984)/Sony再発

ランパルとピエール・ピエルロの共演は、音楽的な“対話”がいかに豊かであるかを教えてくれる。完璧を超えた呼吸と響き合い——そしてシンプルな楽章でさえ、二人の手によって驚くほどの輝きを放つ。

 

4.「フルート・ソナタ全集—J.S.バッハ」

 

ERATO(1962)/Warner・Erato(Vol.1 再発)**

バロック演奏革命の後も、決して色褪せることのない録音というものがある。このランパル盤はまさにその代表格で、ダニエル・マドレーヌによる録音技術は驚くほど美しく、今なお特別な輝きを放つ。1960〜70年代の若いフルーティストたちが、当時の“電蓄”で何度も何度も聴き返した——そんな時代の息づかいまで蘇る名盤だ。批評家ジャン=シャルル・オフレレの言葉を借りれば、「バッハ、それは永遠の光だ」。

 

5.「フルートと弦楽のための6つの四重奏曲 Op.5—J.ハイドン」

共演:トリオ・ア・コード・フランセ
PATHÉ(Discophiles Français, 1963)/Warner・HMV 再発**

優雅さと音楽の喜び——その両方が極限まで磨かれた録音。ハイドンの軽妙さと気品を、ランパルとフランス弦楽トリオが完璧な調和で描き出した名演。

 
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