サックス記事

神崎ひさあき Come to me! │ 第5回

This issue’s Guest:山田敬三さん(ヤナギサワ・クロッシュ)

相手の本気に対して本気で応えなくちゃいけないということを教えられた

神崎さんの楽器の調整法で、市販の楽器とは違っている部分はあったりするのですか?
山田
特別に変えている部分はないですね。新しい製品が出ると試奏して、良さそうだったら使ってみる、という感じで。ただ楽器の調整の部分では神崎さんにいちばん合う方法というのがあって、そこは細かくやってます。
神崎さんは、山田さんに調整をお願いする時に、特に気をかけている部分などはありますか?
神崎
自分の楽器は吹いた時の感じですぐに状態がわかるし、楽器の調子が悪くなる部分もだいたい決まっているし、山田君とは長いから、楽器を預けたら「よろしく」って言ってあとは散歩に出て行ってます(笑)。それでできたら連絡をもらって、吹いてみて、早ければものの10秒くらいで「OK」って。
神崎さんが楽器に対していちばん重視する部分は、どういうところですか?
神崎
吹奏感ですね。吹いていて気持ちがいいかどうかという。
実際のリペアは、どれくらいの期間でやっているのですか?
神崎
気になったら常に直してもらってます。だから僕は他の人よりもお願いする回数が多いんじゃないかな。
山田
そうですね。わりとこまめにいらっしゃいます。ライブがある時は必ずその前に来ていただいていますね。
一般的にはどれくらいの期間で見てもらうのがいいんでしょうか?
山田
吹く頻度にもよりますが、毎日吹く方は、2〜3ヶ月に1度はリペアマンに見てもらうことをお勧めしますね。
神崎さんのリペアをやって、印象的だったことはありますか?
山田
今でもいちばん肝に据えているのは、特にプロの方は、1回のライブや1回のお仕事に人生をかけていらっしゃるんだということです。だからその時に、こうして欲しいと言っておられることに対しては、誠実に応えなくちゃいけない。神崎さんに「オレはそこに100パーセントで行かなきゃいけないから、そっちの都合でそうならないのは困る」って言われて、その言葉はずっと残ってます。忙しいからとか、こちらの都合で判断するのではなくて、その人の本気に対してこっちも本気で応えなくちゃいけないということを教えられました。
神崎さんのバンドの昔のメンバーの方たちは、神崎さんによく怒られたと言っていたんですけど、山田さんは怒られたことはありますか?
山田
怒られたというよりは、最初の頃は僕も若かったので、ここはこうしなきゃいけないとかいった、技術者としての思い込みがあったんです。それを神崎さんに押しつけようとすることもありましたし、それで言い合いになったりすることもありました。でもやっていくうちにいろいろとわかってきて、神崎さんに育てていただいたという気持ちもありますし、リスペクトしています。
神崎
僕のほうが怒られたよ(笑)。
山田
楽器のお手入れをちゃんとやってくださいね、と(笑)。
神崎
30年の付き合いだし、僕も山田君も正直に言い合えるからね。ただの友人だったら関係が壊れることもあったかも知れないんだけど、彼は僕の楽器を理解してくれているし、僕のことを理解してくれると思っているから、ずっと関係が続いてるんだよね。僕にとって楽器は体の一部だから、楽器の調子が悪いと体や精神まで調子が悪くなってしまうんです。例えばスポーツ選手には、パーソナル・トレーナーのような人が付いているじゃないですか。山田君はもう30年くらい僕の楽器の面倒を見てくれているので、僕のことを一番よく解ってくれている人であり、自分にとってはお医者さんであり、トレーナーのような存在です。
 

 

〈訃報〉
本連載の第3回と第4回にゲストとして登場予定で、直前までスケジュールを調整してくださっていた土岐英史さんが、去る6月26日に逝去されました。慎んでご冥福をお祈りいたします。
神崎氏が寄せた土岐さんへの追悼コメントは本誌P.19に掲載しています。

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