サックス記事

ミュージシャンのトレンド雑記 in N.Y.C

THE SAX ONLINE 連載 第1回│馬場智章

読者のみなさんこんにちは、サックス奏者の馬場智章(通称:ババやん)です。
今回から数回にわたりニューヨークの音楽のあれこれ、そうじゃないお話もさせていただくこの連載企画として“ババやんの、なまらなジャズ雑記”をお届けします!
今回は「僕がなぜニューヨークを選んだのか?」「ニューヨークでの若手ミュージシャンのサバイバル生活」「ニューヨークのジャムセッション事情」などお話していきたいと思います。
そもそも、アメリカの音楽シーンと一言で言っても、それぞれの地域によってそれは大きく異なります。例えば、ディキシーランド、ニューオリンズスタイル、ジャズ生誕の地でもあるニューオリンズ。ブルースの街シカゴ。エンターテインメント、映画音楽など。とにかくスケールの大きいロサンゼルスといった具合にとにかく千差万別。自分のやりたい事によって住みたい街も変わっていきます。

Monterey Next Generation Jazz Festival

約10年前に渡米し、ボストンにあるバークリー音楽大学に入学した僕はとにかく演奏がしたくて、ジャズを追求したくて、ありとあらゆるジャムセッションに参加したりライブを観に行ったり、レッスンを受けたりしました。
バークリー音楽大学は大きな学校で、世界中から音楽の勉強をするためにたくさんの生徒が集まり、一緒に作品作りをしたり、演奏のお仕事をしたり、時には学校が企画した演奏ツアーに参加したりもします。学生生活編はいずれまたの機会に……


そんな学生生活を通して、僕はもっと色んな人と演奏して作品作りをしてみたい。僕の音楽を通して、ファッションや映像アート、ペインティングアートなど他のアートシーンの人達とも作品を作ってみたい。という想いから、とにかく多種多様な人が集まり”動き続ける街ニューヨーク”を自分の次のステージに……。


Tomoaki Baba Quintet at Wally’s Jazz Club in Boston

ニューヨークにそびえ立つビルより高い壁

地図上では隣町のように見えるボストンとニューヨークも実際に車を走らせると片道4時間!日本でいうとトンカツが味噌カツになるくらいの距離になります……周りはまったくの知らない人達、新しいコミュニティーに飛び込んで行くことに。
バークリー音楽大学を卒業し、ニューヨークに引越した僕が最初にしたことは、とにかく知り合いを増やそうとジャムセッション巡り。ニューヨークのジャムセッションは大きく分けて、ジャズクラブで開催されているもの、レストランやバーの片隅でBGM代わり(演奏の熱量はBGMの域をはるかに超えていますが)で行なわれているもの。そしてその中で気の合うミュージシャンと個人的に行なう自宅セッションなどがありますが、右も左も分からない僕が最初に向かったのは、ニューヨークのジャムセッションといえばここ!と言われるようなジャズクラブ”Small’s Jazz Club”
Small’s のジャムセッションは3ステージあるライブセットの後、毎日深夜1時から3時過ぎまで。ここには新進気鋭の学生ミュージシャンから仕事が終わって遊びに来たミュージシャン、さっきまでステージで演奏していたミュージシャンまで沢山の猛者が集まり、一度ステージに上がれば学生だろうが大御所だろうが関係なく一緒に演奏をします。マイクもいらない会場で憧れのミュージシャンがどんな音で、どのように、何を演奏するのか、彼らの音一音の振動を全身に浴び、自分がニューヨークにいることを実感しました。街の至る所で音楽が聞こえ、音楽は生活の一部といっても過言ではないニューヨーカーの生活。Small’sなどのお店は比較的安価なこともあり、音楽を聴きながらお酒を飲みたい人などが集まり、ジャムセッションといっても目の前には沢山のお客さんで溢れかえりステージを見つめます。ステージの周りには自分の出番を待ちわびる若手からベテランまで沢山のミュージシャン。バーカウンターには音楽雑誌やCDでお馴染みの有名ミュージシャン。演奏出番の時にはもう緊張はMAX、脚はガクガク、喉はカラカラ、楽器の持ち方ってどうだったっけ……そんな中での初セッション。正直どんな演奏であったかまったく覚えていませんが、その後Small’s で新しい友人達と飲んだ5ドルのビールはとても美味しかったのを覚えています。
こうして徐々に僕のニューヨーク生活は動き出しました。

夜中3時に繰り広げられる 1時間のBlues

“どんな人が集まるの?”
“どんな空気感なの?”
“ニューヨークのジャムセッションってどんな曲を演奏するの?”

ニューヨークのジャムセッションについて様々な質問をされることが多いので、今回は少しそのお話をしようと思います。
ジャムセッションにはどんな人が集まるのか?これはジャムセッションが開催されている場所によって少し変わってきますが、ほとんどは若手ミュージシャンが腕磨きや輪を広げるために足を運ぶことが多いです。中にはニューヨークならではの体験ができるジャムセッションも。例えば先程登場したSmall’s Jazz ClubがあるWest Village と呼ばれるエリアには Blue Note NY、Village Vanguard、55 Bar、Zinc Bar、Fat Catなど有名ジャズクラブが集まります。Small’s と同様にZinc Bar、Fat Cat などのお店でも深夜にジャムセッションが開催されており、学生や若手ミュージシャンはお店をハシゴし腕を磨きます。
沢山のミュージシャンが代わりがわり演奏をする中、このエリアでは有名ジャズクラブで演奏を終えたミュージシャンや仕事が休みだったミュージシャンが多くお店を訪れ、若手に混じり演奏を繰り広げることもしばしば。僕自身もそうしたジャムセッションの場で沢山のミュージシャンと演奏をすることができました。
中でも最も印象的だったのがRoy Hargrove(Tp)氏。時に厳しく若手に檄を飛ばし、良い演奏をすれば「Yeah man」と声を掛ける、僕も一緒に演奏をした際に声を掛けてくれたRoyに勇気を振り絞り質問を投げ掛けたところ、少し近寄りがたいオーラとは裏腹に親切に答えていただき、最後には「良い音してるから、自分が吹きたいことをまっすぐ吹けよ」と励ましてくれました。尊敬するミュージシャンがまっすぐ音楽に向き合っている姿を目の当たりにして、若手ミュージシャン達が張り切らないわけがありません、もしかしたらそこで演奏を気に入られ仕事が舞い込んでくることもあります。
一人一人が緊張感を漂わせながら全力の演奏をし、そしてそれを聞くミュージシャン。お客さんもその熱量に応えます。“良い演奏”=“上手な演奏”ではもちろんなく、その人の音が伝わってくるか、音に惹き込まれるか。良い演奏にはさっきまで大きい声で話していた人も思わず耳を傾け、演奏後には有名ミュージシャンだろうが、Tシャツ短パンの学生だろうが関係なく大きな歓声で応えます。逆に演奏がイマイチだと本当に無反応で声を掛けられることはありません…… 僕も悔しさで何度ため息を吐いたことか……(笑)
そんな厳しいジャムセッション。ピリピリした空気が流れているように聞こえますが、そこにはお客さんのミュージシャンに対するリスペクト 、向上心など音楽への熱い情熱が溢れる空間で音楽に対してとてもフェアだなと感じます。そんな沢山のミュージシャンの熱い演奏が時に1曲1時間にも及ぶ 地獄のBluesへと変貌を遂げることも……(リズムセクションのみなさんご苦労様です)


New York Japanese Jazz Festival 2019

 

ババやんのCheck in the N.Y.C ✔︎

このコーナーは、僕が感じたニューヨークらしさや、流行りのものをご紹介するショートコーナ。
今回はニューヨークのジャムセッションで頻繁に演奏される10曲をまとめてみました。ぜひみなさんもジャムセッションで挑戦してみてください!

頻繁に演奏される10曲まとめ
-Alone Came Betty
ミディアムスウィングといえば

-Alone Together
迷ったらこの曲の出現率UP

-Con Alma
グルーブを変える、転調をするなどその場でアレンジも……

-Cyclic Episode
難しいコード進行ですね……

-I Mean You
セッションの最後にみんなで元気に演奏します

-Invitation
Swing feelに飽きるとこの曲が登場します

-Milestones 〜old version~
美しいメロディーとサビの転調が良い

-Minority
ゴリゴリ系Swing、長くなる傾向があります……(笑)

-We See
Thelonious Monkの曲で選ばれるTop 3

-What Is This Things Called Love
NYではテンポ速めで演奏します

いかがでしたでしょうか?“ババやんの、なまらジャズ雑記”  次回の予告トピックは

 

「ニューヨークのジャズに流行はない!?」

 

また、今後はみなさんの気になること、知りたいことなどニューヨークのお話以外にも様々なトピックをお送りできたらと思いますので、今後もお楽しみに!

次回より毎月17日に記事リリース予定!

 

馬場智章

Tomoaki Baba

992年北海道札幌市生まれ。 ミュージシャン / サックス奏者 / 作曲家 / アートプロデューサー2000 年より発足した 札幌ジュニアジャズスクール に 2000〜2009 年まで在籍し、日豪文化交流プロジェクトで世界的なコンサート ホールであるシドニー•オペラハウスや、横浜ジャズプロムナード等で演奏。2005 年タイガー大越氏により開催されたバークリー音楽院タイアップの北海 道グルーブキャンプを受講し、最年少で『バークリーアワード賞』を受賞、ボストン、バークリー音楽院サマープログラムに 2007〜2009 年奨学生として参加。2010 年 Terri Lyne Carrington (ds) が指揮する Berklee summer Jazz workshop のメンバーに選抜され奨学生として参加。2011 年、バークリー音楽院に全額奨学生として入学以来、Tiger Okoshi (tp), Terri Lyne Carrington (ds), Dayna Stephens(sax), Terrence Blanchard (tp) Bill Pierce (sax) Jamie Callum (vo) Sean Jones (tp)と共演,Next Generation Jazz Festival, Newport Jazz Festival をはじめとする多くのステージで演奏する。また在学中に バークリー音楽院より3度にわたり優秀賞受賞。日本国内では2013年南郷ジャズフェスティバル出演、2014 年 Sapporo City Jazz Music Tent Live にて『TOKU&小沼ようすけ』、『Fried Pride with Gast Walzing』にゲスト出演、2015 年 8月に TOKU“Dear Mr. Sinatora”のツアーに参加。2016年 4月よりリニューアル放送を開始したテレビ朝日"報道ステーション"のテーマ曲を自身も所属するバンド " J Squad "で手掛け、同年11月に UNIVERSAL MUSIC JAPANよりアルバム”J-Squad ”をリリース。同バンドで Blue Note Tokyo、Fuji Rock Festival 17 をはじめとする全国6都市で公演を行い、TAKEO KIKUCHI と共同でJ-Squadの衣装のスタイリングも担当する。2020年 1月、自身初のリーダーアルバム ”STORY TELLER” をリリース。2016年2月より拠点をニューヨークに移しライブ活動を行いながら、音楽と多ジャンルのアートシーンとのコラボレーションプロジェクトのプロデューサーとしても活動中。