THE SAX 72号 特集1 〜 JAZZ編 鈴木央紹

バラード奏法の極意〜JAZZ〜鈴木央紹

まずは、バラードのイメージが最も湧きやすいジャズのジャンルから、人気テナープレイヤー鈴木央紹氏に登場してもらった。ジャズの「バラード」と一言でいってもそのスタイルは多岐にわたり、歴史と共に変化を遂げている。スタイルが変わればおのずと奏法も変わり、どの奏法をどれだけ取り入れるかは演奏者のセンスによって決まるようだ。自分がバラードをどう歌いたいか、それを頭に置いて吹くことで取り入れる奏法が自然に見えてくるだろう。ここでは、THE SAX72号に掲載したインタビューの一部と、譜面『Nearness of You』と連動した動画レッスンを公開しよう!

 


JAZZ  Hisatsugu Suzuki
どう歌いたいのか、そのイメージを持って吹くことが大切

鈴木

ーージャズには様々なスタイルのバラードがありますね。

鈴木:そうなんです。コールマン・ホーキンスやスタン・ゲッツなどが演奏してきたオールドスタイルと、ジョン・コルトレーン以降ではテンポもまったく違います。

 

ーーそのオールドスタイルだと、どう演奏しますか?

鈴木:音のしゃくりと装飾音、それにヴィブラートが多いとオールドスタイルになります。有機的というか、世俗的な雰囲気になりますね。こうした奏法をどう使うかは、演奏者の個性やセンスによりますね。僕の場合、装飾音はつけ過ぎるとうるさく聞こえるので、フレーズの最後に伸ばす音の前や、フレーズの入口に軽くつけます。どちらにしても速くではなく、ゆっくりタラーッとです。ヴィブラートやしゃくりも、僕はあまりつけません。

 

ーーアップテンポやミディアムのナンバーを吹く時と違う点はありますか?

鈴木:アーティキュレーションやアクセントの付け方は柔らかくなります。バンド全体の音量も小さくなるのでアクセントが多用されたフレーズを吹かなくていいし、リズミカルなアプローチは少なくなります。

 

ーー特にテナーですが、サブトーンは多く使いますか?

鈴木:バラードでは基本的に全編サブトーンで吹きます。特にテナーで吹く時、低音になるほど使う率は高くなります。サブトーンは、顎を通常より引いて、息と音の量を舌の位置でコントロールします。舌は少し前に出て、リードに当たるか当たらないかぐらい。低音にいくにつれて、舌が前に出ます。リードを噛む圧力も少し弱くなって、下唇のクッションを柔らかい状態にします。顎をひく感覚です。フレーズによっては、もちろんクリアな音も混ぜます。強調したいところや盛り上げたいときは、サブトーンよりクリアな音のほうがメッセージ性が高くなりますからね。

 

ーーバラード演奏で大切なことは何でしょうか?

鈴木:イメージを持つことです。歌うように吹くのはもちろんですが、囁くように歌うのか、朗々とか、クールにか、ほそぼそと歌うのか。漠然としたイメージでいいので、そのコンセプトを持って演奏することが大事です。それで息の使い方も自然に変わるし、使う奏法もわかってくると思います。

 

 


鈴木央紹

鈴木 央紹(すずき ひさつぐ)

1972年11月22日大阪府出身。4歳からピアノ、10歳からサックスを始める。16歳から地元のジャズ・クラブなどで演奏し、17歳で“AXIA MUSIC AUDITION”インストゥルメンタル部門グランプリを受賞。大阪音楽大学サックス科卒業後、2005年に上京。日野皓正、ZARDなどと共演し、2006年に大野雄二 & Lupintic Fiveに加入。2009年に初リーダー作「Passage Of Day」をリリース。現在も、ソロや様々なセッションで活躍中。


■使用楽器:セルマー マークVI
マウスピース=デイヴ・ガーデラ(ブランフォード・マルサリス・モデル)
リード=リコ ジャズセレクト3Hファイルド

http://www.hisax.net/

 


鈴木央紹

★試聴音源 (外部サイトに飛びます)
鈴木央紹『Standards++』試聴音源(外部サイト:T5 JAZZ SoundCloud)
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