サックス記事

バラード奏法の極意〜CLASSIC〜平野公崇

THE SAX 72号 特集1〜CLASSIC編 平野 公崇

ポピュラー音楽のジャンルとはバラードの概念が異なるクラシック。クラシックサックス界の寵児、平野公崇氏にレクチャーしてもらおう。クラシックサックスは、ストイックなまでに奏法を限定して音色を磨き上げる印象が大きい。しかし奏法にはそれぞれ、音楽の内面を伝えるための理由がある。もっと歌い、語るための基本も伝授してくれる。 ここでは、THE SAX72号に掲載したインタビュー記事の一部と、譜面『展覧会の絵 第2曲 古城』と連動した動画レッスンを公開!

 


CLASSIC  Masataka Hirano
バラードは「物語」。語りたいことをいつも明確に

平野公崇

ーークラシック音楽で言う「バラ―ド」の定義を教えてください。

平野:元々、バラードとはヨーロッパ中世で吟遊詩人たちがギターを片手に語りながら旅をしていたところから始まる音楽。メロディックなだけでなくストーリー性があることが特徴です。それがロマン派のあたりから器楽曲になって演奏され始めた。最初は“バラッド”と呼ばれ、スローテンポの曲という意味はなかったのですが、だんだんと混同されたようですね。

 

ーークラシックとジャズでタンギングの違いはありますか。

平野:クラシックは音のスタートにあまり表情をつけないのが特徴です。思うに、一つの音が次の音に移り変わることで表情や感情が生まれてくるので、出だしの音ではなにも始まっていないから、なにもしないのでは。ですからタンギングはあまりしない。そしてこれはクラシックの暗黙の了解ですが、たとえばアクセントをつけるなら音量を上げない、というように、一度に1つしかやってはいけない、という決まり事があります。その状況で何をチョイスして使うかが見せ所でもありますね。

 

ーーバラードの歌い回しで気をつけていることは何でしょう?

平野:ゆっくりの曲には2つテンポがあります。ひとつは伴奏などの全体のテンポ、もうひとつは奏者の感情のテンポ。穏やかな時は伴奏のテンポより感情のテンポが遅いけれど、高揚してくると速くなる。そのズレを使って歌っています。これはピアノや歌なら誰もがやっていることです。それと音程の正しさですね。合っていればいいというものではなく、音が次の和音にピタッとハマることで感動する、そういう和音に対する感覚を持っているかどうかが問われます。

 

ーーTHE SAX72号本誌には、『展覧会の絵 第2曲 古城』の楽譜を掲載しています。平野さんもオーケストラで演奏された経験を何度もお持ちですが、演奏アドバイスをお願いできますか?

平野:この曲は作曲家が亡き友人を思って作ったものだと言われています。『古城』は終始、Abのベース音がずっと根底にあり、その上で和音が変化するという構造なので、メロディの中の違和感のある音も、解決して安定する音も、すべてがAbに関係してきます。7~15小節まではずっと同じ息で、ふにゃふにゃと抜けてはいけません。ラストは悲しさや残念さを感じる旋律で、弦のメロディの中に埋もれていくような小さな音になります。演奏する時は、深い霧に沈む古城をバックに吟遊詩人が歌っている風景を思い浮かべてください。

 

 


平野 公崇(ひらの まさたか)

東京藝術大学卒業後、パリ国立高等音楽院に入学、サクソフォン科、室内楽科、即興演奏科を最優秀の成績で卒業。在学中にJ.M.ロンデックス国際コンクールを制し、日本人サクソフォニストとして初の国際コンクール優勝者となり、鮮烈なデビューを飾った。斬新な企画を生み続けるその活動は常に注目されており、04年には、読売日本交響楽団と自作の共演も行なう等、クラシックから現代作品、即興、ジャズまで幅広いフィールドで活躍。また、2011年にデビューした「ブルーオーロラ サクソフォン・カルテット」は、今秋に2nd作「Blue BACH」に続く3枚目となる最新CDをリリース。10月末には、「ハバネラ・サクソフォン・カルテット」との共演も予定されている。

■CD Information
「和樂」
【OVCC-00117】
[演奏]ブルーオーロラ・サクソフォン・カルテット
(Ss/平野公崇、As/田中拓也、Ts/西本淳、Bs/大石将紀)
[収録曲]和(雅楽):平野公崇、津軽三味線:日本民謡、赤とんぼ:山田耕作、江戸の子守唄、ずいずいずっころばし:日本民謡、日本組曲:グスターヴ・ホルスト(arr.平野公崇)、金色の魚:クロード・ドビュッシー(arr.平野公崇)、ペンタグラム:坂井貴祐、黎明の空へ:鈴木歌穂、野薔薇:山田耕作、てぃんさぐぬ花:沖縄民謡

平野公崇CD
 

 

 

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