サックス記事 元晴 10年の軌跡を辿る初のベスト盤が完成したDEATH JAZZバンドのフロントマン
  サックス記事 元晴 10年の軌跡を辿る初のベスト盤が完成したDEATH JAZZバンドのフロントマン
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THE SAX vol.62 Cover Story

元晴 10年の軌跡を辿る初のベスト盤が完成したDEATH JAZZバンドのフロントマン

ARTIST

現メンバーの6人が揃って今年で活動10年目に突入した日本が世界に誇るジャズ・バンド SOIL & “PIMP” SESSIONS。そのフロントを担うサックス奏者といえば、もちろん元晴だ。前号で10周年アニヴァーサリー企画第3弾として登場したニュー・アルバム「CIRCLES」について応えてくれたのに続き、本号ではアニヴァーサリー企画第4弾となるキャリア初のベスト盤「“X” Chronicle of SOIL & “PIMP” SESSIONS」を題材にグループの軌跡、そして楽器のこと練習法のことなど、大いに語ってくれた。
(文:櫻井隆章 / 協力:ビクターエンタテインメント株式会社)

アルバムジャケットの「X」は実は「∞」

元晴
僕たちが活動をはじめた頃のパワーの起源のひとつに、当時のジャズの楽しみ方に対してのアンチテーゼ的な思いもあり、その反面、クラブシーンや一般リスナーのジャズへのオープンな姿勢に夢は拡がっていた。それと、日本で生まれるジャズは、他のどの国にも無いオリジナリティを秘めてるって思いもありました。今ほど簡単にネットで情報が入らなかった時代に、アメリカとヨーロッパの情報が等しく入ってくる東京は、当時、間違いなく最先端な都市だったし、それと、やっぱり日本人は独特な感覚を持っていると思うんですよ。まあ、半分は単純にもっとみんなで楽しみたい! みんなで踊りたい! ということなんだけど(笑)。すぐに反応してくれたのが若いミュージシャンや、普段ジャズを聴かなかった国内の音楽ファンであり、ヨーロッパのジャズ・シーンでした。

そう、旧来の感覚で言えば、確かに彼らの音楽はジャズという言葉が持つ範疇には収まり切らない。形容されるように「爆音」であり「パンク」、そして「デス」なのである。

元晴
僕たちは、ジャンルの壁を壊し、人種の壁、国境の壁、世代の壁、思想の壁とかあらゆる壁を壊したいとも思っていた。お互いを認め合う為にね。だから、たくさんの街に、たくさんの国に行くことになったと思うし、行ってみたら最初から壁が無かったことのほうが多かったですしね(笑)。だから、当初は精神的にはパンクだって思ってたし、カバー曲をパンキッシュにプレイしたり、ロックなアレンジにしたり。それが自分たちらしいと考えてやりすぎると、今度は自分たちらしさを追求するあまり、逆に『ソイルらしさ』という壁を自分達で作っちゃったりして(笑)。そうなってくると、またその壁を壊すという、ね。ただ、音楽的には、とにかく、僕たちは何がカッコ良いと思ってるのか、そこをメンバー間で刺激しあい、成長してきたから10年同じメンバーでこれたと思います。

この「カッコ良さ」は、彼らの出す音のみならず、彼らのステージ・パフォーマンスや衣装などにも反映されている。実に個性的なメンバーたちが、それぞれの個性を最大限に発揮する衣装とパフォーマンスに徹しているのだ。また、このカッコ良さは、すべての制作物にも及ぶ。今回のアルバム「”X” Chronicle……」のジャケットは、その「10」を意味する洋数字「X」を表している。「あぁ、なるほど。10だからXね」、である。ところが、話はここで終らない。このアルバムを手にして、畳まれた内ジャケットを広げてみると、この「X」に見えたデザインが、実は「永遠、無限」を表す記号である「∞」のクロス部分であることが判るのだ。これに気付き、発見した際の筆者の感想も「カッコ良い!」なのであった。実に良いアイデアであり、彼らの信条を見事にジャケットにしたデザインだと思わずにはいられない。

 

常にリニューアルしていける状況であり続ける

元晴
アルバム「CIRCLES」では、初めて全編コラボレートという形でアルバムを作りました。コラボしていただいた方たち、シンガーもいれば楽器プレイヤーの方もいらっしゃいますけど、楽曲制作の過程からがっちり一緒に作業させてもらいました。制作意欲が溢れてる方たちと一緒に作業するのは楽しいですね! 皆さん、ソイルとやる時に、遠慮なくきわどい歌詞を放り込んできたり(笑)、レコーディングでも皆さんらしさを存分に発揮してくれて、それがソイルらしさと溶け合って、すべての曲で両方の "らしさ" がでた。それが嬉しいんです。

それは、彼らの存在の大きさに拠るものだろう。何をブツけても受け止めてくれる、ソイルにはタブーはない。そして、大人だから、何を持っていっても上手く料理してくれる。そんなバンドだと、彼らが周囲から認められているということに他ならない。そんなアーティスト、ちょっといない。

元晴
常にリニューアルしていきたいです。メンバーに対しても、お互いに刺激的な存在でありたいし、一緒にやりたいこともたくさんあるし、そのために自分も常に準備できてなきゃいけないし。バンドの良さってそういうところにもあると思いますね!
登場するアーティスト
画像

元晴
Motoharu

1973年、北海道名寄市生まれ。サックスを初めて吹いたのは小学校6年生のとき。そして、ジャズと出会ったのは、高校2年生。“バークリー・サマー・セミナー・イン・ジャパン”に行ったのがきっかけで、その後ジャズに大いに惹かれるようになる。そして、洗足学園音楽大学に入学後、米国ボストンにあるバークリー音楽大学に進み、4年間学んだ。帰国後の2001年にSOIL &“PIMP”SESSIONS に加入、同バンドの弾けた路線は大きく像を結ぶようになる。03年にはアルバム未発売ながらフジ・ロック・フェスティヴァルにも出演。04年にデビュー・アルバム『PIMPIN’』をリリース、現在までビクターから数々のアルバムやDVD 作品をリリースしている。また、彼らの大ファンである英国の国際的DJ、ジャイルス・ピーターソンの後押しもあり、05年以降は欧州ほか海外に大々的に進出。現在、トップ級に国際競争力を持つバンドとしても知られている。現在、(仮)ALBATRUS のメンバーでもある。

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