サックス記事 元晴 10年の軌跡を辿る初のベスト盤が完成したDEATH JAZZバンドのフロントマン
  サックス記事 元晴 10年の軌跡を辿る初のベスト盤が完成したDEATH JAZZバンドのフロントマン
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THE SAX vol.62 Cover Story

元晴 10年の軌跡を辿る初のベスト盤が完成したDEATH JAZZバンドのフロントマン

ARTIST

現メンバーの6人が揃って今年で活動10年目に突入した日本が世界に誇るジャズ・バンド SOIL & “PIMP” SESSIONS。そのフロントを担うサックス奏者といえば、もちろん元晴だ。前号で10周年アニヴァーサリー企画第3弾として登場したニュー・アルバム「CIRCLES」について応えてくれたのに続き、本号ではアニヴァーサリー企画第4弾となるキャリア初のベスト盤「“X” Chronicle of SOIL & “PIMP” SESSIONS」を題材にグループの軌跡、そして楽器のこと練習法のことなど、大いに語ってくれた。
(文:櫻井隆章 / 協力:ビクターエンタテインメント株式会社)

元晴が実践してきた基礎練習法とは?

さて、前号で予告した元晴の半生後編は誌面の都合で次の機会とさせていただくことに。ここで本号の特集に関連して彼のこれまでのサックスの練習方法について訊いてみた。彼は、ジャズのみならず、クラシックもミッチリと学んできた男である。まず、どんなエチュードや練習本を使ってきたのだろう?

元晴,SOIL& “PIMP“ SESSIONS,ソイル&ピンプ・セッションズ
 
元晴
教則本!? 中学生の時に、服部吉之師の元に入門して、それから10代は師匠のいう教則本を使っていました。マルセール・ミュール、ラクール、クローゼ、ブレマン、フェルリンなどです。 他の基礎練習は、基本スケールのメジャー・スケール、ハーモニック・マイナー、メロディック・マイナー。それぞれから派生するモード・スケールとコード・アルペジオ、そしてインターバルです。これは、バークリー音楽院の基礎課題も同じでした。それにテンションを加えて、9、11、13と。楽器をコントロールするための基礎練習ですが、気に入った響きが見つかれば、そこからメロディや曲が生まれたりしますし。基礎練のドレミでも、人を振り返らせるようなドレミが吹きたい、と思って吹きます!
あと、むかしから思ってるのは、スチューデントとしての自分と、パフォーマーとしての自分がうまく表裏一体になれると、いいなぁと思うんです。いつか誰かの前で吹くための練習、って思えば、その時なにが吹きたいのか、なにが必要なのか、自然と導かれると思うんですよね。こんな音が出したい! この人のために吹きたい! こんなところで吹きたい! そういう気持ちが一番大切なのかな、と、思います。
僕も、友達や家族に聴いて欲しい! って気持ちを原動力に、かっこいい音を探しにボストンまで旅に出ましたし(笑)。かっこいいなと思う音楽に出会うたびに、新しい練習のアイデアが生まれます。
音と関係ないところでは、ライブをする為には、タフな肉体と精神力が必要になってくると思って、わざとキツい建築現場を選んで肉体労働をした時期もありましたし、いろいろ知りたくて2年間で13個のバイトをしたこともありました。すべて音楽のために。結局、男塾っぽくなってくるんですけど、僕の場合(笑)。
元晴の愛器 テナー:ユリウス・カイルヴェルトSX90Rプロトタイプブラックニッケル
元晴の愛器。

テナー
:ユリウス・カイルヴェルト SX90R プロトタイプブラックニッケル

アルト:セルマーマークVII

ソプラノ:ユリウス・カイルヴェルト SX90R ブラックニッケル
元晴の愛器 アルト:セルマーマークVII
元晴の愛器 ソプラノ:ユリウス・カイルヴェルト SX90R ブラックニッケ

元晴が秘伝のオリジナル基礎練習法を初公開!

では、リズムに強くなる、読譜力が上る、そして指がよく動くようになる。こうした点に活きる練習法は?

元晴
いろんな練習があると思いますが、テクニックの練習に共通するのは、メトロノームを使って練習すること、だと思います。ぼくは細かくいろんなテンポで練習したり、いろんな拍子や、5連符や6連符、7連符にして練習したりします。ゆっくりからでも、指や息づかいが意識と同期することを心がけます。
リズム感は、好きな音楽を聴きながら、一緒にベースラインを吹いてみるとか、例えばジェームス・ブラウンの音楽に合わせてひたすらリフを繰り返すとか。例えば、初めてジャズをやるんだったら、好きなメロディや、ソロのどの音にアクセントがついてるのか、そこにアクセントをつけて吹くとどういうビートが生まれるのか、最初はそういう解析的なアプローチもありだと思います。
指が思うように動かなかったり、思ったタイミングで鳴らなければ、思ったリズムが出ないので、やはり基礎練習は大事ですよね。練習時間がとれない時は、楽器を持っていない時も、指をパタパタ動かしていれば、練習になる。
読譜力を鍛えるには……ひたすら読むしかない(笑)。ぼくは譜面を見ないようにしようと心がけて以来、最近ほとんど譜面を使わないので、譜面弱くなりました(笑)。
今日は独自の練習法を教えて欲しい、との事なので……、単音楽器であるサックスで、はっきりとコード感、進行感を出したくて、トライアド(三和音)をどのコードトーンからでも吹くための基礎練習があります。ネタ帳みたいなものなので、あまり人にお見せするような物でもありませんが(笑)、今回は「THE SAX」の読者のために、特別に教えちゃいますよ!

彼が独自に編み出した練習方法は、一つの音を8種類の三和音の構成音に当てはめ、それを分解し展開して吹く。それを、12音のすべてで繰り返す。これにより、如何なるキーのソロでも対応が可能になる、というものだ(譜例参照)。
独自の音楽を展開しているソイルのメンバーたちは、やはり独自の練習方法や、メソッドを持っている。一見すると派手なパフォーマンスだけが目に付く彼らだが、その裏には間違いなく不断の努力と工夫とがあるのだ。元晴の、こうした工夫と努力とを頭に置きながら、ソイルのベスト・アルバムを聴いていただきたい。また違って聴こえてくるはずだ。

譜例Cの音がそれぞれ長三和音、短三和音の根音、3rd、5thになるコードとCが根音の減三和音と増三和音を分解してアルペジオで吹く。これを12音すべてでやるというのが、元晴オリジナルの基礎練習法の一つだ。
登場するアーティスト
画像

元晴
Motoharu

1973年、北海道名寄市生まれ。サックスを初めて吹いたのは小学校6年生のとき。そして、ジャズと出会ったのは、高校2年生。“バークリー・サマー・セミナー・イン・ジャパン”に行ったのがきっかけで、その後ジャズに大いに惹かれるようになる。そして、洗足学園音楽大学に入学後、米国ボストンにあるバークリー音楽大学に進み、4年間学んだ。帰国後の2001年にSOIL &“PIMP”SESSIONS に加入、同バンドの弾けた路線は大きく像を結ぶようになる。03年にはアルバム未発売ながらフジ・ロック・フェスティヴァルにも出演。04年にデビュー・アルバム『PIMPIN’』をリリース、現在までビクターから数々のアルバムやDVD 作品をリリースしている。また、彼らの大ファンである英国の国際的DJ、ジャイルス・ピーターソンの後押しもあり、05年以降は欧州ほか海外に大々的に進出。現在、トップ級に国際競争力を持つバンドとしても知られている。現在、(仮)ALBATRUS のメンバーでもある。

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