サックス記事

vol.18「サックスセクションのためのパート練習メニュー」

THE SAX vol.40(2010年3月25日発刊)より

最近のスガワ

こんにちは。
今年も新生活スタートの時期を迎えますね。そこで今回は、新入生を迎える中学、高校の吹奏楽部の皆さんに向け、セクションみんなでできる1週間の練習メニューをアドバイスしようと思います。これに加え、ロングトーンなどのウォーミングアップは必ず毎日続けてくださいね。もちろん、個人できちんと計画を立てて練習できるに越したことはありません。いずれはそうなれる可能性は持ちながら、今はどうやって練習したらいいか迷ってしまう人たちへのアドバイスと受け止めてください。

 

 

サックスセクションのためのパート練習メニュー

サクソフォーン練習の主な内容として、一つ目は基礎練習、二つ目は教則本やエチュードなどの練習曲、三つ目は曲の練習が挙げられます。この3本柱を自分でコントロールしながら練習できればいいのですが、クラブで活動したり、練習時間が限られている人たちは、全部をやろうと思うばかりにどれも上手くいかず、気持ちばかりが焦ってしまうことも多いと思います。そこで大切なのが、そのパートのリーダーによる“リーダーシップ”です。リーダーの方に特に肝に命じてほしいこと、それは「一日にすべてのことをやろうとしすぎないほうがいい」。それを踏まえ、月曜日から土曜日までの主な練習計画の例を話してみましょう。

【月曜日=基礎練習】
姿勢のチェック、アンブシュアなどの奏法のチェックを含めて、スケール=音階を使ったロングトーンを中心とした練習。経験が多い上級者の人はヴィブラートの練習などを含めてもいいと思います。全音域を使ったスケールで、例えば「今日はヘ長調にしよう」と決めたらみんなでそれをやります。♩=72くらいで、ひとつの音を4拍から8拍伸ばします。音を安定させたい人はきれいな響きを、ヴィブラートを訓練したい人は自分のかけられるテンポで一定の波を維持することに気をつけます。1回目はヴィブラートを付けず、2回目はヴィブラートをかけるという方法がいいでしょう。それをやりながら、自分の音色はきれいかどうか、マウスピースを深くくわえすぎたりしていないか、下あごの形などをチェックすることがポイントになります。

【火曜日=タンギング】
月曜日と違う調のスケールを使ってみるといいでしょう。例えばト長調。まず、無理のない♩=120ぐらいで、八分音符のスラーから。次をテヌートタンギング。次に余裕があればひとつの音を二つずつに分けた16分音符で「ドドレレミミファファソソララシシドド」と。最後はスタッカートで「タッタッタッタッ」とやっていく4段階が効果的です。舌に力が入りすぎていないか。タンギングの基本はtu、「トゥ」の発音で。舌がたくさんリードの面に接してスラップタンギングのようになりすぎていないか。厳しくチェックしていきましょう。

【水曜日=ダイナミクスレンジを生かしたロングトーン】
また違う調のスケールを使います。例えば変ロ長調。最初の4拍をクレッシェンド、あとの4拍をディミヌエンドで。低い音域の場合は、♩=72としても8拍は苦しいでしょうから、6拍ぐらいにするか、ブレスをとってもいいと思います。大事なのはpからfにクレッシェンドするとき、その逆も同じですが、いきなり大きくなったり小さくなったりしないで、きれいにコントロールするということ。経験者はノンヴィブラートとヴィブラートを交互に取り入れてチェックしましょう。ダイナミクスをつけながらのヴィブラートのコントロールは意外と難しくて、かかりすぎたり、形が不揃いになったりしやすいものです。

【木曜日=自由練習】
各自の気になる点をおさらいします。月曜日から水曜日の内容で自分自身の苦手なところがあったら、そこをもう一度復習することが大切ですし、逆にテクニックに余裕がある人はフラジオの練習をしてみたり、すごく速いタンギングの練習をしてみてはいかがでしょう。そういった「その人なりの自由な練習」という時間も必要です。そこはもう、スケールを使おうが何をしようが、自分の好きなことをやる。それも、その人の柔軟な発想や音楽の幅を広げるために大事なことです。

【金曜日=再びタンギング】
サックス奏者は、みんなタンギングで苦労しますから、再び取り組みます。また違うスケールを使いましょう。イ短調、ト短調などでもいいですね。この日はパートリーダーや先輩が後輩を聴いて、アドバイスをする日というのでもいいと思います。

【土曜日=総合練習】
最終的には「きれいな音を出したい」というのがみんなの願いだと思います。それにはロングトーンとヴィブラートのテクニックがまず大事であり、ダイナミクスレンジをつけることが欠かせません。その上で、よりいい音を目指すということを考えてみましょう。
なぜクレッシェンドとディミヌエンドの練習が必要かというと、メロディやハーモニーの一部を吹いているときには、同じ音量で伸ばすより、むしろ音量の変化を伴って表現されるもののほうが多いからです。毎日の練習を音楽表現に繋げるために、すべてを網羅した練習を取り入れておきましょう。

これで1週間です。加えて一番理想的なのは、パートリーダーが全員に今日の練習メニューの指示をして実践し、さらに「パート日誌」をつけておくことです。難しいことは書かずに、「今日何を練習したか」ということだけを書いておく。三日坊主にならないよう、自分の書ける範囲でいいんです。書くことによって自分自身の記録や心構えができますからね。各自に書かせるのもすごくいいことだと思います。そうして練習記録や計画を立てているからこそ目標も生まれるし、やりがいも出てくると思います。

以上、駆け足でアドバイスしましたが、皆さんのお役に立てたら嬉しいです!

 

※このコーナーは、「THE SAX」誌で2007年から2015年にかけて連載していた内容を再編集したものです

次回のテーマは「サックスセクションのための練習計画 上級編」。
パート練習の次は、一人一人がステップアップするための練習方法を紹介します。お楽しみに!

 

須川展也 Sugawa Nobuya

須川展也
須川展也
日本が世界に誇るサクソフォン奏者。東京藝術大学卒業。サクソフォンを故・大室勇一氏に師事。第51回日本音楽コンクール管楽器部門、第1回日本管打楽器コンクールのいずれも最高位に輝く。出光音楽賞、村松賞受賞。
デビュー以来、名だたる作曲家への委嘱も積極的に行っており、須川によって委嘱&初演された多くの作品が楽譜としても出版され、20-21世紀のクラシカル・サクソフォンの新たな主要レパートリーとして国際的に広まっている。特に吉松隆の「ファジイバード・ソナタ」は、須川が海外で「ミスター・ファジイバード」と称される程に彼の名を国際的に高め、その演奏スタイルと共に国際的に世界のサクソフォン奏者たちの注目を集めている。
国内外のレーベルから約30枚に及ぶCDをリリース。最新CDは2016年発売の「マスターピーシーズ」(ヤマハミュージックコミュニケーションズ)。また、2014年には著書「サクソフォーンは歌う!」(時事通信社)を刊行。
NHK交響楽団をはじめ日本のほとんどのオーケストラと共演を重ねており、海外ではBBCフィル、フィルハーモニア管、ヴュルテンベルク・フィル、スロヴァキア・フィル、イーストマン・ウインド・アンサンブル、パリギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団など多数の楽団と共演している。
1989-2010年まで東京佼成ウインドオーケストラ・コンサートマスターを22年余り務めた。96年浜松ゆかりの芸術家顕彰を表彰されるほか、09年より「浜松市やらまいか大使」に就任。2016年度静岡県文化奨励賞受賞。
サクソフォン四重奏団トルヴェール・クヮルテットのメンバー。ヤマハ吹奏楽団常任指揮者、イイヅカ☆ブラスフェスティバル・ミュージックディレクター、静岡市清水文化会館マリナート音楽アドバイザー&マリナート・ウインズ音楽監督、東京藝術大学招聘教授、京都市立芸術大学客員教授。
 
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