トランペット 記事
THE TRUMPET vol.13

ジャンルを股にかけて活躍するスーパー・トランペッター レックス・リチャードソン

クラシックや吹奏楽とジャズやポップス両方のジャンルで活躍できるプレイヤーはトランペット界の中でもまだまだ数少ない。
そんな希少な存在の一人であるのが、オーケストラ、吹奏楽、金管バンド、ジャズアンサンブルなどなど、各分野で引っ張りだこのレックス・リチャードソン氏。そんな活動を象徴するように、去る5月にはZ Express Big Bandのゲスト、そして東京吹奏楽団との共演のため来日を果たした、このスーパー・トランペッターの最新ボイスをキャッチした。
(取材協力:株式会社ヤマハミュージックジャパン)

大切なのは自分のVOICEをきちんとイメージすること

ジャズとクラシックを両方吹き分けることは、特にトランペット奏者の間では関心の高い話題ではないだろうか? いずれのジャンルでもトランペット奏者は常に重い責任と緊張を強いられるし、それだけに過去の名演もそれぞれに数多く存在する。それらのイメージに限りないあこがれを持ちつつ、それをしのぐようなオリジナリティあふれる演奏を心掛ける作業は、とても孤独で、しんどい。そのためか、洋の東西を問わず両方の分野でそれぞれ成功を収めているプロフェッショナルは数少ない……と言われていたのはちょっと前までの話。

「私の先生も最初はそう言ってジャズを練習することについてはあまりいい顔をしなかったけれど、今では彼も両方演奏しながら、楽しくやっているよ」

先ごろ久しぶりの来日で、非常に興味深いふたつの協奏曲をみごとに演奏したレックス・リチャードソンさんはそう語る。1969年生まれで、10歳のころからトランペットを始め、14歳のころにはすでにプロを目指していた彼は、ジャンルを超えたスーパープレイの連続で名高いあの「リズム&ブラス」(1993年に結成され、彼同様にジャンルを超えたプレイで定評ある金管五重奏団)で活躍していたこともある手練れだ。

「それぞれのジャンルについて細かい点でこだわる人はたくさんいるけれど、もっとも大事なことはどちらのジャンルを演奏するときでも自分のVOICEをきちんとイメージすることでしょうね。例えば、確かにビッグバンドのリード奏者と、オーケストラの首席奏者では通常使用するマウスピースのタイプもかなり違います。しかし、だからといってそのマウスピースに交換したからといって、すぐにその人のような演奏ができるようになるわけじゃない。楽器に対してもしかり、で、あるジャンル向きの楽器とそうでない楽器がある……というわけじゃなくて、その前に自分がどれくらい具体的なイメージをもっているか、そして、自分にとって無理のない自然な奏法を身に着けているか、ということのほうが大切でしょう。そういう奏法なしに、効率よくそれぞれのジャンルを表現するのはとても大変なことです。さらに言うなら、自分のイメージをつかむために先達の素晴らしい演奏をコピーすることは大切ですが、そればかりにこだわっていると、自分を見失いがちになるとも思います。先述の楽器やマウスピースについても、同じですね。私の場合は幸いなことに、実に演奏しやすいヤマハのYTR-8335LAS(第2世代)を手にすることができて、楽器についての悩みからは解放されました。とはいえ、もっとも役立っているのは早くにリラックスした奏法を身に着けることができたことですね。トランペットを演奏する際には、ついつい身体に力をいれたくなるものだけれど、私に手ほどきしてくれた先生は、まず演奏に際してはリラックスすることを教えてくれたんです」

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・平常心ということの大切さを身に染みて実感した出来事

 

Profile:「今世界でベストの中のベスト・トランペットソリスト」(国際トランペット協会)」、「フレディ・ハバードやウディ・ショウに匹敵するパワー、音域、柔軟性を持つ卓越した素晴らしいソリスト(ダウンビート誌)。ヤマハアーティストであるレックス・リチャードソンは、2008年世界的専門誌ブラスヘラルド誌によるパーソナリティ・オブ・ザ・イヤーに選ばれるなどクロスオーバーに活動するトランペットソリストとして国際的に活躍している。リズム&ブラス、ジョー・ヘンダーソン・クインテット&セクステット、シカゴ・ジャズ・アンサンブルなどのメンバーとして活躍するほか、世界各国の音楽祭やジャズフェスティバルでオーケストラ、吹奏楽、金管バンド、ジャズアンサンブルなど幅広いジャンルのグループと共演している。2002年よりバージニア・コモンウェルス大学で後進の指導にあたり、2012年〜15年は英国ロイヤル・ノーザン・カレッジオブミュージックで国際招聘講師を務めた。


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