吹奏楽wind-iオンライン記事:田中靖人の吹奏楽サックス A to Z! | 第3回 新学期スタートに向けて部活動運営編
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田中靖人の吹奏楽サックス A to Z! | 第3回 新学期スタートに向けて部活動運営編

THE SAX vol.53(2012年5月25日発刊)より転載

新学期スタートに向けて部活動運営編

新入生を迎えたりメンバーが変わると、練習にも人間関係にも、いろいろと悩みが生まれるだろう。そこで今回は、吹奏楽部の活動を楽しく、実のあるものにする練習法や心構えを田中氏がバッチリ伝授。ここでしか聞けない役立つ内容満載でお送りしよう。ぜひ、日々の練習の糧にしてほしい!

 

Q. 後輩に教えるべき練習とは?
後輩に「練習しなさい!」と言ってもあまり集中してくれません。楽しくて効果が上がる練習法ってありますか? また、練習のためのよいエチュードなどがあれば教えてください。

A. 音楽としてのロングトーン、音階練習をしよう。
昔は「もっと気合いを入れろ!」「練習が足りない!」なんて先輩から言われると、わけがわからなくても、みんな一生懸命ついていこうと必死に頑張ったものですが、今は時代が違います。
それが良いとか悪いということではありませんが、情報が簡単にたくさん入ってくる今は、後輩諸君も本当に良いものを求めているのだと思います。だから先輩も、それから私を含める大人も、もっとしっかりしなくてはいけないですね。

さて前置きが長くなりましたが、楽しくて効果が上がる練習方法なんて、あったら私が知りたいですよ!(笑)
管楽器の練習の基本はロングトーンと音階練習です。これができない人は上達なしです! 必ず実行してほしいトレーニングですが、全調(長調12、短調12)があって、サクソフォンの音域である約2オクターブ半のトレーニングができる音階の本は必ず持っているべきです。
私は中学生の頃、ロングトーンや音階練習が嫌いで、ただ機械的に練習していることが退屈でたまりませんでした。
高校2年生になって、音楽大学を目指すために大室勇一先生のお宅へ通うようになりましたが、つまらなそうに音階を演奏している私に「君が楽器を持って一音でも音を出す時に、それを音楽と思って演奏すれば、音階もエチュードも曲も同じように感じるはずだよ」とおっしゃいました。
何事もそうですが、目的意識がないとどうしていいのか分からず、つまらなくなってしまうということなのです。先輩がそこを分かって指導してあげないと、後輩も育ちませんよ。
先輩がシンパイ……なんて思われないように頑張ってくださいね!

 

Q. 良い音のイメージはどう伝えれば?
「きれいなサックスの音ってどんな音ですか?」と後輩から質問されました。田中さんは良い音色のイメージをどんなふうに説明していますか?

A. 良い音源を紹介してあげよう、そして自分も聴こう。
私は高校生の時に、マルセル・ミュール氏、ダニエル・ディファイエ氏などクラシカル サクソフォンの音をレコードで初めて聴いて、それまで知っていたジャズ サクソフォンとの違いに大変衝撃を受けました。音そのものだけではなく、デリケートな発音や音の終わり、音色の種類など息遣いまで何度も聴いて想像しながら、音をイメージして練習していました。
教則本や人の説明では理屈が先行するだけで音のことは伝わりませんから、とにかくすばらしい奏者の生の演奏、CDなどをたくさん聴いて、良い音のイメージを持つことですね。

 

Q. 合宿の練習メニューは?
高校生です。コンクール1ヶ月前くらいに3泊4日で合宿をするのですが、サックスパートの練習メニューを作ることになりました。田中さんならどんなメニューにしますか? ちなみにサックスパートは8人です。

A. 1日のはじめにしっかりと音作りを。
まずロングトーン、音階はきちんと目的意識を持って丁寧にトレーニングします。これは日頃から行なう内容ですが、このトレーニングで音をよく聴く耳を養うこと。研ぎ澄まされた耳で、自分や一緒に演奏している人の音を聴きながら演奏することはとても大切なことです。そしてその日1日、良い音で演奏するための音作りをします。
エチュードを使うならその後に練習します。エチュードもそれぞれ曲の中にきちんと目的がありますから、それを理解して練習してください。エチュードがない場合はコンクールの曲に入って良いです。

 

Q. 練習する時間がないんです……。
進学校で塾に通っている生徒も多く、1日3時間くらいしかみんなで練習することができません。短い時間で能率を上げて練習するには、どこに重点をおいたら良いでしょうか。また、プロの吹奏楽団ではパート練習や合奏練習にどのくらいの時間をかけているのですか?

A. 合奏を中心に、目標を絞り込んで練習すると良いでしょう。
例えば東京佼成ウインドオーケストラは、本番があればそれに伴ってリハーサルがあります。
「ニューサウンズ・イン・ブラス」の演奏会は、リハーサルは1日(朝10時半から15時半)です。クラシカルな曲集などをレコーディングするときは、リハーサルも大変なので、3日かけます。コンサートツアーの場合は、リハーサルに2日か3日。定期演奏会のときは3日か4日など、プログラムによって様々です。
リハーサルは合奏のみなので、前もってそれぞれ個人練習をしてからリハーサルに参加します。プロは長年の専門的なトレーニングや音楽の教育を受けて、現場での音楽体験を積んでいますから、リハーサルでもはじめから出てくる音楽がプロフェッショナルなのです。
ですからリハーサルの時間については参考にならないでしょうが、短時間で効果をなるべく効率良く、となると、合奏中心の練習をすることでしょうね。合奏の中でその日集中して練習する曲を決めて、どの部分をリハーサルするかなども計画的にすると、目標が絞られて集中できるでしょう。

 

Q. 音程が合わないとよく言われます……。
指揮者に「ピッチが合ってないのでパート練習をするように」とよく言われます。全員でピッチを合わせるための良い練習方法があれば教えてください。

A. 音程は合うものではなく、歩み寄って合わせるものです。
音程を合わせるには、自分の音や人の音を集中してよく聴くことから始まりますが、とても大切なのは聴き合うことでお互い「歩み寄ること」なのです。
管楽器はそれぞれ構造や特性などの違いがありますし、同じ楽器でも数人集まれば音程のズレは生じます。たとえ同じ442Hzで合わせても音程は常に動くものなのです。音量のバランスも音色のズレに繋がって、音程が合っていても合っていないように聞こえることがあります。
それらを理解して、まずはセクションでユニゾンの練習をやってみてください。それぞれのセクションでまとまれば、合奏での音程も次第に合ってくるでしょう。

 

Q. 脱・銅賞の秘策を教えてください!
今年も吹奏楽コンクールを目指して練習する予定です。ズバリ「銅賞から脱出する方法」があれば教えてください!
(注:通常吹奏楽コンクールは金賞、銀賞、銅賞の3賞がある。金賞をとった学校の中から次の大会に進む団体が選ばれる。銅賞だととてもがっかりする……)

A. まずは銀賞を目指そう。やれば結果はついてきます。
銅賞ですか……ドウシヨウ……あ〜、失礼!
深刻な悩みのようですが、銅賞から脱出する方法なんてズバリ答えられたら、私はアドバイザーとしての職業で生活しようかな(笑)。
私は時々コンクールの審査委員としてお招きいただくことがあります。
金賞はそれだけすばらしい演奏に与えられる数少ない賞なので、なかなか難しいと思いますが、銅賞から脱出するのはそれほどではないと思います。まずは銀賞を狙ってみましょう。
賞ありきと思わず、まず自分たちの演奏……何がダメなの?というところに気が付くことが大切ですよ。
そこからどうするのか? 音楽的なこと、それを表現するための技術面など、目標が見えてくれば練習方法を考えて進むべし! 結果はおのずと付いてくるものです。
頑張ってください!

 

Q. 勉強のために部活をやめる? 
センスがあってうまいな〜と期待していた新入部員が、「勉強する時間がないので部活を辞めたい」と言い出しました。勉強も大切だけど辞めてほしくない! どうしたら引き止められるでしょうか。もし田中さんに同じような経験があればアドバイスをお願いします。

A. 両立はもちろん可能。私なら説得します。
勉強と部活の両立は誰でもできると私は思いますから、もしそんな後輩に会ったら頑張れ! と説得します。しかしどんなにセンスが良くて期待したい人でも、今は部活より勉強と思うなら仕方ないですね。
私もクリニックなどで、才能ある人に音楽の道を勧めたことが何度かありますが、他の勉強への道を選んだ人は、情熱がそちらにあるのです。

弱点を知り、目標を絞って練習すれば
きっとみんなで前進できる!
田中靖人

※この記事はTHE SAX vol.53 を再構成したものです

田中靖人さん
田中 靖人 Yasuto Tanaka
和歌山県出身。国立音楽大学在学中、第4回日本管打楽器コンクール・サクソフォン部門で第1位を獲得。1991年には「管打楽器ソロ名曲集・サクソフォーン」でCDデビュー。1995年「ラプソディー」、1997年「サクソフォビア」を、03年「ガーシュインカクテル」を、2012年「モリコーネ・パラダイス」をリリース。一方、室内楽のジャンルではサクソフォン四重奏団[トルヴェール・クヮルテット]で活躍。2001年には文化庁芸術祭レコード部門大賞受賞。現在、愛知県立芸術大学、昭和音楽大学講師、礼幌大谷大学客員教授として後進の指導にもあたっている。東京佼成ウインドオーケストラ コンサートマスター。


▷田中靖人オフィシャルホームページ◁

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