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vol.41「教えること、教わること その2」

THE SAX vol.63(2014年1月25日発刊)より転載

最近のスガワ

読者の皆さん、こんにちは。2014年が明けました。今年僕は、デビュー30周年を迎えました。ファンの方々に支えられて日々音楽活動をさせていただけることに感謝を込めて、内容盛りだくさんの記念コンサートをはじめいろんな企画を練っていますので、どうぞお楽しみに! さて、このコーナーでは前回から「教えること、そして教わるときに大切なこととは何か?」について考えています。今回は教わる立場について。僕は今、主に教える立場ですが、昔を思い出しての反省も込めて(笑)、レッスンを受ける皆さんがもっと有意義な時間を過ごすために大切なことを書いてみましょう。

 

 

教えること、教わること その2

僕が教える時よく生徒に言うのは、「レッスンは毎回本番だと思うように」ということです。レッスンで先生に聞いてもらうのは1000人のお客さんの前で吹いているのと同じ、疑似本番だと思って臨んでほしいと。僕は、ある程度の技術に達した生徒の場合は、レッスンの冒頭は何も言わずに一通り演奏を聴くようにしています。本番さながらに演奏してもらい、それを受けて足りないところをアドバイスするんです。そうすることで、レッスンの中身は濃いものになりますからね。ですから、教えてもらうほうとしては、先生に会う前にレッスンで何をしたらいいかを“予定”しておくことが大事です。習うほうにも準備は必要です。1対1のレッスンであれば、本番さながらに演奏して先生に聞いてもらうというのも、相当な準備が必要ですね。先生はその気合いを感じて様々なアドバイスをしてくれるのです。

吹奏楽の合奏やアンサンブルのグループレッスンの場合は、指揮者・指導者が何をしたいのかを探るアンテナを持っておくと、練習が楽しくなると思います。ポイントは、他の人が注意されて指導を受けているときにもきちんと耳を傾けること。何のためにそこを注意して練習させているのかを考えてみましょう。例えば合奏だとして、縦の線が合わないから何度も練習しているのか、ニュアンスが足りないのなら具体的にどのようなことをやってほしいと言っているのか。指揮者は本来、一人一人のできるできないを見ているのではなく、音楽全体を考えて指導します。指揮者がその音楽で伝えたいこと、そのイメージに近づくように、同じフォルテでも「この楽器は大きく、この楽器は少し控えめに」ということや、同じタンギングでも「ここは堅く、こっちは堂々と」、また楽譜に書いてなくても高揚感を出すために微妙なクレッシェンドをつけてみようというようなアイデアを、練習中に指示してくるわけです。ですから、他の楽器への指導だとしても、彼らが何を言われているのか、それは何のためなのかを考える「心の余裕」を持って臨んでみましょう。だんだんと曲の全体像が見えて結果的には自分のためにもなるはず。そして自分はどうしたらいいのかを自ら考えることができたなら、これはもう教わるほうの鑑ですね!

とはいえ、これは理想論であってなかなか難しいかもしれません。先生にもいろいろなキャラクターがありますしね。怖い先生、優しい先生。でも、知っておいてほしいのは、どんな先生も生徒が少しでも上手くなる手助けをしたいと思っているんです。レッスン中に生徒の中に「探求心」がかいま見えれば、先生のほうにも情熱がふくらんできます。しかしながら、教わるほうもその日の体調や心の状態によって毎回良い状態で臨めるとは限りません。どうしてもレッスンに行きたくないという日もあると思います。そうすると引っ込み思案な演奏になり、ますます先生が怖くなる……といったスパイラルに陥ってしまった人も見かけます。それを乗り越えるには、「結局、誰のために演奏するのか?」という初心を思い出すことです。コンサートだったら、せっかくの時間を割いてきてくれる人に楽しい思いをしてもらいたい、そのために上手くなりたい、だからレッスンを受ける。苦しくなったら、本番でお客さんからもらった拍手を思い出して、その拍手をもっとたくさんもらうためにはどうしたらいいかを考えるところから始めたらどうでしょうか。

先生が好き、嫌い、性格が合う、合わないという人間関係の根本的な問題もあるかもしれませんが、先生は皆、生徒が少しでも上手くなることが一番の喜びであるはずです。先生に本気の演奏を聴いてもらっていいアドバイスをもらおうという態度で臨み、「よーし!それだけ練習してきたんならいろいろ教えてやるぞ」と、先生のモチベーションを上げることができたら素晴らしい。さらに、ただ先生の言うことを「ハイ、ハイ」と聞いているだけじゃなく、「ここが疑問なんですけど、教えてください」というように、「先生はどう考えているか」を積極的に質問してみるのもいいですね。僕なんかはそういう質問があるとすごく張り切って、ついおしゃべりになってしまいます(笑)。先生が何か言ってくれるのを待つだけじゃなくて、先生をうまく「頼る」んです。そのためには、きちんと練習して自分なりの疑問点が持てるように準備しなければなりませんよ。

前号でお話したように、もともと先生側は生徒のやる気を起こさせるレッスンをしようと準備しているのです。一方通行ではなく、教える側、教わる側の情熱が上手く合わさっていけば、とても充実したレッスンになるでしょう。人間同士ですから、先生と生徒という立場に縛られることなく、「自分よりも経験が豊かな人から学ぶ」と思ってコミュニケーションしていけば、さらに楽しい音楽作りができると思いますよ! 

 

次回のテーマは「デビュー30周年を迎えて、今、思うこと」。
さらに音楽を広めていくための、これからの活動について語ります。お楽しみに!

※このコーナーは、「THE SAX」誌で2007年から2015年にかけて連載していた内容を再編集したものです

 

須川展也 Sugawa Nobuya

須川展也
日本が世界に誇るサクソフォン奏者。東京藝術大学卒業。サクソフォンを故・大室勇一氏に師事。第51回日本音楽コンクール管楽器部門、第1回日本管打楽器コンクールのいずれも最高位に輝く。出光音楽賞、村松賞受賞。
デビュー以来、名だたる作曲家への委嘱も積極的に行っており、須川によって委嘱&初演された多くの作品が楽譜としても出版され、20-21世紀のクラシカル・サクソフォンの新たな主要レパートリーとして国際的に広まっている。特に吉松隆の「ファジイバード・ソナタ」は、須川が海外で「ミスター・ファジイバード」と称される程に彼の名を国際的に高め、その演奏スタイルと共に国際的に世界のサクソフォン奏者たちの注目を集めている。
国内外のレーベルから約30枚に及ぶCDをリリース。最新CDは2016年発売の「マスターピーシーズ」(ヤマハミュージックコミュニケーションズ)。また、2014年には著書「サクソフォーンは歌う!」(時事通信社)を刊行。
NHK交響楽団をはじめ日本のほとんどのオーケストラと共演を重ねており、海外ではBBCフィル、フィルハーモニア管、ヴュルテンベルク・フィル、スロヴァキア・フィル、イーストマン・ウインド・アンサンブル、パリギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団など多数の楽団と共演している。
1989-2010年まで東京佼成ウインドオーケストラ・コンサートマスターを22年余り務めた。96年浜松ゆかりの芸術家顕彰を表彰されるほか、09年より「浜松市やらまいか大使」に就任。2016年度静岡県文化奨励賞受賞。
サクソフォン四重奏団トルヴェール・クヮルテットのメンバー。ヤマハ吹奏楽団常任指揮者、イイヅカ☆ブラスフェスティバル・ミュージックディレクター、静岡市清水文化会館マリナート音楽アドバイザー&マリナート・ウインズ音楽監督、東京藝術大学招聘教授、京都市立芸術大学客員教授。
 
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