フルート記事
THE FLUTE vol.172

加藤元章×清水理恵 クーラウ×プラチナの底知れないエネルギー

加藤元章さんと清水理恵さんが、クーラウのフルート二重奏曲全曲をレコーディングするプロジェクトがスタートした。第1回目のレコーディングは、op.10全3曲をこの夏に収録。「ドルチェ・クラシックチャンネル」より配信されている。オーディオにも造詣が深く、その世界でも名前が知られている加藤さんだけに、“音”へのこだわりには並々ならぬものがある。2本のプラチナフルートが創り出す世界とその愉しみを、お二人に語っていただいた。

クーラウのデュオ全曲をプラチナ2本で

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クーラウのデュオ全曲をレコーディングすることになったのは、どんな経緯があったのですか?
清水:
加藤先生が主宰している勉強会で、クーラウを取り上げようか、ということになったのがきっかけでした。
加藤:
2000年代の初めから月に1回くらいのペースで、プロ奏者が参加する勉強会をやっていたんですよね。続けるうちにメンバーの年代も自分たちの仕事の内容もだんだん変わっていき、もう一度演奏を見直す意味でも原点に帰るような企画をやってみようか、ということになりました。
それをやるのにちょうどいい場所はないかな、と探していたところ、ドルチェのサロン(東京・新宿の「アーティストサロン “Dolce” 東京」)に行き着いた。私同様、ドルチェの安川社長もかなりコアなオーディオマニアで(笑)。サロンの設計図を持って遊びに来た! 床材をどうするとか、ステージをどうするとか、こちらからも音響の面でアイデアを出したり……だから、音の面では思い入れも愛着もある場所だったんですね。
で、クーラウのデュエットですが、笛吹きが集まって吹いてみて「ああ、やっぱり難しいね」と言って終わる、というか(笑)、そういう感じの曲なんですよね。でもそんな中途半端な状態じゃなくて一度しっかり、きちんと勉強し直そう、ということになって。全曲だと、3曲×6集あるから全部で18曲。それを1曲ずつやっていって、そのうち終わったんですよ。でも、ほかの人の演奏は聴く機会がない。それなら、この際録音しようかと……そのときちょうど、ドルチェのサロンを改装することになって、いろいろなこだわりを反映させた結果、格段に音が良くなった。フルートの演奏にとっても吹きやすくていい音がするので、ここで録音をすることになりました。ちょうど「ドルチェ・クラシックチャンネル」の配信も始まるタイミングでした。

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・クーラウの多様な作風 
・プラチナフルートをめぐって…

 

Profile
加藤
加藤元章
Motoaki Katou
桐朋学園大学で森正氏に師事。在学中に渡仏し、パリ国立高等音楽院でジャン=ピエール・ランパル氏に師事し、'82年1等賞で卒業。'80年のブダペスト国際コンクールでの特別デュプローム、'81年のプラハの春国際コンクール名誉賞、アンコーナ国際コンクール第2位、マディラ国際コンクール優勝、'83年マリア・カナルス国際コンクール第2位、ランパル国際フルートコンクール第2位と、6つの国際コンクールで優・入賞を果たす。'93年からは2つのCDシリーズの録音に精力的に取り組み、15タイトルをリリース。現代作品集「夜は白と黒で」は、平成6年度の文化庁『芸術作品賞』を受賞。 また、ケーラーやアルテスなどのフルート教則本に基づく世界初のCD録音も積極的に行なっている。'05年 韓国で国営放送局KBS交響楽団とイサン・ユン(尹 伊桑)のフルート協奏曲(1977作)を韓国にて初演し、大役を務めた。
Profile
清水理恵
清水理恵
Rie Shimizu
桐朋学園大学卒業後渡米。ボストン大学大学院修士課程修了。 在米中よりソリスト・室内楽奏者として幅広く活動する。帰国後「現代室内楽コンクール競楽II」第3位及フォルテ・ミュージック賞受賞。フランス、アメリカ、中国の音楽祭やコンヴェンション、作曲家会議、大学等に招かれ、新曲初演やコンサート、マスタークラスなどを行う。 2012~18年リサイタル・シリーズ「バッハ:無伴奏チェロ組曲に魅せられて」全6回を企画開催。2018年秋よりリサイタル・シリーズ第2弾「バッハ:ヴァイオリン・ソナタ&パルティータとともに」を始動した。ドルチェクラシックチャンネルにて様々なレコーディングを配信中。CD「Three Water Colors」、清水研作作品集「海」、「日本の歌・世界の歌」。ヴェリタスミュージックアカデミー主宰。桐朋芸術短期大学及び新潟大学講師。中国チチハル大学客員教授。
HP:http://shimizu-rie.com/
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