フルート記事 フルートの音色が描く“そよ風”─城戸夕果、26年ぶりのアルバム『BRISA』をリリース
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THE FLUTE vol.207 Close Up

フルートの音色が描く“そよ風”─城戸夕果、26年ぶりのアルバム『BRISA』をリリース

ARTIST

長く共演を重ねてきた仲間との演奏、ブラジルの空気感、そして自身の音へのこだわり——。フルート奏者・城戸夕果が26年ぶりにリリースしたアルバム『BRISA』には、音楽と真摯に向き合ってきた年月が静かに息づいている。
岡部洋一、コモブチキイチロウ、伊藤志宏ら第一線の音楽家たちとともに、時に柔らかなアルトフルートの響きも加わって、深みある音楽表現を紡ぎ出す。
さらに、EPOやジョイス・モレーノ、ルーラ・ガルヴァオンといった豪華ゲスト陣も参加。「そよ風」という意味を持つこの作品に込めた想いと、音作りの背景を語ってもらった。

(文:本田裕一郎)

アルバム制作のきっかけと「BRISA」に込めた想い

今回アルバムを制作されたきっかけは?
城戸
5年前に日本に帰ってきてからいろいろ試行錯誤していた中で、今回のレコーディングメンバーの4人と一緒にやれるようになって、「あ、いいメンバーでできるようになったな」って思い始めたんです。
それと同時に、もう40年近くのお付き合いになる小説家の今野敏さんが久しぶりにライブに来てくださって、そのときに「夕果さん、レコーディングしましょうよ」って何度も言ってくださって。それで実現したのが、このアルバムなんです。実は、この作品は敏さんが主宰しているレーベル「78LABEL(ななはちレーベル)」からのリリースなんです。敏さんが「好きなように作っていいよ」と言ってくださって、本当に考えて考えて、丁寧に制作したアルバムになりました。
「BRISA」とはポルトガル語で“そよ風”の意味ですが、どのような思いを込めましたか?
城戸
フルートって、風によって音が出る楽器なんですよね。音楽そのものが風によって作られていく——だから、私にとって“風”は、いつも意識しているテーマなんです。
もうひとつの理由は、今回のアルバム制作のきっかけにもなった今野敏さんの小説『海風』の影響です。これは江戸時代、黒船来航のときにどうやって日本が鎖国を解いていくか、外交を担った幕臣たちの奮闘を描いた作品です。登場人物たちの思いや覚悟が、現代にも通じるポジティブなエネルギーのようにスッと自分の中に入ってきて。今の時代って、テレビやネットを見ているとどうしてもネガティブなニュースが多いじゃないですか。だからこそ、あの本を読んで得た気持ちや願いを、音楽にも込めたいなと思ったんです。
アルバムの1曲目に収録した「BRISA」は、唯一の私のオリジナル曲なんですが、そんな想いを託して作りました。この楽器が風で鳴るということ、そしてその風に希望や祈りを込めたいという気持ちから、「BRISA」というタイトルが自然に浮かびました。
ちなみに、ポルトガル語で「風」はもう一つ「vento」という単語もあって、冠詞がつくと「o vento(オ・ベント)」、つまり「お弁当」みたいに聞こえちゃうので(笑)、やっぱり「BRISA」にしてよかったなと思っています。
 

インタビューは続きます!
・支えてくれた音楽仲間たちとの再会
・豪華ゲスト陣とのコラボレーション
・アルトフルートというもうひとつの声
・『BRISA』の聴きどこ

 
Profile
城戸夕果 (きど ゆか)
神戸生まれ、茅ヶ崎育ち、洗足学園大学卒。学生時代からジャズ・フュージョン系のバンドで活動。89年に小野リサのバンドに加入し、ブラジル音楽の魅力、フルートとブラジル音楽との相性の良さに目覚める。
90年、初めてブラジルを訪れ、92年から96年まで毎年、リオに長期滞在して音楽活動。リーダー作『XUXU(シュシュ)』『Rio Smiles』『YUKA』『refind..(リファインド)』を録音。98年、初めて日本のミュージシャンとのバンド編成で録音した『CASA(カーザ)』を、99年、ジョイスがゲスト参加した『Lulu(ルルー)』を発表。
その後、外交官夫人として2001~03年にブリュッセル(ベルギー)、2014~16年にブラジリア(ブラジル)、2017~20年にボストン(USA)に在住。国際イベントへの参加やライブを行なった。
2020年に帰国して日本での活動を開始し、TVやラジオに出演。2025年6月 7枚目のリーダー作「Brisa」をリリース。
ブラジル音楽を軸にジャズなど幅広い音楽の素養に根ざし、海外での多彩な活動の経験も生かしたオンリー・ワンの音楽家。熟練の域に達した今なお、ハートは "Rio Smiles”。
ホームページ:https://www.yukakido.com/
 
 
INFORMATION

◆CD「Brisa」
【FNFY-62】¥3,000(税込)
78 label
[演奏]城戸夕果(Fl)、伊藤志宏(Pf)、コモブチキイチロウ(Bass)、岡部洋一(Perc) スペシャルゲストミュージシャン:EPO(Vo)、Joyce Moreno(Vo)、Lula Galvao(Guit)
[収録曲]Brisa(城戸夕果)、Joana Francesa(Chico Buarque)、A Felicidade(Antonio Carlos Jobim)、Anos Dourados(Antonio Carlos Jobim)、Choratina(Johnny Alf)、Desde que o Samba e Samba(Caetano Veloso)、Para Voces Com Grande Carinho(Hermeto Pascoal)、Maninha(Chico Buarque)、Eu E A Brisa(Johnny Alf)

◆リーダーアルバム6タイトルの配信開始!
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