[1ページ目│記事トップ]
THE FLUTE vol.207 Close Up
雨男が描く、登山列車の風景─『登山列車と雨男』楽譜出版
[この記事の目次]
ジャンルを越えて活動するフルート奏者・作曲家、坂上領。20代の頃に作曲し、今でもなお多くの演奏者に親しまれている代表曲「登山列車と雨男」が、このたびピアノ伴奏譜付きで自費出版された。
収録されたフルート譜は、フルートソロ&ピアノ、フルートデュオ&ピアノの2バージョン、ソロでもアンサンブルでも対応できる構成。さらに、自身のバンド録音(CD「チャランガ・ぽよぽよ3」収録)をもとに、ピアノ1本で世界観を再現できるよう工夫された伴奏譜となっている。
譜面に“正解”はなく、演奏者が自由に組み合わせたり、部分的にカットしたりして楽しめる構成も魅力のひとつ。出版の経緯と作品に込めた思い、そして演奏のヒントを訊いた。
(文:本田裕一郎)
きっかけは“やるやる詐欺”返上? 人気曲がついに楽譜に
―
『登山列車と雨男』を出版しようと思ったきっかけは?
坂上
この曲はありがたいことに、「いつか吹いてみたい」って言ってくださる方が多いんです。でも以前に出版した「Jazz & Pops Flute Lesson Book」では、メロディ譜とコードだけのもので、ピアノ譜がなかったんですよね。だから演奏会や発表会で使おうとしても、「伴奏の先生にコードネームだと弾けないって言われました」とか、そういう声がすごく多くて(笑)。
―
この曲は、どんなイメージで、いつごろ作られたものですか?
坂上
作ったのは20代前半くらいですね。プロとして活動を始めたばかりの頃で、ちょうどブラジル音楽にハマっていて。「Baião」や「Partido Alto」といったリズムを知って、これらを使って曲をかいてみたいなと思ったのが最初のきっかけです。ただ、あまりマニアックすぎずにポップというか爽やかな感じにしたくて。そうやってできた曲にストーリーを想像、妄想して『登山列車と雨男』ってタイトルをつけたら、なんだかすごくしっくりきたんです。
―
「雨男」というのはご自身のことですか?
坂上
そうです(笑)。小さい頃から運動会の日に限って雨が降るとか、野外ライブでも「坂上を呼ぶと、雨が降るからやめよう」って言われたこともあるくらいで(笑)。もう開き直ってます(笑)。
でも、日本語には雨に関する言葉がたくさんあって、それがまた美しいんです。僕は歌詞のない曲を作っているので、言葉やタイトルから「詩」の世界のように自由にイメージを膨らませてもらうのが好きなんです。だから、タイトルはいつも日本語で、曲と一緒に「風景」も届けられたらいいなと思っています。
でも、日本語には雨に関する言葉がたくさんあって、それがまた美しいんです。僕は歌詞のない曲を作っているので、言葉やタイトルから「詩」の世界のように自由にイメージを膨らませてもらうのが好きなんです。だから、タイトルはいつも日本語で、曲と一緒に「風景」も届けられたらいいなと思っています。
幼い頃の坂上さん。電車の前で撮ったこの一枚は未来の『登山列車と雨男』そのもの!インタビューは続きます!
・変わる編成、変わらない思い─楽譜化で新たな発見も
・どんなジャンルでも同じ姿勢で臨みたい
・これからは“当て書き”や口ずさめる曲にも挑戦したい
Profile

坂上領 (さかがみ りょう)
日本大学芸術学部音楽学科フルート科卒業。01年ヴァイオリンの帆足彩と共に結成のリーダーバンド『チャランガぽよぽよ』では3枚のアルバムをリリース。フルートを中心にリコーダーやオカリナ、EWIなども駆使する、幅広いスタイルでの音楽活動を展開している。共演、録音参加したアーティストに、生田絵梨花(元乃木坂46)、井上芳雄、加山雄三、クミコ、菅原洋一、高嶋ちさ子、天童よしみ、NAOTOなど多数。
INFORMATION

◆楽譜 「登山列車と雨男」
作曲:坂上領
編曲:按田佳央理
デザイン:あやか
編成:2バージョン
[フルートソロ&ピアノ]フルートパート譜、スコア/[フルートデュオ&ピアノ]フルートパート譜1,2、ピアノパート譜、スコア
価格:¥4,070(税込)
購入:https://www.ryosakagami.com/onlineshop/
ソロが難しい場合はカットなどもできるようにしてあるなど、いろんな方に使っていただける楽譜です。
次のページ: 変わる編成、変わらない思い─楽譜化で新たな発見も










