フルート記事
THE FLUTE vol.196 Special Interview

“The music first.”それは指揮者でもフルーティストでも変わらない。

コロナ禍を経て、久しぶりに来日したブノワ・フロマンジェ氏にインタビューを施行した。現在、フルーティストとしてだけでなく、指揮者としても活躍するフロマンジェ氏は、どんな思いやイメージをもって音楽と向き合うのか。取材を進める中で、ユーモアに溢れる人柄に触れるとともに、プロフェッショナルとしてストイックな一面も垣間見えた。

 
室内楽やオーケストラを指揮することは、フルートの演奏とは別の専門的な知識が必要だと思いますが、指揮者の活動を始めたきっかけを教えてください。
フロマンジェ
(以下F)
最初は指揮者をやるつもりはまったくありませんでした。なぜなら“私は指揮者ではないから”です。ですが、作曲家で友人のOlivier Nivet氏に「どうしても指揮をやってほしい」と言われて、「友達だしやるか」とやってみたら、大成功に終わりました。なので、最初に指揮を振ったのは、彼の作品だったのです。そこが始まりかもしれません。そのあとにベートーヴェンやブラームス、ブルックナー、マーラーなど、いろいろな音楽家の作品もやるようになりました。
長年オーケストラ奏者をやってきたこともあって、オーケストラがどういう形で作られているか、それぞれのセクションがどういう動きをしているのかがきちんと頭に入っているので、知識面で特に問題はありませんでした。普段フルートで演奏しているレベルが自分の中にあるので、そこにオーケストラを持っていくということを一番に考えています。オーケストラ全体を、自分のイメージしているものに持っていくような意識です。
そのあと指揮者を続けることになって、いろいろな人に師事をするようになりました。今まですばらしいところで活動してきたので、様々な人脈があり、たくさんの凄腕の指揮者たちが身近なところにいたこともあって、教えを請うことができました。
指揮の活動をするようになって、ご自身の音楽観やフルートの演奏に変化はありましたか?
F
結果的にはないですね。理由としては、元々私の意識の中で、一人のフルーティストとしてオーケストラ全体を良くしていきたいという心持ちがあったからです。フルートの知識が指揮の経験に大いに役立ち、手伝ってくれているのは間違いないのですが、指揮者を始めたからフルートに変化があったということはありません。 常にフルートの高いレベルを一番に優先しています。

次ページにインタビュー続く

 

ブノワ・フロマンジェ氏によるパールフルート“オペラ”“マエスタ”試奏レポート

 
Profile
ブノワ・フロマンジェ
ブノワ・フロマンジェ
Benoit Fromanger
パリ生まれ。14才でフルートを始め、ベルサイユ国立音楽院を一等賞で卒業。18才でトゥールーズキャピタル管弦楽団に入団。その後パリオペラ座管弦楽団を経て、バイエルン放送管弦楽団首席奏者をつとめる。フルート奏者としてCD録音も多数あり、“Grand Prix de l'Academie du Disque Français”、“Diapason d'Or”など、数多くの賞を受賞。指揮者として、2010年にベルリン・チェンバーオーケストラ、2011年から2018年までブカレスト交響楽団の正指揮者、2021年から2022年までトルコ・サムスン歌劇場音楽監督、首席指揮者を務める。2013年から2022年までドイツ国立ベルリン・ハンスアイスラー音楽大学フルート科教授をつとめる。現在、世界各地のオーケストラから指揮者として招待されている。

使用楽器:総18K 金製オペラ Forte 頭部管
 
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