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帰国10周年・東欧の風

《山村有佳里フルート・ピッコロ・リサイタル》に寄せて

ザ・フルート記事

京都を拠点に活躍している山村有佳里さんが、ヨーロッパ留学から帰国してから10年を迎える今年、フルート・ピッコロ・リサイタルを開催することになった。出身地の京都・長岡京市から今年度文化功労賞を受賞。令和元年に喜ばしいニュースが重なった。
今回のリサイタルは、山村さんが12年に渡るヨーロッパ留学のうち、2年を過ごしたチェコの作曲家などをはじめバラエティ豊かなプログラミングとなっている。
リサイタルに先立って、山村さんにフルートやピッコロのこと、演奏会のことなどを訊いた。




Profile

山村 有佳里(フルート・ピッコロ奏者)
プラハ芸術アカデミー、マーストリヒト音楽大学大学院をフルートで修了。国家演奏家資格取得。英国ウェールズ王立音楽大学大学院ピッコロ科にて学ぶ。第12回バコリ国際音楽コンクール第一位受賞。第10回“エウテルぺ”国際音楽コンクールでフルート、ピッコロにて第一位、併せてジャーナリスト賞受賞。12年の欧州生活の後、国内外で活動する。CD「Vieille Chanson」発売。FM79.7にて毎月第一火曜14時&22時「山村有佳里のミュージック+プラス」放送中。

 

文化功労賞受賞は身の引き締まる思い

─2019年長岡京市文化功労賞受賞、おめでとうございます。この賞を受けられたお気持ちを教えてください。
山村 ありがとうございます。 文化功労賞の条件に・芸術文化活動において、優れた実績があり、広く高い評価を得られている人。・長岡京市という地域の枠を越えて、広域的に活躍され、市民の文化意識の高揚に大きな役割を果たされた人。・長岡京市の誇りとなる人。とあり、恐縮至極なのですが、今年は12年に及ぶヨーロッパ留学から日本に帰国して10年になり、演奏活動はもとより、こと長岡京市においては後進の指導・育成に関しても大きく評価をしていただけたようで、私の長い留学生活や演奏活動を通して培ってきたものが、次世代の人たちに還元し、地域貢献ができているのでしたら大変光栄であり、それらを選考にあたって評価して下さった方々がいらっしゃることに、感謝と気が引き締まる思いで一杯です。

─山村さんにとっての長岡京市の思いを教えて下さい。
山村 生まれ育った市で、そういった場合によくあるように、いつでも安心して戻れる、当たり前の場所、だと思っていましたが、12年のヨーロッパ生活の後に改めて”外から帰ってきた”視点から見ると、大きな天満宮もあり、竹林も美しく、歴史もある、良いところだなあ、と思っています。また、長岡京市にある指導校を含む中学校は私学を含め、吹奏楽コンクールでも良い成績を残し若い人たちが頑張って音楽に取り組んでいて眩しい想いでいっぱいになりながら見ています。それに来年の大河ドラマは長岡京なので、是非THE FLUTEの読者の皆さんに注目してほしいです。立派なホールもあります。

 

民族的な響きから現代までの響きを堪能できるリサイタル

─11月3日のコンサートについて、ピッコロ曲を初演されます。どのような曲か教えてください。
山村 マット・スミスという1984年生まれのアメリカ人作曲家の『To the Nth Degree...』という作品なのですが、この作品は2013年のJan Gippo 国際ピッコロコンクールの作曲部門で1位を獲った作品です。ミニマムでクールな作品になっていますので、是非楽しみにいらしてください。ちなみに『To the Nth Degree...』と言う意味は、限りのない、どこまでも、という意味があり、今回『果てのない・・・』と訳させていただきました。

─その他選曲のポイントを教えてください。
山村 今回はヨーロッパ生活12年のうち2年間住んだ、チェコの作曲家、マルティヌーが没後60年を迎えることもあり、マルティヌーのソナタをはじめ、4歳違いで同じ時代に活躍したシュルホフのソナタも取り上げます。そしてドヴォルザークやマルティヌーも渡った、アメリカの作曲家の作品に繋がっています。他に東欧のファルカシュやバルトークも演奏予定なので、民俗的な響きから現代までの響きを聴いていただけます。

─ピッコロとフルートでリサイタルをやる場合、気をつけていることは?
山村 私はフルートとピッコロを分けて考えず、プログラムの一連の作品と馴染む、自分の中で脈略のあるもの=聴いていただく方に最終的に納得していただけるようにしています。

─ピッコロを専攻される方は日本ではまだ少ないのですが、ピッコロの魅力を教えてください。
山村 どうしてもピッコロというと、フルートの次にやる楽器、オーケストラや吹奏楽で必要だから演奏する、という方が多いと思いますが、私はピッコロだけで十分ソロを取れる楽器だと思っています。木の温もりを感じられる、低音、中音域、日本の能管、龍笛にも通じる、シャープで恰好良い高音域を表現できる曲はたくさんありますので、是非挑戦してみてください。

─ピッコロとフルートを持ち替えで吹く場合に注意するべきことは何でしょうか?
山村 
ピッコロとフルートを別物と分けて考え過ぎず、息の当たる場所、方向に気を付けながら、練習してください。ただ、ピッコロの方が管が細く、歌口も小さいので体の中から息を送り込むバランスに気をつけてください。

─最後にコンサートに向けたメッセージを読者にお願いします。
山村 
令和元年の今年は帰国10周年、フルート生活35年、そして魅かれてやまないチェコの作曲家マルティヌーの没後60年を迎え、またこの度は長岡京市文化功労賞もいただき、はからずも記念すべき年になりました。 10年前に帰国リサイタルをさせていただいた京都・バロックザールで、この10年の私なりの歩みを一人でも多く聴いて頂きたいと思っていますので、皆様、是非足をお運びいただけましたら幸いです。



山村有佳里フルート・ピッコロ・リサイタル
(公財)青山音楽財団助成公演《山村有佳里フルート・ピッコロ・リサイタル~帰国10周年・東欧の風》
[日時] 11/3(日) 15:00開演
[会場]青山音楽記念館バロックザール(京都)
[出演]山村有佳里(Fl,Picc)、下山静香(Pf)
[曲目]マルティヌー:フルートソナタ第1番、M.スミス:ピッコロ・ソナタ第3番「果てのない…」(日本初演)、ドヴォルジャーク:我が母の教え給いし歌、シュルホフ:フルート・ソナタ 他
[料金]一般¥3,000/学生¥2,000 ※当日各¥500増
[問合せ]青山音楽記念館075-393-0011/musicagrazia@gmail.com(山村)







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