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【第17回】新国産フルート物語 製作者自らの演奏経験が生んだ特殊管 —コタトフルート

THE FLUTE vol.184

本誌THE FLUTE vol.166より連載がはじまった「新・国産フルート物語」。THE FLUTE CLUB会員限定でオンラインでもご紹介します。

書籍「国産フルート物語」
アルソ出版社内にたった1冊だけ残る、貴重な1冊

1998年に、アルソ出版より刊行した書籍『国産フルート物語』。
日本のフルートメーカーを丹念に取材し、トップメーカーから個人経営の工房まで、その黎明期から現代に至るまでの歴史と道のりをつぶさに書き連ねた貴重な記録だ。

当時から20年以上が経ち、令和の時代を迎えた今、それらのメーカーや工房なども代替わりなどが進み、様変わりしてきている現状がある。そんな現在の姿をあらためて伝えるべく、新たに取材を加えながら「新・国産フルート物語」としてここに綴ってきた。

今回は、特殊管フルートのパイオニアとして知られるコタトフルートについてお伝えしていく。
特殊管の製作では至高の存在ともいえる、世界に名を轟かせるメーカーは、いかにして出来上がっていったのだろうか。前編として、『国産フルート物語』刊行当時の記事をふりかえる。
「国産フルート物語」(アルソ出版 1998年刊)より再編、写真は当時のもの

第17回:製作者自らの演奏経験が生んだ特殊管 —コタトフルート

バスフルート、コントラバスフルートなどの特殊管で知られる古田土フルート。日本中から広く支持される楽器作りの基には、古田土氏、福島氏の二人の製作者による、フルートアンサンブルでの演奏経験と、休むことのない研究、開発があった。

このほど(註:単行本取材当時)ベルリン・フィルの首席フルート奏者であるアンドレアス・ブラウ氏が中心となり、アンサンブル「ベルリンの十四人のフルーティストたち」が結成された。このアンサンブルの初録音には、古田土フルートの特殊管が五種も使われている。古田土氏らによる演奏のCDを耳にしたブラウ氏が特殊管の作り出す音楽的な可能性に注目したのだ。
これまでは日本だけでもてはやされている感があったフルートアンサンブル。だが、古田土フルートの楽器がベルリンで認められたことがきっかけとなり、ヨーロッパでも新しい展開を見せようとしている。

世界に二本(台?)しかない巨大フルート 

関東近郊のフルートフェスティバルに参加して、この楽器を見た方も多いだろう。管の直径は80ミリ、トーンホールの直径は60ミリと、とてもフルートとは思えない大きさだ。この楽器は《ダブルコントラバスフルート》と命名されている。現在、世界に二本しか存在しない。一本は、ここ古田土フルート工房、もう一本はベルリンだ。「管の長さは5メートルあります。長いまま吹いてみたらちゃんと音が出たんですが、楽器にしたときは、タンポが合わずに苦労しました」と古田土勝市氏は語る。このダブルコントラバスフルートを演奏するのは、主に古田土氏と仕事上のパートナーの福島哲夫氏の二人。このフルートの発表後、日本各地のフルートフェスティバルから演奏依頼が多数寄せられている。
かつて日本のこの業界では、フルートを吹かない者のほうが良い楽器を作ると言われていた。しかし古田土、福島の両氏は、アンサンブルグループ「ピアチェーレ」に所属、コンサートなどで演奏した感触も採り入れた上で、楽器作りを進めている。
ダブルコントラバスフルートの誕生も、演奏会がきっかけだった。「ストラヴィンスキーの『火の鳥』を演奏するために作ったんです。最初の低音がどうしても出したくて作った、というべきか、こういうものが作ってみたくて『火の鳥』をやろうと決めたのか……」と古田土氏は苦笑する。それほどここでは、楽器の開発と演奏とは密接につながっているのだ。

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