サックス記事

サクソフォニストのためのハローワーク

vol.2 楽器製造編 笹木孝訓

「サクソフォニストのためのハローワーク!」の第2回目は楽器製造のお仕事を紹介。サックスオンラインでは楽器製造の仕事の魅力や、その職業に就くための条件などを語ってもらうとともに、今回登場いただいた笹木孝訓さんはヤマハ吹奏楽団にも所属しているので、演奏活動についても聞きました。

 

楽器製造を担当し、吹奏楽団に所属

笹木さんはどのような経緯でヤマハに入社することになったのですか?
笹木 音楽大学でサックスを師事していた先生からヤマハ吹奏楽団でサックスの募集があると聞き、受けてみないかとお話しをいただいたのがきっかけです。前々からリペアや楽器を作ることに興味があったのと、それと同時に演奏活動ができるということで進路を決めました。

 

そのような志望動機で入社される方は多いのですか?
笹木 全社的に見ると珍しいですね。吹奏楽団で活動することを条件とした採用枠というのが少しだけあり、僕はその枠で採用されました。

 

それは一般採用とどのように分かれているのでしょうか?
笹木 試験内容の一番の違いは実技試験があることです。実技試験ではスケールや初見試奏、自由曲などを演奏します。それとは別に人事の採用面接などもあります。最近は応募が多いので録音による事前審査があります。より詳細なことはヤマハのWebサイトの採用情報に案内がありますので確認してください。

 

吹奏楽におけるサックス・パートは通常4人が定枠ですが、ヤマハ吹奏楽団でも定枠があるのでしょうか?
笹木 特にないですね。本人のやる気があって優秀な人材ならば、どのパートも楽器の数にはそれほどこだわっていません。

 

サックス・パートは皆さんサックスの製造に関わっていらっしゃるのですか?
笹木 当社は入社する際に希望部署を選べないので、会社のほうで適性を見た上で配属が決まります。ですが、やはり割合としてはパートで受け持っている楽器を製造している場合が多いですし、楽器は違っていても管楽器を製造している方は多いですね。

 

楽器製造には吹奏楽団の枠以外にも採用があるのですか?
笹木 もちろんあります。大卒の技術系の採用だったり、他にも営業職などもあり、そちらの枠のほうが多く一般的ですね。

 

最終検査前の確認作業を担当する

笹木さんの仕事内容を教えていただけますか?
笹木 今はサックスの最終検査(試奏検査)前の確認作業をしています。最終検査に送る前に全体を見直して必要があれば修正をしたりして、万全の状態で検査員に渡す流れになっています。元々私も検査員をやっていたので、忙しい時は検査員のフォローアップをすることもありますし、品質面リーダーもやっていますので、何か問題があった時に対応したり、ラインから上がっていた時に何か問題があるとフィードバックをかけて作業を改善してもらいます。後はプレイヤーの方の選定対応をして、意見などを聞いて現場にフィードバックすることもしています。

 

サックスの製造に関しては他にどのような行程がありますか?
笹木 前工程といいまして、ベルにあたる朝顔を真鍮の板一枚から作る工程があったり、ハンダ付けの行程があったり、バフという研磨作業、さらに塗装作業などもあります。それらの行程を経た様々な部品がありますね。それらが私の職場に集まってきて、組み上げて完成品として出荷します。

 

先ほど最終検査から確認作業に異動したとおっしゃっていましたが異動はよくあるのでしょうか?
笹木 今は職場内でマルチ・スキル化というのを進めています。従来は長く同じ担当部署を固定していたのですが、生産の変動や人員の増減などに柔軟に対応できるように、一人の作業者がいろいろな行程を受け持つことができるように進めています。

 

それは違う楽器にいくこともあるのでしょうか?
笹木 ありますね。楽器によって生産数が違うので、他の楽器が忙しい時はお手伝いに行く方もいます。

 

笹木さんの務められている行程はとても重要だと思うのですが、特に気を付けられている点は何なですか?
笹木 基準からはみ出る物を後ろの検査に流さないということですね。だんだん慣れてくると感覚がずれてくるので、常にニュートラルな視点で見て、基準からはみ出る物を後ろで流さず、気付いたことがあれば、前の行程にフィードバックをかけます。本人も気付いていないことがありますから、会話をして解決策を探ります。

 

演奏は主観が強くなってしまいがちですが、どのようにニュートラルに捉えるのでしょうか?
笹木 楽器を吹いている人特有の主観的なものはあります。例えばキィのタッチですと、強めが好きな方もいれば弱めが好きな方もいます。ですがそういった主観に頼らず、検査基準に照らし合わせて、グラム単位で合わせていますね。

 

ハンドメイドを大切にしているメーカー

ヤマハという企業はもちろん入社前からご存じだったと思いますが、入社してみて改めて思う点はありますか?
笹木 会社全体としては大きすぎるので何とも言えないですが、管楽器の職場だけに限れば、ヤマハのイメージとしては大企業で世界的に有名なメーカーですので、近代的な設備でたくさんの本数を作っているイメージがありました。確かにそういった設備もあるのですが、入ってみると想像していた以上にハンドメイドを大切にしている物作りのメーカーだと感じました。

 

笹木さんのような職に就くためにはどういった準備をしたら良いでしょうか?
笹木 基本的に全員楽器を吹いているわけではないので、必須条件ではないですが、楽器を吹けたほうがいろいろな意味で助かることが多いです。そのため楽器は演奏できたほうが良いですね。技術も小さな事の積み重ねで向上していくので、コツコツとものを積み上げる姿勢を持っていることも大切ですね。

 

ヤマハ吹奏楽団での活動はいかがですか?
笹木 日本のアマチュアを代表する楽団ですので、周りやお客さんの期待もありますし、設備や会社のバックアップなど環境的にとても恵まれています。後はいろいろなヤマハ・アーティストと共演できることも幸せです。私が入社した翌年には常任指揮者に須川展也先生が就任されました。世界を代表するアーティストと一緒に演奏できることはとても嬉しいことですし、時には演奏の指導もしていただけます。

 

ヤマハ吹奏楽団の練習はいつ行っているのでしょうか?
笹木 練習は基本的に終業後になり、毎週火曜日と木曜日の19時~21時 に工場から本社に移動して行なわれます。本番が年20本くらいあるので、それらに向けて仕上げていきます。

 

笹木さんはヤマハ吹奏楽団でコンサートマスターを務められていますが、どういった経緯で就任されたのでしょうか?
笹木 私がコンサートマスターになる前は一時不在だったのですが、これから演奏のレベルを上げようとした時にコンサートマスターがいる体制が必要だという結論になり、各パートで首席を担っている方々で話し合って決まりました。

 

実際にコンサートマスターを担ってみていかがでしたか?
笹木 大変な重役でプレッシャーも感じますが、選ばれた以上は皆が円滑に活動できるようにしたいと思っています。代々先輩方が築きあげてきた歴史もありますので、それに恥じないように頑張っていきたいと思います。演奏面でのまとめ役でもありますので、指揮者の須川先生と会話しながら、団員の方の思っていることをくみ取り、その双方のより良い潤滑剤になれればと思います。

 

最後に笹木さんの仕事の魅力をお願いします。
笹木 楽器が大好きな方にとっては、自らが吹いている楽器を作ることに携われて、かつ演奏する機会も与えられるという、とても良い職場です。自分の楽器を自分で調整できるようになったのも良い点ですね(笑)。
楽器を愛する方には最高の環境だと思いますので、興味があればぜひ応募してみてください。

 

ありがとうございました。

 

佐藤淳一|千葉県出身。洗足学園音楽大学を経て、同大学大学院管打楽器首席修了。東京藝術大学大学院音楽研究科博士後期課程修了。サクソフォン領域において日本初の博士号(Ph.D.)取得。在学中から演奏活動を開始し、ジャンルを問わず幅広く活動。現代音楽には特に積極的に取り組み、L.ベリオのコンチェルト「レシ/シュマンVII」などを日本初演した演奏は高い評価を受けた。また、演奏活動の傍ら、執筆活動にも多く携わる。海外における活動も多く、これまでにパリ・サックスフェスティバルやGAP夏期講習会に参加。東邦音楽大学非常勤講師を経て、現在は北海道教育大学の常勤専任講師。博士 (音楽)。
http://saxolab.net