We Love Bird

国内トッププレイヤーが語る「私が受けたパーカーの洗礼」

[アンケート項目]
Q1:チャーリー・パーカーの演奏は好きですか? またその理由は?
Q2:パーカーのプレイからどんなことを学びましたか?
Q3:パーカーのプレイから学んだことをどんな方法で身につけましたか?
Q4:パーカーのアルバムまたは演奏曲のBEST3を挙げるとすれば?
Q5:初めてパーカーを聴くときのオススメのアルバムは?
Q6:パーカーにまつわる面白い逸話などを知っていますか?


澤田一範 Kazunori Sawada

A1:好き嫌いの問題ではない、モダン・ジャズの創始者だから
A2:演奏する上でのすべてのこと
A3:とにかくCharlie Parkerが未来に向けて残してくれた音源を聞く
A4:「Charlie Parker With Strings」「Complete Dial Sessions」「Complete Savoy Sessions」
A5:「Charlie Parker With Strings」
A6:with Stringsとして初めてカーネギー・ホールで行なわれたコンサートを収録したアルバム「CHARLIE PARKER WITH STRINGS midnight jazz at carnegie hall」。聴いてみるとわかると思いますが、お客さんの拍手がチャーリー・パーカーに向けられていないような気がします。ストリングス・セクションの演奏に向けられていますね、時代背景なのでしょうか。ライブものは良いですね

 

菅野 浩 Hiroshi Sugano

A1:大好きです。中学〜高校時代は毎日聴いていました。僕はチェッカーズに憧れて中学入学と同時にアルトサックスを始めたのですが、同じ楽器でこんな演奏をできるのが不思議でしょうがなかった。その一心ですね
A2:創造するエネルギーですかね。またそれは社会背景と密接に関わっているものだと思うので、彼が現代に生まれたらどういう音を出すのだろうかと時折想像しています
A3:パーカーのように吹かないということ(笑)。でもそれを意識したら、それもまた違うと思うので、何も考えず面白いと思うことを掘り下げ、常に自分に問いかけてる状態です。パーカーから学んだことが身についてるかはわかりません
A4:『Parker's Mood』『April in Paris』『Cherokee』
A5:「Charlie Parker On Savoy」「Charlie Parker With Strings」「Jazz At Massey Hall」
A6:意外に思われるかもしれませんが、パーカーは4つ歳下の自分とはまったく違うスタイルであったポール・デスモンドとは仲が良かったらしいです。自分の楽器の調子がおかしい時にはデスモンドに楽器を借りたこともあったそうで。1954年にはデスモンドがラジオ局でパーカーにインタビューし、当時の音楽談義をしている。こうゆう関係性って二人とも音楽に関しては心が豊かで良いなぁと思うのであります

 

多田誠司 Seiji Tada

A1:好きなどというレベルではない。すべての演奏に畏敬の念で接している。モダン・ジャズサックスはここから出発していると言っても過言ではないから
A2:すべて。音色・ニュアンス・フレーズ・曲・MCに至るまで、彼が発したものすべて
A3:ただただ毎日聞いて歌って吹いた。同じように吹けるように努力した。もちろん吹けないが
A4:すべてなので順位をつけたくないが、あえて挙げるとすれば「Charlie Parker With Strings」の『April in Paris』、「Charlie Parker On Savoy」の『Ko-Ko』、「Charlie Parker On Verve」の『Now's The Time』
A5:今の時代なら「The Complete Verve Master Takes」
A6:面白い逸話だらけで困るが、晩年に道で会ったソニー・スティットに「王国への鍵は君に渡すよ」と言ったとか、死ぬ間際にニカ男爵夫人の部屋に往診に来た医者に酒は飲むのかと聞かれ「食前にシェリー酒を少し嗜む程度ですよ」と言ったとか。どれも眉唾だが……

 

竹内郁人 Fumito Takeuchi

A1:大好きですが、理由はわかりません。初めて聴いた時、心に響きました。彼の音楽がジャズマン竹内の生みの親です
A2:とにかくスイングすること。「自分にとって、これが最高なんだ!」というものを見つけること
A3:まず、「チャーリー・パーカーのオムニブック」をやりました。アルトも音楽も素人でしたので苦労しました。 次第に楽器のコントロールやジャズのニュアンスがわかってきたので、いわゆる「耳コピ」を色々やりました
A4:「Charlie Parker On Dial vol.1」と「Charlie Parker On Savoy」。僕のジャズの教科書です
A5:すべてお薦めです。チャーリー・パーカーへの入口はどこからでも良いと思います。とにかく聴いてください
A6:バンドのリハーサルにはまったく顔を出さないため、若き日のマイルス・デイヴィスがリハを仕切っていたそうです。彼は本番にだけやって来て、誰よりも完璧な演奏をしたそうです

 

寺久保エレナ Erena Terakubo

A1:チャーリー・パーカーの演奏は、もちろん好きです。とてもクリエイティブだと思います。時には、映画やカートゥーンを見ているかのように感じます。一日中聴いていても飽きないので、とても好きです
A2:たくさんのことを学びました。例え、他の人の演奏から学んだことでも、元をたどればバードのアイディアだったということもたくさんあります。主に、ジャズのボキャブラリー、フレージング、音楽理論、サックスで演奏できる可能性を学びました
A3:「チャーリー・パーカーのオムニブック」を使って、ソロを細かくトランスクライブしました。そして、気に入ったフレーズは、12キーで練習しました。一時は、朝起きたらバードを聴き、夜も寝ながらバードを聴いていました
A4:1.「Charlie Parker With Strings」 2.「One Night In Birdland(1950)」 3.「Charlie Parker and Dizzy Gillespie(Diz and Bird at Carnegie Hall)」
A5:「Charlie Parker-Bird The Savoy Recordings」「Charlie Parker Dial 201」
A6:フィル・ウッズがインタビューで言っていた話です。当時、クラブで仕事をしていた若かったフィルは、自分の演奏に納得がいかず、楽器、リード、マウスピース、ストラップ、そしてリガチャーも大嫌いで、文句を言っていました。そんな時、友達が、「チャーリー・パーカーが向かいのクラブで演奏してるよ!」と教えてくれました。フィルは、早速クラブに行くと、友達が言った通り、そこでチャーリー・パーカーが演奏していました。しかし、パーカーは、なぜかバリトンサックスを吹いていました。フィルは、「パーカーさん、私は向かいのクラブで演奏している者ですが、いま長い休憩中なので、私のアルトをお貸ししましょうか?」と言いました。バードは「それはありがたい」と言ったので、フィルは走って自分の楽器を取ってきてバードに貸しました。フィルはバードが吹いた瞬間に確信したそうです。自分の楽器、リード、リガチャーには、何の問題もないということを。ストラップまで良い音がしたそうです(笑)

 

山田 穣 Joh Yamada

A1:大好きです
A2:すべてです
A4:『Bird Symbols』『Bird Is Free』 『Now's The Time』
A5:「Now's The Time」
A6:パーカーのケースにはクラリネットが入っていたそうです。理由はホテルで夜中練習できるから。物凄く練習していたようです

 

矢野沙織 Saori Yano

A1:天国のように完璧な多幸感と、圧倒的な悲しさというか快楽に対する畏怖のようなものが表裏一体となっている状態を、あくまで様式美に嵌めて表現しているところ。私は、チャーリー・パーカーはその他多くのJAZZとはまるで別物と思っています
A2:生きなければならない、というようなこと
A3:ただただ聴きました。カセットウォークマンでも、素晴らしい豪華な音響環境でも聴きました。それでも存在感という意味では特に変わらないのです
A4:『Laura』『Parker's Mood』『Bird Gets The Worm』
A5:「VERY BEST OF CHARLIE PARKER」(編集部注:矢野沙織と菊地成孔がライナーノーツを担当)
A6:信憑性のたしかな彼の生身の話を聞いたことはありません。私の先生のジェームス・ムーディさんに聴いた話ですが、当時チラともチャーリー・パーカーに声を掛けることも難しく、バックヤードに押し掛けてみて漏れる音が聴こえても本当にそこに彼がいるのか信じられないような様子だったそうです。狂乱の時代にいたチャーリー・パーカーを想うだけで夢のようですね

 

吉野ミユキ Miyuki Yoshino

A1:YES。40年代に誰も演奏していなかった方法を見つけてビバップというスタイルを確立した「発明家」。決められたフレーズを吹いているのではなく、独自の「歌」を演奏している。故に現代でも色褪せず輝いているのだと思います
A2:華麗なテクニックで吹きまくっている印象があるかもしれないが、実は良いタイミングで休符を入れていたり、良い音色のロングトーンで歌っていたり「余裕をもって楽しんでいる」のがパーカー。私もそうでありたいです
A3:耳コピーしたパーカーの演奏を聴きながら一緒に演奏。音色、リズム、アーティキュレーションなどがそっくりになるように、練習。パーカーのフレーズを分析し、なぜこの音を選んで吹いているのかを思案。その音を楽しめるようにさらに練習しました
A4:「Town Hall, New York City, June 22,1945」「Bird Symbols」「Charlie Parker With Strings」
A5:Q4.の回答と同じ。「ライブ盤」、「スタジオ録音」、「ストリングスとの共演」の3枚をまずは聴き比べて欲しいです
A6:カンザス・シティで生まれ育ったパーカーがサックスを吹き始めたのは13歳。母親に初めて買ってもらったサックスは中古品で、キィやタンポを輪ゴムやテープで止めたひどい状態のもの。楽器ケースは母親の手作りの布製の袋。その袋をぶら下げて、まだ未成年だったパーカーは裏口からジャズクラブに潜り込んで、憧れのサックス奏者レスター・ヤングの奏法やフレーズをコピー。「天才」と呼ばれるパーカーだが、人一倍努力家だったのだと思います

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